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036:お見舞い

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20,000PVを超えました。

大台とても嬉しいです。

 寮でお昼を食べた後、ザクスとレンを【グリーンフレグランス】まで案内する。

かわいい商品や小物等に興味を示しているレンはゆっくり見てもらって店員さんと少し話をする。

やはりスポンサーはセレアのようでこのままの状態が続けば年内を目途に店を畳む予定らしい。

今ある商品も在庫処分価格というか従業員割引価格ということで「相談に乗ります」と商魂逞しく勧めてくる。


 石鹸と液状石鹸を選び遠くから香りを確かめるとやっぱり残念な感じだった、石鹸と液状石鹸を銀貨5枚分購入すると随分な数を用意してくれた。

「こちらは畳むだけで良いのですが、問題は石鹸工場なのです」とため息をつく店員。

まもなく年末になり何かと物入りな時期に職を失うのは厳しく、親しくしている仕事仲間を思うと販売がうまくいってない自分を責めているようだった。なんか聞いた以上もう少し売り上げに貢献するべきかなとガラスの香水瓶と小物入れを5個ずつ選び銀貨5枚を支払った。


 ザクスとレンもそれぞれ何か購入していたようで、この後どこか行きたい所があるか聞いてみるとセレアの様子だけでも確認したいとレンが話す。

どうやらサティス家はここからそんなに遠くない場所にあり歩いても行けるそうだ。

散歩がてらに歩いていくことにする。


 屋敷の前に到着すると門番に挨拶をするレン。

ザクスが冒険者カードを出して身分確認をしていたので自分も同じようにカードを見せる。

その間にもう一人の門番が屋敷へ連絡をして先ほどの侍女が案内にやってくる。

「レン様、早速のお越しありがとうございます。セレアお嬢様もレン様にお会い出来ればすぐに元気になると思います」と屋敷に案内してくれた。


 客間でお茶を堪能しているとソラが父親を連れてやってくる。

「レン様、姉は間もなくやってきますので少しお待ちください」と挨拶するソラに「私にも紹介してくれないか?」と尋ねる父親。レンは既にお互いの家での行き来はしているのでザクスと自分の自己紹介を始める。

「わざわざすまないね、私はサティス家の当主でダイアンと言う。学園の特待生といえば今後、国の仕事でも関わりもあるだろうからその際は宜しく頼むよ」と握手をして軽く会釈する。

「おや?その商品は・・・」と【グリーンフレグランス】の商品を見つけたようだ。


 各所から出来れば今の石鹸関係の事業を続けて欲しいと話はあがっているが、初期投資を回収出来ないまま不良在庫が増えていき、今年いっぱいで撤退することを決めた。

そしてその事をセレアに告げた後、原因不明な病にかかってしまい数日寝込んでしまった。

医者を呼んで薬を処方しても更に悪くなる一方で、とうとう楽しみにしていた今日も行けない程隊長を崩してしまった。


 ノックが聞こえ、侍女がセレアを連れてやってきた。

ドアを開けるとセレアの意識が軽く飛んだ状態で虚空を見ながら貴族らしい挨拶をする。

そして瞬間ぐらつく体を侍女がしっかり押さえてレンが駆け寄る。

レンが侍女と一緒にセレアの部屋まで運びに行くとダイアンに話を聞いた。

最初「事業の停止でショックを受けたのではないか?」と聞いてみたところ「そこまで弱い子ではないよ、これでも貴族の子女だからね」とドライな反応をした。

流行り病がこじれた場合に同じような症状が出るらしく、最悪意識不明に陥ったり失明をしてしまうらしい。「年に一人か二人出るくらいだから心配してはないのだが・・・」と現状を考えると薬の効果もあがってないので父親として心配しているようだった。

協会で神聖魔法の使い手をお願いしているので今日か明日にでも見てもらえるそうだ。


 レンが戻ってきた、セレアはベッドで休んでいるらしい。

「お姉さまはクッキーをとても楽しみにしています。元気になったら真っ先にお茶と一緒に楽しみたい」と話していました。

ダイアンも工場や他の職員が次の職場でも働けるようにきちんと動いている、また工場は次の事業が決まるまで閉鎖という形を取るらしい。

「ひとつやふたつの失敗でやる気をなくすようなら新事業なんて出来ないさ」と明るく話した。

またセレアの様子を見にきたいとレンが伝えるとダイアンもソラも歓迎しますと逆にお願いされた。

「何かあれば駆けつけるので」と連絡先を置いて屋敷を後にした。


「多分、セレアの心が弱った所に病気が付け込んだんだわ」

「俺の薬じゃ神聖魔法には届かないしなぁ」


 専門の医者と魔法使いがお手上げなら自分達に出来ることはない。

でも、この石鹸が少しでも売れるようになれば気持ちの面では元気になるだろう。

「ザクス、もし香りの良い花があったらこの石鹸どうにかできる?」と聞くと「油分と香りの抽出の問題かな?実物があれば色々手段はあるよ」と力強い言葉だった。


 寮への帰り道、ザクスが薬学科の特待生になる経緯を聞いた、「あぁ、ちょっと言い辛いな」とレンを見るザクス。

ザクスはレンの家が治める街の出身らしい、幼い頃によく領地で遊んでいたレンは男勝りの行動派でありガキ大将みたいな存在だった。ある日入ってはいけない森に何人か引き連れて冒険に出ようと画策していたレン、その後を着いていく男の子は親を恐れ・森を恐れて一人ずつ脱落していった。

