空の世界
『キィーン』
静かな空間にエンジン音だけが響いている。
敵を見失い、基地から離れた海の上を一人で飛んでいた。
「こちら、海猫。本部応答されたし。」
本部に連絡を取る。しかし、無線距離外なのか有害電波のせいで無線が使用できないか分からないが応答がない。
レーダーを頼りに来た空を戻る。しばらくして、明かりが見えた。無線が入る。
『こちら、本部。海猫聞こえてますか?』
聞こえたのは本部の同僚の声だった。「こちら、海猫。着陸許可をもらいたい。」
そう答えると、先程の同僚の声ではなく本部長の声が聞こえた。
『本部了解。着陸を許可します。後で本部長室に来てください。』
そうして、僕は『海猫』を着陸させ本部長室に向かった。
本部長室に行くと、小柄な本部長が待っていた。
「あなたは、明朝に『海猫』で太平洋沖で駐留している敵艦隊を単独で殲滅してください。」
本部長はそう言うと涙目になった。僕は尋ねた。
「敵艦隊の数はどのくらいと予想されますか。」
すると、本部長は資料を前に出す。受け取り中を確認する。そこに書かれていたのは信じられない物だった。
内容は、小艦隊数…五隻 内一隻は『神魂』(しんこん) 飛空隊数…十機すべて『空虎』(そらとら)という内容だった。
資料を見終わり本部長に返す。
そうして、
「明日、明朝五時。太平洋沖に駐留している敵艦隊に攻撃をします。」
そう言って本部長室を後にする。最後に本部長が泣いているように見えたのは、僕の気のせいだったのか?
明朝四時四五分。少し冷えた滑走路に僕と『海猫』はいた。
凛とした空気の中、エンジン音がなり始める。きっと、寝ている人たちには迷惑だろう。
明朝四時五九分。滑走路を加速する『海猫』。その操縦席から本部を見る。屋根の上に三人の人影。そして、滑走路に本部長が敬礼をし、こちらを見ていた。唇が何か動いていたような見えた。
離陸する『海猫』は太平洋沖に駐留している敵艦隊に向かって飛んでいった。
空は霞がかかったような景色だった。
情報が正しければそろそろ艦隊が見えるはずだ。そして、見えた。『神魂』が一隻と『真魂』(まこん)が四隻。攻撃を仕掛けようと『海猫』を傾けた時、
光の筋が右翼のギリギリを抜けていった。光の筋が飛んできた方を見る。すると、『空虎』が五機上から降りてきていた。霞のせいで正確な距離は測れないが、補足されているのはわかる。
仕方なく『海猫』の舵を上げる。そして、一斉射。見事に真ん中の『空虎』を捉えた。
『空虎』は黒い煙を立てながら下に墜ちていく。他の『空虎』はこちらに銃口を向けると一気に撃ち込んできた。
それを避けながら『空虎』に打ち込む。
二機の『空虎』はその場で爆発する。そして残りの二機も攻撃してこない。
「来ないのなら、こちらから行く」
つい、叫んでしまう。そして、また一機の『空虎』が墜ちていく。そして、墜ちていく先には『真魂』がいた。『空虎』がぶつかった時、大きな水しぶきが上がった。
最後の一機は、こちらに向かって加速してくる。しかし、『海猫』の一斉射で呆気なく爆発した。
艦隊に向き直ったとき、前方から新しい機影が見えた。『空虎』が五機、うち一機は蒼翼の『空虎』だった。
蒼翼の『空虎』。昔、たった一機で王の軍艦隊を全滅させたと言われる伝説の機体だ。
血が騒ぐ。彼奴と殺り合いたい。っと僕の中で生まれる想いが自然と体を動かしていた。
「『蒼翼』以外、邪魔だ。消えろ」
『海猫』に装備されている六つのミサイルを発射する。
『蒼翼』は避けたが残りの『空虎』はミサイルの爆発で翼を失い墜ちていった。
これで『蒼翼』と一騎打ちができる。
そして、『蒼翼』に対して一斉射した。しかし、『蒼翼』は軽く避けた。そして、こちらに撃ってくる。羽根を掠めたが対した問題ではない。燃料計を見る。残りは片道分しかない。
僕は、『蒼翼』から艦隊に狙いを変えた。ミサイルを打ち出す。三隻の『真魂』は一発ずつ撃ち込まれ沈んでいく。
残りは空も海も大物
狙いを『蒼翼』にする。ミサイルを撃ち込むと『蒼翼』は回避行動をとったが遅かった。左翼の半分が吹き飛んだ。
これで『蒼翼』飛べないはず。『神魂』からミサイルが飛んでくる。それを回避する。しかし、ミサイルは戦えなくなった『蒼翼』を撃ち抜いた。最後は伝説も同じように落とされた。
『蒼翼』を撃ち落としてから機銃が火を吹き始めた。
艦橋にミサイルを撃ち込む。しかし、『神魂』は沈まなかった。そして、『神魂』からの第二射。ミサイルが『海猫』の左翼の半分を撃ち抜いた。しかし、かろうじで飛んでいることができたが長くは持たない。そして、僕は『海猫』で『神魂』に突っ込んでいく。
そして、過去の記憶が蘇る。初めての空戦。初めての迎撃。そして、本部長の事。
記憶が走っていく。本部長はあの時、なんて言ったのだろう。もう、聞くこともできない。
『海猫』は『神魂』に突っ込んだ。そして、『神魂』は海の中に沈んでいった。
『生きて帰ってきて』
本部長が言った言葉だった。