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045:招待状

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36,000PVを超えました。

大台とても嬉しいです。

 そこは工場と言うより大き目の倉庫兼給食調理場のような場所だった。

シンクは豆腐でも作るのかというような印象があり、そこで固形石鹸を作っているようだ。

ヤシの実のようなものを半分に割り細かく切って液体ごと磨り潰す、濾したものを低温で火にかけ冷ますと消臭効果の液体を混ぜ更に秘密の溶液を入れると液状石鹸の完成となる。


 この液状石鹸にエッセンスを加えると固形になるらしい。

深めのシンクでは熟練のおばちゃんが柔らかさを調整するように植物油を入れていた。

出来上がった固形石鹸は完璧に固まる前に包丁で均等に切り、最後に面取りをするように鉋を使いながら仕上げる。

ちなみに原価として高かったのがこの植物油だそうだ。


「これが一連の流れになる、植物油は無臭のものだが元の植物の匂いが匂いだけにな・・・」

「この工程なら作業を変える必要は少なさそうですね、このラベンダーのエッセンスで固まるようならすぐに大量生産に入りましょう」ザクスがダイアンに提案する。基礎薬科グループの顧問は卒業予定の学生を伴って現場主任に色々聞いていた。


「増産は指示を出せばすぐに出来る。なあ、主任問題なかろう」

「はい、液状石鹸の方は在庫として保管してありますので。置き場もないくらいですから」

「では、まず試作品と作ってみませんか?」

ザクスがエッセンスの瓶を取り出すとおばちゃんに一旦見て貰う、すると蓋をあけたおばちゃんは軽く振って粘度を確認すると「いつもと同じ分量でいけると思いますよ」と主任に報告した。


 見学者が全員集まると「その瓶は自由に使ってください」とザクスが言う。

最終工程の液状石鹸に1雫のラベンダーエッセンスを垂らすとみんなが息を飲んだ。

過冷却された水が振動で一気に氷になる現象があるが、液体の中に1雫垂らされた波紋はゆっくりと広がり数秒もしないうちに表面が固まっていった。

「この感じですと10分くらいで切れるようになります」と砂時計を逆さにした。


 四角い筒状の箱に液体が入っていたのだが時間になると先端をスライドさせる。

そしてこの先端が十字で逆向きの刃物になっているようで、入り口の方から突き棒で押すと水の中に長い石鹸が4本出された。「ところてん方式かぁ」みんなに聞こえないように呟いた。

いつもと同じ硬さに固まったようで完全に固まる前に一個ずつの大きさに切っていく、最後に面取りする頃には完全に固まっていた。

たった1雫なのに大量の固形石鹸が完成したので、ダイアンは一個を手に取り香りを確認すると実際に水につけてから手を洗っていく。もともと洗剤能力としては申し分ないので香りを確認していたようだが、水をつけるとほんのり広がる香りが下品ではなく爽やかだった。


「輸送と保管を考えると全部固形にしたほうが良いかもしれないですね」ダイアンに投げかけるとラベンダーエッセンスの量と香水の量の兼ね合いがあるので、まずは固形の増産を先に指示し始める。

「こちらは貴族・商人向けに高価格帯としてもう一度売り込みたいと思う。ただな、一度染み付いた印象がぬぐえないのが正直なところだ」

「ダイアン殿、私も交友関係に紹介してみるつもりだ」ローレルはこの商品なら問題ないので心配しないようにと元気付けていた。


「それでは一度献上してみてはどうですか?」その言葉に周りの注目が集まる。

「今度レンとセレア様がお風呂パーティーを計画しているようです、ダメでもともと王女様もお招きして帰りに石鹸の詰め合わせを贈ると喜ばれると思うのですが」

「地位的に不敬ではないか」とか「どこに招くのか」とか「そもそも招待状をどうやって送るのか」とか色々話し合っていた。

「現物も出来たことですしその辺は戻って話し合いましょう」念の為、精霊さまに作ってもらったラベンダーエッセンスも現場主任に渡すことにした。


 ダイアンは工場を出る際お土産としてみんなに5個ずつの固形石鹸を配っていた。

「商業ギルドに包装の仕方を相談するといいかも?」と提案してみるとセレアと話し合って売り込み方は考えるそうだ。

【グリーンフレグランス】を営業しているくらいだからセンスに関して心配はしていない。

再び屋敷に戻るとセレアとソラとレンがお茶をしていた。


 二人が話し合っていたお風呂パーティーの詳細は決まったようだ。

レンとティーナが主催をして寮で行いセレアとソラがゲストで寮の侍女がお世話をする予定だった。

男性が山岳訓練に行く来週の火曜か水曜日あたりに午後からお茶・お風呂・パジャマパーティーに突入するらしい。

パジャマがあるかどうかは分からないがお泊り会という意味だったようだ。


 ダイアンは石鹸が無事完成したことを娘達に話すとレンにも宣伝をお願いしていた。

新商品としての発表は翌々週の月曜からにするらしい。

「出来ればリニューアル前に色々な人に紹介できると良いと思うんだ。そのお風呂パーティーに王女さまを招待でることは出来ないかな?」レンとセレアに聞いてみると、王女は数年前まではよくパーティーに参加していたようだった。

