051:お風呂パーティー
今年初投稿です。
違うお話を書いたのですが暗い出だしだった
ので次のお話を書いたらアップします。
では、今年も宜しくお願い致します。
翌朝は会議室前で体操から始まる。
キリッとした班長が前にでて見本を行い、対面するように残りのメンバーが同じように体操を行う。
会話は必要ない、訓練が力になり秘密の共有が結束となる。今晩には騎士が来て会議室で会議をすることになるそうだ。どうでもいいけど領収書も切れないようなこの世界で誰を気にしたネーミングなんだろうと思う。
帰りも【平穏な羊】が護衛を務めてくれて、何事もなく王都に戻ることになった。
12月第2週月曜日、十分な休息もなく学園生活が始まる。
出発前と変わりなく朝練をしたけど思いの他体が軽かった。
今日の講義で瞑想を取ったら迷わずに寝てしまう気がする、そんな理由で冒険科の講義を中心に座学を受講した。
午後は山岳訓練の総括を行った後でサリアル教授に報告する予定になっている。
時間前に隊長のもとへ全員が集まった、そして何故か多くの顧問や教授が見学していた。
サリアル教授もローレル教授も基本薬科顧問もこちらを見ている。
「報告書は受け取っている、これは王国と教授会にのみ届けられる。皆には簡潔に何が起きてどう行動したかを報告して欲しい」隊長が声を張って会議室での発表順で報告するようにと告げる。
山岳訓練のシミュレーションから多くの科や大人達に助けられて要救助者を助けられた事、ほっておけば要救助者が死んでいたかもしれないモンスターを倒せた事の報告があった。
今後もこの訓練を通して騎士としての心構えや多くの成長の一助になっていけるように、また先に訓練に参加した自分達の今後の行動が大切になる。多くの人の意見を聞き、この学園を卒業したことを皆が誇りに思えるように先に卒業するものとして責任を持つ事を約束した。
最後に総括をした班長の発言により大きな拍手がうまれた。
こっそり入ってきたマイクロもいつの間に教授が並んでいた場所に立ち拍手を行った。
一旦解散になるとサリアル教授は隊長とマイクロを呼び出していた。
ローレル教授と基本薬科顧問がザクスと自分の所にやってきてほめ殺しをしてくる。
サリアル教授がまだ戻ってこないので、レンから王女とのパーティーの件で報告が来たか聞いてみた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
遡る事12月第1週水曜日、その日の寮は朝から大わらわだった。
レンとティーナ・執事と侍女二人は学園を休み準備に余念がない。
談話室でティーパーティーを行い、そこからお風呂・食事・パジャマ(寝巻き)パーティーに突入する。
執事は早めに準備を整え今日は外で泊まるようだった。
「料理長、今日の夕食はとびっきり美味しいのをお願いね」レンがメインで接遇内容を決めていた。
侍女二人はお菓子作りに余念がなく、お風呂の掃除は既に済ませてあった。
ソラとセレアは事前の打ち合わせ通りに午前のうちに荷物持参でやってきていた。
王女レイシアは普通の馬車に侍女を一人だけ連れてきて到着した。
そして荷物を寮の侍女に手渡すと「翌日に迎えに来ます」とあっさりと帰っていく侍女。
あまりの無防備さにあっけにとられていると「これでもお友達の家に行くのに大げさなくらいね」と微笑んだ。
そこからお茶会となった。話した内容は王都での生活や学園について、また最近の社交界で人気の殿方や新しい石鹸についてだった。
ソラはまだ小さいがしっかりしていて極力話を聞くほうに徹していた、ティーナも貴族のしきたりや作法もあるのでおとなしめに優雅にお茶を飲むようにしていたが半分固まっているようにも見える。
レンとセレアが会話を進めレイシアが穏やかな笑みで相槌を打つ、年齢も近く貴族と王族の3人はゆるやかな時間を作り寮内は優しい空気に満たされていた。
途中お湯を張りにレンが退出して侍女の一人がゆずを投入していた。
レンは魔力を流すだけだったので早々に戻り侍女に指示を軽くした後また戻る。
だいぶ色々な話題も出尽くした頃お風呂に入ることとなった。
秘密の薄着仕様のお仕着せに着替えて、寮の侍女二人が王女のお世話を担当した。
「まあ、広くて豪華な浴槽ですね」王女は薄布一枚に大事な所を隠し、蓋をしている浴槽に近づいた。
侍女二人が蓋を端に寄せると柑橘類の香りが一気に立ち込める。
肥大化の魔法を使ったゆずはグレープフルーツやザボンのような大きさになっており水面をプカプカ浮かんでいる。
各々体を洗いうっすら薫る湯を待ちきれず湯船に入る。
