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114:リュージの魔法講座

 特待生で固まるとどこか壁があるようで、どうやって魔法を教えようか考えていると、グループのみんなが遠巻きにこちらを見ていた。みんなの邪魔にならないように隅っこで話をしていると、基礎薬科グループの顧問がやってきた。


「学園長から聞いたぞ、お前達『グレーナ草』の栽培に成功したんだってな。いやぁ、すごいすごいとは思っていたが、まさかなぁ」

「ありがとうございます、王都でも育てられたらと思ってわけて貰ってきました」

「それはいいな、難しいから色々調べながらやらないとな」

「先生任せてよ、農場でリュージから場所を借りてるから手塩にかけて育てるよ」

「ザクスも1枚噛んでいるのか・・・。正直うらやましいぞ」


「先生も育ててみたらいいんじゃないですか?ねえ、リュージ。まだ種はあるんでしょ?」

「うん、あるよ。10粒位でいいですか?ローレル教授も興味が沸くと思うので、お二人で分けてください」

「いいのかい?リュージ君。そうだ、ザクス。これリュージ君が開墾した場所で育てたらどうだろうか?」

「あ、いいですね。しばらくこっちでお世話になるので、進めておいてもらえませんか?」

「わかった、両グループ長へ話しておく」

「「「お願いします」」」


 多分もう邪魔は入らないと思う、困った時は魔力鉢だった。

「リュージ、それはまずいんじゃないか?」

「うん、まずいわね。寮に帰ってからならいいけど」

いきなりダメだしをされてしまったので一回仕舞う、こういう時普通の魔法使いは・・・そう、杖を使うんだった。

杖を2本出して、一瞬考えてレンにガレリアから貰った杖を渡す。


 杖の先に魔力を灯す、一番最初に覚えたエナジーボールだ。

レンは神聖魔法を使えるし、魔力の掴み方・練り方・引き出し方などすぐ出来るだろうと思う。

瞬時に集中したレンは、杖の先に魔力を灯した見本のように魔力を集めようと努力していた。

それはガムで風船を作るように、後少しで風船が出来るのに力加減や偏りに苦労しているようだった。


・・・パスン。

「ねえ、リュージ。属性魔法ってすごく難しいのね」

「いや・・・、さすがレンだね。じゃあ、こっちの杖でやってみて」


 杖を交換して、再び杖の先に魔力を灯し見本を見せた。

二回目のレンはどうせダメだろうと思っているのか、良い具合に力が抜けている。

さっきとまるっきり同じ感じで魔力を集めると、いきなりこぶし大の魔力の塊がレンの杖の先に集まりだした。


「え?え?何これ」

「レン、集中。そのまま維持して」

こちらの杖の先に灯った小さな魔力に土の魔力を込める。

そして、花火の火を分け合うようにレンの魔力に重ねる、すると杖の先の魔力は両方とも土属性となった。


「リュージ、これどうすればいいの?」

遠巻きに見ていたギャラリーが徐々に集まってくる、レンは杖の先の魔力に驚いているので、まずは魔力に方向性を与えてみることにする。

「レン、落ち着いて。集中を切らさず『圧縮』するか『回転』するかしてみて」

「わかった、回転が出来そう」

「「がんばれー」」


「こんなすぐにすぐ、魔法って覚えられるものなの?」

「いや、特待生だからだろ」

「いやいやいや、レンさんって農業科の特待生だろ」

「教えている方だっておかしいぞ、魔力に魔力重ねたらどうなるかわかってるか?」

「良くて対消滅、悪くて爆発だよな」


 一瞬どきりとしたけど、成功してしまったので深く考えないことにした。

レンのやる動きをトレースしながら、追い越して見本として見せていく。

ゆっくり回転させていったレンの魔力は、回転に集中した為に大きさが徐々に小さくなってしまう。

「動きはいいよ。その小さく回転している魔力に、砂や土を上からかけて土ダンゴを作るように大きくしてみて」


 もうギャラリーが、かなりの距離に近づいている。

サリアル教授や土属性が使える生徒も、見よう見まねで魔力操作をしている。

再び、こぶし大まで大きくなったレンの土属性の魔力は、慣れたのか安定していた。

「レン、それが土属性の魔法の初歩だよ。自分はサンドボールと名付けたけど、好きな魔法名を決めといて」

