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064:下地

「リュージ君、私も手伝いますよ。簡単にでいいので温室の魔法の説明をして貰えませんか?」

とうとう来てしまった・・・、らくのう魔法の説明が・・・。

「えーっと・・・、すいません。うまく説明出来ません」その回答に考え込むサリアル教授。

ドキドキしながら返事を待つと「では、起きている現象について説明できますか?」これなら説明できそうだった。


エリア内はディーワンを使って開墾している。

開墾魔法は砂利や岩を砕いて浮上させているけど、王都の土地では大丈夫だったので耕しているだけだった。

その上でふかふかの土地を地熱で暖めて、外側は風を通さない魔力の壁になっている。

あれ?そうなると酸素がなくなって苦しくなるかもだから、風は通さないけど空気は通しているのかな?この辺は出来ているから気にしてなかった。一応シールドやプロテクション等の防御魔法を土属性で再現しているつもりだけど、そこは上手く出来ていないようだ。しどろもどろになりながらもサリアル教授に説明した。


「なるほど、説明出来ないと言うのもある意味わかります。原理の分からない魔法など山程ありますからね。では、その魔法を前回やったように人を介して発動を出来ますか?」どうやらヴァイスと一緒にサリアル教授と模擬戦をした時の魔法の使い方を言っているようだった。

「やってみます、それで魔法は・・・」

「私を介してやってみてください」

シスターダイアナは静かに見守っていると、ガレリアがやってきた。


「やあ、サリアルそしてリュージ君。どうやら間に合ったようだね」

「これは先生、お忙しいところ申し訳ありません」

「ガレリアさん、資材と宝石ありがとうございます」

「いやいや、今回のは是非見たかったからね。ダイアナさんに連絡して貰うようにお願いしたんだよ」


みんなが見ている中、手順を説明する。まずは鉄筋棒を全部仕舞い、ディーワンと杖と宝石5個を取り出した。

最初に開墾を行う、【精霊の園】という場所を考えた時、空間だけではなく地面が開墾されているのが良い条件だと思ったからだ。

開墾は魔力を維持する必要はない、サリアル教授に一声掛け背中に手をやり魔力を流す。

片手で杖を構えていたサリアルは戸惑っていたようだが、一瞬で魔力は魔法に変わっていった。


「サリアル、儀式魔法とは難しいだろう」ガレリアが弟子に声を掛けると「はっ」と意識を取り戻した。

「まだ未知の魔法というものはあるものですね」

「出来ると思ったことを全て出来るとしたら、私達の知らない事ばかりだろうね。それはそうとリュージ君は杖を持たないのかい?」

「はい、王都に来てから用意したのですが、とっさの魔法だと杖を出すのがめんどうで」

「正直だね、魔法なんて使えればいいんだよ」

「先生、それはどうかと・・・」


「続けて行きます」と合図すると鉄筋棒が収納から飛んでいく。

確認の為、ダイアナとガレリアを見ると頷いていたのでそのまま作業を続ける。

「サリアル、集中しろ。膨大な魔力ほどロスが生じるものだ、その為に補助を買って出たんだろう」

「はい、先生」四隅にある鉄筋棒から徐々に競り上がる予定の魔力に干渉するサリアル。


通常は黄色というか黄土色の魔力だったが乳白色の魔力が上がっていく、流している魔力はサリアル教授の中で循環し、これ以上流せない状態から少しずつ魔法として放出されていた。