最後まで逃げ切れなかったのがザクスだった。


 女の子を一人にしてはいけないのと領主の娘に何かあっては問題になるという責任感が残されたザクス一人に圧し掛かっていた。そんなことを一切考えずどんどん進むレン、あたりがすっかり暗くなると足を踏み外したレンが動けなくなった。

よく親と薬草取りなどをしていた経験があったザクスはそういう時の対処は心得ていた。

湿布代わりのものや痛み止め・屋外で食べられるものなどをあっという間に集めてきてレンを驚かせた。


 後で大人達の大捜索隊が逃げ出した子供の証言をもとにやってきた。

「私が成長して今の男らしさをみせてくれたら雇ってあげるわ」と通常なら恋愛フラグが立ちそうなところを平気で叩き折るのがレンらしい。

「昔のことですわ」とそっぽを向くレンに「その後大泣きしたって聞いたけどね」というザクスの言葉にあたふたしていた。

その後、学園に入る前に一度領地に行き兄の代わりに治める事になるだろう領地を興味なさそうに視察していたレンが会ったのは調合士見習いで働くザクスだった。

大した腕もない親方に徒弟制度として規定年数の見習いを過ごさないといけない。

才能の無駄遣いをするならいっそ学園に入ってはどうかとかなりの勧誘をされたようだった。

「才能がなければ誘いませんでした」と自信をもって言うレンは今でもガキ大将なのかもしれないと思った。


 寮に戻ると夕食まで談話室でおしゃべりタイムになる。

ヴァイスは先輩騎士科の人に稽古をつけてもらい、ティーナはギルドに行き日帰りで出来る依頼を見たり採集をしたりしていたようだった。

「もう聞いてよ、採集ってこの時期全然集まらないの」と向いてなさそうな依頼を受けたティーナに苦笑するザクス。「採集だったら僕かレンを連れて行かないとダメだよ、植生だってあるし季節のものもあるからね」とアドバイスをすると「依頼があったからあると思ったの」と常時依頼なのが悪いというティーナだった。


 食事前に風呂を準備して石鹸も提供する。

予算が降りているのでその範囲なら出せると執事が言ってきたが、特待生で随分優遇してもらっているので大丈夫と申し出を辞退した。侍女にも石鹸と液状石鹸を数個使ってくださいと渡した。

気持ちよく風呂を使えるように掃除も始める、こういう日常の何気ない作業も暮らすって事だなと実感する。


 食事と風呂が終わると今日は自室で魔法の修行をする。

瞑想から始めて魔力を練る・エンチャントの要素を加えてみる・盾の形を作ってみる。

盾を形作る事が出来たら今度はその状態が意識しなくても保てるように他の事をすることにした。

グリモア【野菜百選】を開いて新しい畑に作りたいものをパラパラと探してみる。


 トマトのページを開くと色々な種類があることに驚きを感じた。

一般的なトマト・プチトマト・フルーツトマト・後は細長い煮込みっぽい用途のトマトなど食べ方によっても多岐にわたるようだった。

収納の【植物関係】から植物の種を取り出すと以前にはなかった種が混ざっているように感じる。

「これって・・・女神様か緑の精霊が混ぜたのかな?」トマト各種の種が増えていたみたいだし、大き目の袋に接木用の枝っぽいのもあった。

「麺類が恋しいなぁ、このトマトを育ててトマトソースで何か料理つくれるかな」と魔力鉢を取り出し種苗増殖・成長促進とかけて苗を増やしていく。


《New:植物属性魔法のレベルが上がりました》


「問題は流通に乗せるかどうかかな?でも、学園で作ったなら各所にばれるからなぁ」と作る前から皮算用してみたけどビニールハウスが無理そうなのでまだいいかと先送りする。

金木犀やラベンダーなどの種や株も増えていたようだった。


 明日は自分もギルドに顔出してみるかな?今のままでは所持金は減る一方だし週末に出来る依頼だったら受けてもいいかなと思う。


所持金:金貨5枚+銀貨90枚(+銀貨50枚)

支払い:銀貨-10グリーンフレグランス

残 金:金貨5枚+銀貨80枚(+銀貨50枚)


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