「うん、これどうしたらいい?」

「ちょっと離れるから、自分に向かって撃ってみて」

「え?いいの?」

「忘れないうちに、どんどん慣れるのが一番だよ」


 みんなに少し離れてもらって、「いいよー」と合図を出す。

「「「サンドボール」」」「ファイアボール」

何故かレンの横で魔力操作していたサリアル教授も含めて魔法を撃ってきた。

若干、違う魔法が混ざってるのが少し悪意を感じる。


 用意していたブレイクの魔法をキャンセルし、ストーンウォールと唱えると次々と土壁へ魔法が着弾した。

「おい、フレアは魔法が違うし、何で撃ってるんだよ」

「あ、ごめん。的になって訓練してくれるんだと思って」

「フレア、少し自主練してきなさい」

サリアル教授の叱責に、冷めた目で見てしまったのは仕方がないと思う。


「みんなもう撃たないでよ、サリアル教授もお願いします。今はレンに説明しているんですから」

「ごめんなさい、リュージ君。みんなの勉強にもなるので話を聞くくらいはいいかしら?」

「それならいいです、聞くだけですよ」


「なあ、リュージ。何で急にレンが出来るようになったんだ?」

「ああ、最初に難しい杖でやったからじゃないかな?ガレリア先生に貰った杖はかなりシビアな条件じゃないと魔力が発動しにくいやつなんだよ。特訓用ってやつ?」

「なるほど、じゃあ2本目のは普通のなんだな」

「いや、2本目のは紫水晶を埋め込んだ、使い勝手が良すぎる奴だよ。魔法はまず発動出来ないと覚えられないからね」


 それからはレンを含めてみんなに説明を始める。

主に学園で習うことの簡易版だけど、魔法の大前提として出来ると思うことしか出来ない。

水瓶から火を生み出す事が出来なければ、カマドから水を生み出すことは出来ない。

では、どうやって覚えるかと言うと、既に魔法使いが使っている魔法が使える魔法である。

それは口伝や伝説などからでも、出来ると思えば出来るのが原則だ。


 他には自然現象を模倣していたり、武器や攻撃手段を真似していたりもする。

レイン・クラウド・ストームなどから、ニードル・スラッシュ・ハンマーなどである。

これは想像しやすいのが使いやすい一因でもあった。


 特に属性魔法は相反する属性の特性を共有している事もある。

別の属性でも似た効果があったり、複合魔法と呼ばれる魔法も使えたりすることもあった。

これは精霊さま単独では難しい事のようで、人や他の魔法が使える者が持つアドバンテージである。


「こんな感じだけど、わかったかな?」

「うん、だいたい分かった。でも、これは私も杖を買わないとだね」

「そうだね、さすがにその杖は・・・ねぇ」

「うん、返しておくね」


「後、大事な事は魔力に何を込めるかです。攻撃をしたいのか防御をしたいのか、変化を起こしたいのか。私が補足できるのはこのくらいです」

「ありがとうございます」

「レンさんは下地もありますし、瞑想の講義も受けているので、すぐにものに出来るでしょう」

「ザクスもやっとく?」

「え?とりあえず杖を買ってからにするよ」

「分かった、じゃあこれから行こうか?」

「ちょっとティーナの所へ寄っていかない?多分、大丈夫だと思うけど」

「ああ、ローラの事か。ヴァイスからはもう大丈夫だと聞いてるけど」

「あまり過保護にしてもね」



 実践戦闘グループに行くとティーナが手を振ってきた。

三人で近くへ行くと、ティーナは申し訳なさそうな顔をしていた。

「リュージ、ごめん。いっぱいになっちゃった」

「どのくらい?」

「うん、20人くらい。こっそり伝えてたんだけど大事になっちゃった」

「まあ、仕方ないよ。それで希望日ある?」

「みんな何時でもいいって言ってたよ。ただ、リュージはいつも学園にいないイメージみたいだから、早いほうが嬉しいって」

「じゃあ、土曜日でいいかな?準備はお願いしておくから」

「わかった、みんな喜ぶと思う」


 後の事をお願いすると三人で杖を買いに行った。

二人とも極々一般的な杖を購入すると、そのまま農場へ直行し、土曜日のお願いと備品の発注を指示した。




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