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070:世代交代

とうとうここまでこれました。

区切るとしたら、ここまでが第二章となります。

今まで我慢していましたがご意見ご感想を是非、是非にお願いします。


※10万PVを超えました、また別のお話も書いております。

次回更新時からまたしばらく前書きと後書きを書くのは控えますので宜しくお願いします。


まだ続くよ!。

今日は王国の仕事収めの日らしい。

おはようからお休みまで、暮らしを守る騎士や衛兵の皆さんは年中無休で働いている。

交代で休みを取るか手厚い手当てが見込めるので、今日もやる気に満ちた働きっぷりを見せていた。

朝からガレリアと同行して、学園の敷地にある温室で年内最後のトマトの収穫を見守っていた。

収穫された食物はいったん商業ギルドに転送され、最終的には冬越しの温室へ向かった。


王城では今年最後の挨拶の後に、信賞必罰と訓示がある。

「どこも恙無く運営出来ているので、来年も引き続き王国と自領の発展に努めて欲しい」と例年通りの挨拶となる。

既に起こったラース村での事件は割愛された、男爵家カッファルは学園に入り込んでの刃傷事件の為廃嫡。

冬越しの温室への接触を禁止した触書を出したにも関わらず、実力行使を行った家は罰金刑となった。


また、アーノルド家現当主は爵位を返還するか、代を変わる事になった。

新たに当主となった者とその妻は、10年間王都に来る事を禁ずる処分が出た。

既に現当主より息子に爵位を移す申請は届いていて、王国はこれを受理したと公表した。


また王家の勤めを放棄し出奔したレイシアについては、王位継承権の剥奪とし追う事と探す事を全面的に禁止した。

これは自筆の書置きにより、今朝判明したものだと発表している。

公然の秘密としてレイシアには最低3名の婚約者候補がいた。

公爵家・侯爵家・伯爵家より打診を受けており、面目を潰された事に対してアーノルド家が全面的に非を被ったのだ。


王国は既に刑が執行されている者への、更なる罰を与える行為に対して厳しく戒めを行っている。

その対象が個人から領へ移り経済制裁にまで発展する可能性があり、お互いにとって利益が少なくなってしまうからだ。

その事を鑑みて追加の報告があった。ローランド王子と公爵家第一令嬢との婚礼を来年行い、2年経っても嫡男が産まれなかった場合に、側妃を侯爵家か伯爵家より迎えるよう事が内々に告げられている。

その際、当然の事ながら候補者の選定は十分検討させて貰うのが条件としてあがる。


また、ローラについても来年より学園に行くことになるが、貴族による3年間の一切の接触を禁ずると宣言された。

「貴族の学園に入るのにそれはおかしいのではないか?」という質問に、もう一つの学園で学ぶことを告げると、情報を得られていなかった貴族が愕然としていた。但し、卒業の暁には伯爵家より家格が上の家を対象に婚約者を選定することが約束された。

もちろん、レイシアがいなくなったので扱いとしては長女相当となる。その際、王子同様候補者の選定は十分検討させて貰うのが条件としてあがった。


ローランド王子の婚約は年が明けてすぐに行われ、来年中には婚礼の儀が行われる。

それに伴い、前倒しをして恩赦が行われたのが上の刑の内容だった。

本来ならばもっと重い罰があるところを、名前も公表せず罰金刑だけで不問にしたのだ。


これに異論があるものは年明けに申請して争う事が出来る、ただ量刑は重くなり内容は公表される。

また半年の間に事件を起こすと、恩赦で軽減された刑を更に上乗せした刑がプラスされていく。

以上の報告により、大多数の賛同を得て無事年内の業務が終了したのだった。


王家の4名は皆が集まれるプライベートルーム到着すると、先客の2名がお茶を飲んでいた。

その二人に相対するように座ると、王が男性に向かって深く頭を下げた。

「お互い我侭を通したのだ、攻められるべきは私の息子で間違いない。私も自分の嫁ぐらい自分で探せと後押ししてしまったからな」

「それでも多くの者に望まれて祝福を与えてやりたかった。親としてはこれほど無力なことはない」

「私はローランド王子とローラ王女に謝罪をしなければならない。二人の運命を閉ざしてしまった可能性もあったのだ」

「いいえスチュアートとは家族になったのです、家族の幸せを願いたいと思うのは当然の事です。彼が弟になったのは少し違和感がありますが・・・」

「そうですわ、素敵なお兄さまと家族になれたのです。ずっと前からお二人はお似合いだと思っておりました」

「そう言って貰えると心のつっかえが軽くなるよ」


当人同士がしばらく王都へ来ることは出来ないが、家同士の付き合いは出来る。

当主の座は追われたが、今後は隠居として自由気ままな生活を送ると豪語していた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