比較的年齢も近く、気さくで優しく話しやすい王女なので、叶うなら久しぶりにお話してみたいと前向きな意見が出てきた。

後は招待の仕方次第だとパーティーの内容をもっと豪華に詰めなくてはと意気込んでいた。

作戦については寮に戻ってから相談することにする。


 名残惜しそうにしていたが会談も終わり報酬についても石鹸についても一段落したので寮に戻ることにする。

ちなみに基礎薬科の生徒は現場主任にも気に入られて、空いている時間が出来たらアルバイトに来るように指示されていた。

4月から正式に雇う事も決まり雇用条件も文句ないものになっていた、後は無事卒業出来るかが問題である。

ローレルと基礎薬科の顧問とも屋敷で別れたが、パーティーは平日にやる予定なので参加できない事を悔やんでいた。

「おじさま、女性限定のパーティーですので」の一言にローレルは顔を赤くしていた。


 寮に着くとレンが早速寮母と侍女と執事に報告をする。

当然のごとく付き合わされるザクスは「リュージも来るよね」と言われレンの後ろについていった。

「そういう訳で王女さまをお招きして女性だけのパーティーを開きたいのです、まずは許可をお願いします」深々と頭を下げるレン。

「楽しそうな催しですね、それでどのようにするのですか?」詳細を教えてちょうだいと乗り気な寮母。

なかなか話に入れなかったけど次々と役割が決まっていき料理長も呼んで内容も決まっていった。


「それで招待状なんですが・・・」とレンが切り出す。

「まずは素直に書いてみて王女さまの予定を確認してみることです、この寮は国の支援が入っているという事は現状を確認したいかもしれません。また、リュージ君の名前を出せば少なくとも王女さままで手紙が届くと思いますよ」不意に視線が集まった。

「あ、そういえば王女さまに会ったことがありますね。覚えているかどうかは分かりませんが」少し気を引くような作戦を考える必要があると思った。


 薄い布に固形石鹸を包みリボンでラッピングしてみる。

レンとティーナに確認してもらい招待状には自分の名前も入れてもらった。

翌朝早くに王国の調理場副料理長のコロニッドさんにお願いがあると門番に話をつけてもらい、少し待った後コロニッドさんに会う事ができた。


「どうしたんだい?こんな早くに。もしかして調理場に興味が出てきたとか?」

「お忙しいところすいません、料理についてはもうちょっと先でもいいかなと。本当は招待としては反則だとは思うのですが、この招待状を王女さま宛てに届けたいのです」

「うーん、僕達はただの使用人というか技術職だからね。貴族的なやりとりには関われないんだよ」

「はい、ただレイシアさまを友人として招くと言う建前ではダメでしょうか?」

「あはは、王女ではなく個人を友人として招くんだね。王女付きの侍女に話すだけならいいよ、無事届くか届かないかは運次第だけど」

「それでいいです、後出来れば・・・」


 コロニッドに招待状とラッピングされた石鹸を1個渡す。

その他に2個のラベンダー石鹸を渡すと一個は調理場で使って貰うように、一個は侍女が招待状を持っていく前にこの石鹸で手を洗ってから持っていって貰えるようにお願いをした。

「うちでも匂いがつかない程度には・・・クンクン。ん?何か違うね」少し興奮して「なになになに?」と聞いてくるコロニッド。

「ちょっと訳ありですが今はまだ発表出来ないのです、準備が整ったらコロニッドさんにもきちんと報告しますので」

「また面白いことしているみたいだね、期待して待っているよ。侍女にもうまく行くようにちゃんと話しつけるから」

大きく手を振りその場を後にした。


 大通りを散策した後ふらりと寄った食堂でお昼を食べる。

また、普段は学園と寮の往復だけなので色々な露店を見て野菜などを補充した。

何気なく散歩気分だったので普段通らない道に進むと協会があった。

協会では結婚式が行われており、多くの参列者が祝福の声をかけていた。


 ラース村でもそうだったけどこの世界では協会の近くに孤児院がよく併設されることが多いらしい。

また、孤児院は結構なスペースがあり家庭菜園でもやれば結構な量が収穫できると思った。

「あの、どちらさまですか?」不意に声をかけられる。

「あ、すいません、怪しいものではないです。学院に通っているリュージと申します」と言いながらギルドカードを出す。

「ラース村で協会のマザーにお世話になったので懐かしくなって・・・」

「まあ、あの・・・」


 どうやらマザーは協会では有名人だったようだ。

そう言えば王子にも何か言われたような気がしたけど・・・思い出せなかった。

孤児院で基礎的な勉強を教えているシスターだったけど、世間話から最近お野菜が高くてとか、子供が元気すぎてとか、主婦のような話しをし出してきて止まらなくなってきた。すると奥のほうから「何事ですか?」と別のシスターがやってくる。

「あら、あなたは焼き芋屋さん?」久しぶりな呼び方をされて一瞬懐かしくなった。


所持金:金貨5枚+銀貨50枚(+銀貨50枚)

支払い:銀貨-10枚(食材他+お昼)

残 金:金貨5枚+銀貨40枚(+銀貨50枚)

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