地下の世界
周りは湿った壁に囲まれていた。
そんな中、本のページを開く音が聞こえる。
私は、完全立ち入り禁止区域になっている書庫の一つに忍び込んでいた。
ここには過去の事について書かれた本が保管されている。
しかし、大人たちは過去の事について誰も話そうとしない。
私は、過去にどんな事があったのかを知りたくてここに忍び込んだのだ。
懐中電灯の光を頼りに本棚を見て回る。
『戦争』『疫病』『震災』
いろいろな本が並べてあった。
その中に『世界』という本があった。
私はその本を手に取った。その時、
「全く、こんな本を残すから後々大変事になるんですよ」
私が通っている学校の教頭の声が聞こえた。私は物陰に隠れる。
ドアが開いた。そこから、教頭と軍の服を着た男たちが入ってきた。
男の一人が言った。
「隊長、本当に火をつけられるのですか?」
すると、教頭が答えた。
「当たり前です。私は、過去の物を消すためにわざわざ、あんな汚い学校の教頭になったんですよ。まあ、そのお陰で大金が転がり込んで来るんですからいいですけど」
教頭はそう言うと手に持っていたライターをつけた。
私は混乱していた。
教頭が『隊長』?どういう事?あの優しい教頭が?
そんな事を考えていると、軍服の男たちは何かをまき始めた。
臭いですぐに分かった。これはガソリンだ。軍服の男たちがまき終わると教頭はライターを落とした。
「過去の物なんて無くなってしまえばいいんですよ」
教頭は笑いながら書庫から出て行った。
私は煙に巻かれ意識を失った。
私は眠っていたみたいだ。
気がつくとそこは校舎のなかだった。
起き上がり外を見ようとする。すると、
「まだ、起きない方が良いわよ。煙をたくさん吸ってたから」
聞き慣れない声がした。その方向を向くと、黒いロングフードで顔まで隠した女性が立っていた。左手には手鏡のような物を持っている。
「あなたは誰?」
私は訪ねた。すると、女は、
「助けてあげたのにお礼も無しなの?まあ、いいわ。名前は秘密ね。皆からは『魔の世渡り』って呼ばれているわ」
そう言って私に近づいてくる。
そして、顔が私の耳元で止まる。
女は小さく笑いながら言った。
「あなたはこの『世界』がどうして地下にあるか知ってるの?」
私は女から少し離れるように後ろに下がった。
すると女は、
「いい子ね。あなたが手に持ってる本を狙っている奴らがいるわ。捨ててももう遅い。彼らは過去を消して今も壊そうとしているの。死にたくなければほんの示す道を進みなさい。きっと助けてくれるわ。さようなら。私のかわいい子」
そう言うと、いきなり視界が白く染まった。
目が慣れてきて周りを見る。
女の姿はもうなくなっていた。
「いたぞ。殺せ」
後ろから声が聞こえる。
あの後、『世界』の本を読むと、
昔、『地上』では戦争があり人類は『地上』を住めない土地に変えた。ぞくに『砂漠化』と呼ばれるものだ。『地上』では生きられなくなった人類は『地下』に逃げて今がある。らしい。
これを呼んだ後、私は『地上』に行ける道を探して走り始めた。
井戸、公園、校舎、機密庫など調べたが見つからなかった。一つだけ調べてないところがある。校長室だ。あそこは校長と教頭いがい入ることは許されていない。
そう考えた私は、学校に向かって走り始めた。
そして、学校の正門付近で軍服に遭遇。今現在逃走中なのである。
校舎に入りまっすぐに校長室を目指す。
校長室の扉を蹴り開ける。すると、中にいたのは、胸元に深々とサバイバルナイフを刺された校長の死体がいすに座っていた。
後ろに後ずさりする。壁に背中がぶつかる。すると、壁が動き、古い隠し螺旋階段が出てきた。
私は、階段を登った。そして、『地上』にでた。
そこには、見たこともない建物が地面に埋まっていた。
これが、私の求めていた過去の真実。
私は自分の肌が焼けているのに気がつくのに時間がかかった。
また、意識が飛んでいく。
『あなたは、生きたい?生きたければ私の駒になりなさい。』
あの女性の声が聞こえた。私は答えた。
「生きたい。死にたくなんかない。」
そう言うと、体から感覚が抜けていく。そして、私は『魔の世渡り』様の駒になった。
『さあ、パラレルに行きなさい。かわいい子』