明日は今年最後の日で、前日の今日から各所に酒が準備されている。

冬越しの温室は昼間ガランとしていて、極力外に出ることを推奨していた。

その間に忙しなく関係者が往復し年越しの準備をしていく、お昼になり関係者と昼食を取りに近くの食堂へ行くと様々な噂が飛び交っていた。


「なあ、聞いたか?レイシア様が失踪したそうだぞ」

「おいおいおい、滅多な事言うもんじゃないぞ」

「え?私は視察の旅に出たと聞いたわ」

「「「ということは・・・」」」既に王様の妹が地位を捨てロマンスを達成している。

表立って王家の批判を言うことは出来ない、それぐらいで罰せられる国ではないけどそういうものだ。

その事を理解し噂話をしている3人は満面の笑みで頷いていた。

「幸せならいいんだ」「幸せになってくれなきゃこまるわ」「幸せじゃないなんてありえないだろう」大絶賛だった。


食事を取りながらガレリアとレイクに年末年始の話を聞く、例年だと酒を飲んで暴れるだとか急性の中毒になる者・粗暴な行為を行う者などがでるらしい。

今年は特に冬越しの温室に最強の布陣を用意したとレイクが胸を張っていた。

温室に戻るとマイクロとティーナとヴァイスがやってくる、そして協会の手伝いをしていたレンもいた。

今日は作業が終わると明日の仕事の為にここに泊まる事になっている。


「なんか野営みたいで楽しいな」

「もう、ティーナったら。野営が楽しい訳ないじゃない」

「いや、レン。これが結構楽しいんだぞ。私は親に連れられて各地を渡り歩いたからね」

支給された毛布を肩に巻き、レンとティーナが座ったまま背を預けあっていた。


「じゃあ、食事にしようか?」

「お、リュージあれだね。ハーブ類の処理から調合まで協力した甲斐があったかな?」

「ん?なんだなんだ?ここでも良いもの食べられるのか?」


バーベキューコンロに火を入れると視線が集まる、開発部の人から手伝いを呼んでいて、事前に説明して用意してもらった物があった。

邪道だけど既に茹でてアルデンテにしたスパゲティーを隣に置き、刻んであったソーセージと野菜をオリーブオイルで軽く炒める。そこにドサッっと麺を入れると菜箸を使い軽くほぐす、特製ケチャップを入れると鉄板を大きく使い依頼していたコテを二本使い混ぜていく。最後に中央に寄せてバターを適量入れ再度ひと混ぜすると完成した。


「ちょっと、作るの早すぎるんじゃない?」

「いや、簡単だし。ティーナも作ってみる?」

「うん、まずは味を知らないとだね」

確か食べたはずだよなと思いながら、突っ込んでもロクな事がないので反応を確かめる。

味見が本気食いになり、みんなに盛り付けていくとあっという間にナポリタンは消えていった。


作り方を見ていた開発部や特待生が同じように調理を開始する。

皿を持って並ぶ列は徐々に増えていて、寝ている者もいるのでなるべく静かに夕食の準備をしていく。

マイクロもまだ早い時間なのに雑魚寝をしていた。

列の誘導を手伝っていると、後ろの方から騒ぎが聞こえてきた。


ヴァイスと駆けつけると、この前の子爵の取り巻きが5名いた。

「折角来てやったのにしけてるな」

「ああ、こんなものの為に俺達が解雇されたのかよ」

「ふざけんな、お前らどけよ」当たり構わず喚き散らしていた。


出入り口の騎士は周囲の警護の為、中の騒ぎには口を出せない。

「なんか文句あるのか?こんなやつらの為に俺らの仕事をダメにしやがって・・・目に物みせ・・・」

5対2なんて面倒だなと思っていた所で、後ろから激しい殺気を感じる。

「おう、折角の見学に随分なお痛してくれるじゃねーか。俺の名前を知ってるか?」

「な・・・もしかしてギルドマスターか」

「俺のバカンスを邪魔した罪はでかいなぁ」

「何がバカンスだ、数の上ではこっちが有利なのは変わらないぞ」

さりげなく出入り口をチラッと見たチンピラの視線を追うと、マイクロがにこやかに手を振っていた。


「俺一人でもいいんだがなぁ・・・」

「フォルテッシモさん、何でここにいるんですか?」

「ここにいたら合法的にストレス発散出来るって聞いたんだよ、リュージ邪魔するなよ」

「ええ、じゃあお任せしていいですか?」

「バカか、数を減らしてどうする」

後ずさりしつつ剣を構えるチンピラ達、一人の男が急に振り返るとおもむろに壁に向かって剣を叩きつける。

ガツッ・・・傷一つつかずに弾かれていた。


「そろそろ相手してくれるかな?」

「たかだか一人だ、みんなでかかれば・・・」

「「「おい、うっさいぞ。ギルマス、仕事遅いなら俺達がやっちまうぞ」」」

続々と立ち上がるいかにもな冒険者が得物を抜きながら集まってくる。


制圧されるのに多くの時間がかからなかった、ナポリタンを食べながらしゃがんで囲む冒険者達。

この騒動は瞬く間に広がり、この温室にちょっかいかける者が出る事なく無事に冬を越せることになった。

新年の発表により王都での死者は奇跡的に0人となった、特出する事と言えば子爵が一人代わった事くらいだった。


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