「薄く、より強固に」寒さがこたえる温度でも、サリアルは大粒の汗を流しながらコントロールしている。

いつもより少しだけ時間がかかったけど、4面と上部が白い建物として完成された。


「サリアル教授、もしかしてこれが完成形でしょうか?」コンコンと叩くと比べ物にならない耐久性があった。

「乳白色ですから外から中を見る事も出来ないでしょう、あくまで魔法扱いなので空気も大丈夫なはずです」

「サリアル、まだ終わってないようだよ。リュージ君、まだこの後の作業もあるようだから続けて頼むよ」


続けてサリアルを介して温室に地熱の魔力を流す、これも土の属性の要素が強いので上手くコントロールして貰う。

完成した温室の魔法を前に、サリアルは息を切らしながら満足した顔をしていた。

「リュージ君、お疲れ様。さてどうするか?エントの講義は聴いたんだろう?」

「はい、なかなか難しい理論でしたが情熱は伝わりました」

「なるほど、ものはいいようだな。今度あいつにも講師を勧めてみるか」

「ハァハァハァ・・・先生、私の苦労を増やさないでください」

「若い頃の苦労は買ってでもするもんだよ。では、次は私が手伝う番だね。リュージ君、お手柔らかに頼むよ」


「まず、この魔法の維持について考えようか。リュージ君はどう思う?」

「はい、この前の腕輪で自動継続は出来ると実験をしました。多分3つの手段があると思います」

「そうだね、ひとつはリュージ君の魔力を自動で更新出来る魔道具の設置。もうひとつは現地で魔道具を動かす時の魔力供給」

「最後はこれですね」紫水晶をガレリアに見せて確認をした。


常春様が残した理論では宝石には魔力が宿ると言う、また宝石には属性魔法との相性があるようだ。

大きく分類すると赤青黄緑で火水土風に対応している、そして出土されると言うぐらいなので基本的に土とも相性が良い。

その中でも別格なのは紫水晶だった、大気にある魔力を吸収し自動供給する事が出来る特別な宝石だった。

【精霊の園】と同じ状況になれば濃密な魔力量が大気に満ちるようになる、残存量と供給量が不明なのは軽く心配だった。


「今日のお昼前に消費したのは5Pでしたが・・・」

「え・・・そんなことはないでしょう」

「あー、それは多分才能だろう後は相性もあるね。魔法はいろんな場面で節約出来る所が多いしね」

「では、やっぱり自分の魔道具を使うやり方がいいでしょうか?」

「君が全てを背負うのは良いとは思えないね。でも、失敗は出来ないし・・・うまく併用できればいいんだが」


片手用の杖とディーワンを持って考えると、ふと杖の石に目が行った。

ディーワンを置くと、杖に嵌められた連鎖炎石に魔力を通してはずす。

そして魔力を通して紫水晶を嵌め込むと、一瞬淡く魔力が漏れ出した。


「ほう、見事だね。リュージ君はこの杖を感じる事は出来るかい?」

「なんとなくですが、二日の猶予があるので木曜にもう一度確認には来る予定です」

「一回見れば十分だろう、途中の補充は出来るようだし分割供給をしてれば問題ないと思う。その辺は私がサポートするよ」

「では取り付けを手伝って貰っていいですか?」

「サリアル、君も一緒にやるといい。勉強になると思うよ」三人で杖に触れると扉の取っ手として張り付いた、スライドドアの完成だ。


「リュージ君、杖がなくても平気ですか?」

「ああ、そうだね。仮にも魔法使いなら杖を持っておいた方が良い」

「あ、別に大丈夫・・・ですが」

「じゃあ、後でそれも準備しておくよ。私の今までの経験だと、あの紫水晶で十分足りると思うけどね」

「先生、急にこんな魔法の建物を作って大丈夫でしょうか?」

「サリアル、これは根本的な技術が違うのは分かるだろう。君が魔法に目覚めさせた貴族が文句を言って来たら、そこの魔力供給をお勧めするよ。これは儀式魔法で作り上げたと公的に発表しておくから承知しておくように」

「ガレリア先生お願いします」


4人で温室に入ると、学園にある温室より気持ち温度が低めだった。

「ここは後で毛布が配られます、また食事の準備もここで行う予定ですので十分な暖かさですね」

ダイアナは隅々まで見回すと中からもコンコンと叩いていた。そして寒さが厳しくなる出入り口や隅の方に行って確認したようだが、問題いようなので両腕で丸サインを出していた。

「では、関係各所に連絡をさせて頂きます。ガレリア様・サリアル様・リュージ様ありがとうございました」

「こちらも出来る限りは協力します、また3月いっぱいでここは閉鎖しますのでご理解を」

「王国の支援にも期待しましょう」これで木曜日にここを確認すれば大丈夫になった。


二人と別れるとサリアル教授と王国料理場へ向かう、門番にコロニッドさんへの面会を求めるとすんなり通してもらった。

段々顔を覚えられてフリーパス化しているようにも思える、きちんと弁えた行動をするべきだなと再度自覚をした。


「やあリュージ君、待ってたよ。サリアル教授もようこそ」

「スープを担当して頂いて有難うございます、それでどうでしょうか?」

「うーん・・・、なんというか微妙なんだよね」

「え?微妙とは?」

「多分だけどあっさりしすぎている感じかな?でも、これはこれで美味しいから何かに使えるような気もする」と微妙な反応だった。

そういえば何肉を使っているのだろうか?脂身の過多もあるし異世界の野菜事情も少し違うかもしれない。

「ちょっと見せて貰ってもいいですか?」寸胴にたっぷり用意されたスープはコンソメだった。


「きれいな琥珀色ですね」

「そうだろう?ちゃんと手順どおりにやったからこれでいいと思うんだけど」

「ちょっと味見しても?」

「ああ、勿論だよ」


カップに薄切りの玉ねぎを入れて貰い、暖められたコンソメを注ぐ。

そして一口・・・完成されたとは言えない味だった、かと言ってまずいわけでもない。

「これきっとチキンブイヨンとセットで使うと良いと思うけどなぁ」そう言うと明日学食にこの鍋を持ってくると言う。

「では、預かってもいいですか?自分なら収納があるので」

「あ、じゃあ。お願い出来るかな?お昼が終わる頃に顔を出すよ」


明日寮の料理長が来ればスープは何とかなりそうな気がする。

準備は大変そうだけど本職の凄技に期待して寮に戻ることにした。


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