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087:GR農場

ザクスと合流して農場へ向かおうとすると自然と皆が集まってくる。

レンは兄が関わっている事業なので、顔を出したいけどなかなか出せないでいた。

4月から農場が正式オープンしたので、レンには一度どんな施設かじっくり見たいと打診されていた。


ローラはサティス家のソラと一緒にやってきて、「出来れば私も見学したいです」と言ってきた。

二人はレンと同じ農業科で、家からは特待生の皆から多くを学ぶようにとしか言われていない。

そんな二人の後ろをヴァイスとティーナが暖かく見守っていた。

まだ時間も昼前だし、作業の邪魔になるような重要な作業はないはずだ。

サリアル教授にこのグループで今日は農場に向かい、ソラはきちんと送る事を告げると渋々了承された。


農場の正面に到着すると2名いる警備の方に挨拶をする、もちろん自分の顔はわかっているようなのでフリーパスだ。

この数日、何か変わった事がないかを確認してみたけど異常はないようだった。

警備の邪魔にならないように皆に建物等の説明を行う。


「正面に見えるのが管理棟だよ。事務処理や商談をする管理部門と、多くを占めている社員寮が一緒になっています。宿泊スペースはそんなに広くはないけど福利厚生だけはしっかりしているつもり」

「リュージ、フクリコウセイって何だ?」

ヴァイスの問いに気持ちよく働けるように美味しい食べ物やお風呂や寝床など準備してあげることだよと説明をした。


「じゃあ、次は僕の番かな?左側に見えるのが研究加工棟、一般的に言えば工場だね」

「ここはザクスに任せているけど、結構な備品を揃えた記憶があるなぁ」

「まーね、へたな研究所には辿り着けないレベルの高さになったからね」

「で、今は何を研究しているの?」

「最近作っているのはケチャップ・マヨネーズ・オリーブオイルかな?」

「もー、ザクスは大げさに言うんだから」


「最後は右側にある・・・こっちも研究棟になるのかな?採光を多く取り入れた作りで長テーブルがあるのでカフェテリアにでもしようかなと思ってるんだ」

「カフェ・・・なんだ?」

「うーん、説明が難しいけど大きなお茶会の会場にでもしようかなって」

「わー、リュージさん。出来ればこの施設を一番に使いたいですわ」ローラの感嘆にソラもこっそり頷いていた。

まずは軌道に乗ってガレリアに相談してからねとローラに返事した。

予約は受け付けているので、その辺は管理棟でナナに聞かないと分からない。


とりあえず受け付けの管理棟まで皆で行くことにした。

「あ、リュージくーん。やっほー、こっちこっちー」

「こんにちは、突然来てしまいました。今後は大体土曜日に来れると思いますので、打ち合わせがある場合はそのタイミングか学園宛に連絡をもらえますか?」

「らじゃ、お姉さんに任せれば大丈夫だよ」

「若干不安が残るんだけど・・・」

「俺もだよ・・・」

ザクスと一緒にため息をつくと、「あー、ため息つくと幸せが逃げるんだよ」とナナに突っ込まれた。

「まあ、いいです。では、通常の来客と同じ対応をしてもらえますか?」


一瞬にして纏う空気を変えたナナは丁寧にお辞儀をする。

ナナは代表者氏名と団体名を確認し、どのような用件で来たのか質問をした。

「事前にお約束していたリュージです、こちらの農場の見学をガレリア氏にお願いしていまして」

「はい、伺っております。係りの者が案内しますので少しお待ち頂けますか?」

男性1名に女性2名が案内に入り、ナナは再び事務棟に戻っていった。


通常だとここで荷物を預かって男性が先頭でコースを案内し、キーマンの横に女性1名と最後尾に列からはみ出ないように1名つくことになっている。今日は皆荷物を持っていなかったようなので、そのまま案内してくれることになった。

「皆様、本日は当GR農場への見学ありがとうございます」男性と両脇にいる女性が一斉に頭を下げたので会釈をする。

「これより足元が悪い場所を歩きますが平気でしょうか?」

「はい、事前に説明を受けています」

「ゆっくり歩きますがペースが早い場合は一声かけてください。それでは参りましょう」


建物を迂回すると奥には一面に農場が広がっていた。

「うわっ、何だこの広さは・・・」ヴァイスの言葉に全員がこちらを注目してきた。

「いや・・・あの、何かみんな報酬を払いたいって言うし。・・・というか開墾したのって半分くらいだった記憶があるんだけど」

「リュージ、ごめん。ガレリアさんに口止めされてた」

「ザクスゥ、雇用関係も全部周りに任せてたから多くは言えないけどさぁ」

あまりの広大さに従業員も驚いていたようだ、運営方針や備品等も少し考える必要があるなと思った。


「この農場は主に4ブロックからなります。現在稼動中の森エリアではオリーブ・レモン・柚子等が植えてあります。他には日常品エリアとハーブエリア、季節商品エリアに分かれています」