レイシアは固形石鹸を手に取り「ああ、この香りも素晴らしいものですね」とうっとりしていた。
侍女に体の隅から隅まで洗われている、ティーナはよくくすぐったくないなと感心していたと後々話していたようだ。
5人が浴槽に入るとレイシアは矢継ぎ早に質問をした。
石鹸についてはさっき聞いていて実感は出来たので、口コミをしてくれることを約束してくれた。
国の発展にも繋がるものだし、衛生的な面からさまざまな病気に対する防波堤の役割をする事になると聞き一箇所に埋もれてしまうのはもったいないと思ってくれたようだ。
ゆずについての説明を受けたけどレンは「貰った物なので・・・」と答えに窮していた。
様々な品種改良や新種の野菜・樹木に力を入れている王国としては当然興味が出る。
後でどんな情報でもいいのでわかったら教えて欲しいとレンにお願いがあった。
女3人寄ればかしましいと言う、5人も寄れば例え一人お子ちゃま体形だろうが嫌でも色々な所に目がいく。
腰のくびれで言えば文句なしにティーナが一番で、着やせしていると思われるのがレンだった。
レンはティーナに比べて運動は少ないけど農業科である、貴族の子女の中では格段に運動をして汗をかくことも厭わない。したがって着やせしていると思われている部分はたわわな場所だった。
レイシアは標準体型だったが雪のように白く滑らかな肌は世の殿方を魅了することだろうと評判だった。
キャッキャとおふろで触りあう、ティーナが一番に脱落をして後数年待たないと勝負にならないソラも脱落した。
侍女二人は桶にお湯をもらい様子を見ながら足湯で体を温めていたようだ。
夕食は料理長が特に力を入れて作ってくれたようだ。
サラダ・スライストマト・クロウベーカリーのパン・チキンソテー、そして簡易ミネストローネだった。
女性の為に野菜多目の油少なめで考えてくれたらしい、ちなみに多めに収穫したトマトを料理長に預けていたリュージは好きに使ってくれていいと言っていたようだ。
「このトマトという野菜?果物?これは美味しいですね」レイシアが感想を言うとみんなが頷く。
「世界で食べるものが足りていれば争う理由の半分は減ることでしょう、問題はその後の思惑なのですがそれは各国や政治家の方にお任せしたいと思います。私達は私達で出来る戦いと幸せの掴み方を模索しなければなりません」
「「はい、私もそう思います」」レンもセレアも領地を預かる一族である、王族とは考えている視野の広さは違うが求められているものにはそう差はないはずだった。
スライストマトで素材を楽しみミネストローネで野菜の温かみと酸味を楽しむ。
冬場の一杯のスープが心まで温めるのだ、寒さが厳しい王国では毎年冬に少なくない支援はしているものの亡くなる人も出てしまう。もし何か考えられる案があったら是非出教えて欲しいとお願いをされた。
大部屋を色々セッティングして5人が寝られるように準備してもらった。
ここではヴァイス・ザクス・リュージの話になったようだ。
詳しい話は割愛となる、寝る前のお話だし何かと秘密な事も多いだろう。
翌朝は侍女が迎えに来てラベンダー石鹸の詰め合わせを贈るととても喜ばれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「王女さまとのパーティーは無事成功したらしいよ」レンから所々割愛された内容の報告を受けたそうだ。
ダイアンから今日新商品として売り出す事も聞いていて、今日の【グリーンフレグランス】は朝から行列が起きていたと聞いている。基礎薬価顧問もすぐに黒字になって業務拡大になることだろうと言っていた。
少しするとサリアル教授がうんざりとしているマイクロと隊長を連れてやってきた。
「リュージ君お疲れ様でした、今日は十分休んでください。試験は今週末にありますが、あなたは今回の試験は時期的に免除されています。ですが、この試験をクリアすれば今後免除される講義や受講できる講義など特典があります。今回の山岳訓練もきちんと評価されているので引き続き頑張ってください
サリアル教授は訓練の報告は週末で良いと言っていた、聞き取り調査は既に済んでいることだろう。
土日の予定を聞かれたけど何もない事を告げると師匠を紹介したいと言ってきた。
サリアル教授の師匠は常春さまだ、一人の引退した教授についた称号になったけどサリアル教授を教えたくらいだから凄腕の魔法使いだと思う。
今のところ春になったらラース村に行くことと、ラベンダーの植え替えのお手伝いくらいしか予定がないのでしばらくは体作りに力を入れたいと思う。
試験については周りに聞き取り調査をしてから考えたいと思う。