「こちらで現在加工されている特産物はどのようなものがありますの?」

「はい、こちらの農場では現在オリーブオイルとケチャップの二本柱で生産が進んでいます。それとは別に酢を使った加工品やマヨネーズ等も生産しており、順次出荷を予定しております」

「ありがとうございます」


稼動し始めたばかりであり、まだ多くの開墾スペースも残っていた。

研究加工棟で見学用コースからの視察を終えると、通常は試食エリアに行くことになるのだが管理棟の方にある食堂へ行くことにした。

「案内ありがとうございました、対応も問題ないと思います。何か不便な事があったら自分かナナさんに言ってください」

「「「はい、ありがとうございます」」」


ナナが再び合流して食事の案内をしてくれることになった。

商業ギルドからは経理を見るナナの他にも、商品開発部から出向で来ている人が数名いた。

レイクからは自由に使ってください、もし本人が望むならそのまま移ってもらっても構いませんと許可を得ていた。

その代わりと言っては何だけど、最低でも王宮が必要とする物を必要な量出荷して欲しいと打診を受けている。

これはワインバーの人員も含んだ契約としている、書面には残していないけどガレリアと商業ギルドの長を交えた物だから口約束でも効力は絶大だった。


オリーブオイルの半分は商業ギルドに出荷し、ワインバーにはここで加工された商品と商業ギルドから仕入れた物を送っている。

護衛を連れたナナがワインバーの日々の現金を回収し、現在は本支店勘定のような関係で売り上げを管理していた。

商業ギルドへの入会は自分が代表として行ったので、ランク的にも小売業をしても良いらしい。

敵が少ない商売の手法で薄利多売を目指した方が良いと思うけど、情勢が読めない時は希少価値を考えて売り先を絞るのも手だと思う。


「はいはーい、リュージ君。難しい話ばかりしてたら疲れちゃうよ。みんなもお腹空いているだろうし、こちらはいかがかしら?」

ナナが両手にピザを持ってきて取り皿を配ってくれた、この食堂ではセルフサービス方式で順次休憩に入るようにしていた。

「あ、ナナさんありがとうございます。みんな食べてて、飲み物貰ってくる」

「私も手伝うよ」

レンと一緒に飲み物と他にも小鉢で色々貰ってきた、2枚程度のピザではなくなるのはあっという間だった。

「はーい、この食べ盛り達め。今度はポテトのピザだよ」

「ここで出ている料理はワインバーで出ているんだよ、感想あったら聞かせてね」

「「とっても美味しいです」」

「なぁ今度行ってみるか。セルヴィスさんとも話したいし」

「ヴァイス、行くとしても交代でな。学生が通うにはちょっと問題がありそうな場所かもしれないぞ」

「いかがわしいの?」

「ティーナ、いたって普通の酒場だよ。世間からすると、うちらまだ学生なんだよね」

「ローラとソラの前でいかがわしいとか言うな」

「ごっめーん」誤り方に少しナナさんテイストが入って心配になった。


みんなが食事に夢中になっているのでこっそりナナに聞いてみた。

まず土地については先程話した通り、多くの報酬をラザーが一括管理して支払ったのがこの場所だった。

もっと地価が高そうな場所も取れたようだけど、開墾が出来る事が事前に分かっていたので利便性より広さと寂れた場所を選んだそうだ。

建物についてはガレリア基金の多くが投入され、正直これがこけるとガレリアはかなり厳しい暮らしを余儀なくされるらしい。


冬越しの施設の人々を多く雇った事もあり、新年の恩赦と新事業支援により俗に言う市民権の取得がかなり安く設定された。

これは最低でも1年間一箇所に定住して勤務する必要があり、今回途中で退職した場合は市民権の取得がかなり厳しくなると予想される。今回雇った農場職員は出向を除き王国に勤める平均給料の7割位になるそうだ。

寮と3食ついて市民権の支払いの為の貯蓄もしている、備品の多くを支給しているので従業員からは「そんなに貰っていいの?」と聞かれたくらいだ。


最後に変わった事がないかと誰か尋ねて来たかを聞いたところ、問題なくほぼガレリア邸が窓口で多くの見学を断っていたようだ。考えてみると既に情報が通っている上位の貴族家は急いで関わる必要はなく、少しでもおこぼれに預かろうとしていた下位の貴族家はことごとく企みがばれていた。そもそも新事業が安定するかどうかなて分からない。


予約がない事を確認するとナナと一緒に皆の所に戻る。

「ローラ、予約はあいているらしよ」

「まあ、お母様もこちらの農場は気になっておりましたの。是非予約したいですわ」

「では、日程が決まりましたらナナ宛にお願いしてください。私でもいいですよ」

「はい、相談してみます」


多分潜んでいる騒がしさが落ち着けば忙しくなるだろう、忙しくしている分には楽しく過ごせると思う。

残された学生生活楽しく過ごすようにって何時も言われているからね。

「ゴブリン退治もそろそろ行くって聞いているしね」

「えっ・・・終わったよ」

「「「シー・・・」」」

「えっ?」


何を言われているか分からない・・・、ただ問いただす事がありそうだなと静かにザクスを見つめた。




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