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105:旅の準備

 日曜も農場で畑仕事をしていた。

時たま職員から自分達がやりますので止めてくださいと言われるけど、みんなが一生懸命やっている姿を見ると自分も何かやりたくなるものだ。


 森エリア近くに行くとドワーフのゴルバを見つけた、やっぱりこのエリアに来るとここで作業をしているようだ。

声をかけると森エリアの生育状況や、昨日の梅の苗木について熱く語っていた。

樹の生育なんて一日や二日でどうにかなるものでもないだろうと思っていると、成長促進を使わなくてもこの農場での成長は凄いようだ。

今度、弱っていて保護している小さい樹をここで休ませたいとお願いをされたので、「移動と管理が出来るなら良いですよ」と許可を出しておいた。


 ザクスは昨日、研究棟の方に指示を出していて、今日はレンと買い物に出ているらしい。

買い物と言っても前回のペナルティーでの荷物持ちだ、技術は凄いがどこか残念なザクスは良いキャラクターだと思った。きっと男同士の集まりで映える性格だと思う。

ローラはどこからかの指示なのか、今日は寮でお留守番をしていた。


 昨日王子からの話で、王子の旅にダイアナが同行するとあったが、王宮であった事件対策から依頼をしたようだ。

ガーゴイルもどき子爵が残した黒い石は聖光に弱い、そしてセレーネの事を考えて女性が一人いると安心と言う事でガレリアに相談したらダイアナを紹介されたようだ。


 この農場は孤児院から働き手として多くを雇い、食事面でもサポート出来ている事から、あの協会と孤児院の仕事が大分減ったようだ。この前も「農場で読み書き計算の指導も出来ますが」と出張サービスも申し出てくれていた。

まだ、農場がスタートしたばかりなので、様子を見てお願いしようと思っている。

王国からの寄付と引き換えに、ダイアナは今回の依頼を受けたようだった。


 王子の旅への支援物資を考える、コロニッドには色々な料理を伝えてあるし、レイク経由で色々な商品も出ている。

外向けに出しているのは業務用サイズが多く、この農場で出せるとしたら新鮮な野菜が良いだろうと思う。

王子は軍の一部を管理しているので野外活動も問題ないはずだ。

バーベキューコンロもあると聞いているし、いっそスープ類を鍋ごと提供しようと思う。


 セルヴィスが馬車でやってきてワインの積み下ろしをしていた。

見習いとして、この前の事件での男爵の息子を預かったようで、職員も手伝いながら作業をしていた。

商業ギルドではアーノルド家のワインを扱うのに、まだ若干の反対派がいたので、レイクにアーノルド家とセルヴィス双方からしばらく出荷を止めると伝えてあったみたいだ。そのせいか、ワインバーは連日の盛況であった。


 自然と王国民からアーノルド家のワインが飲みたいという声が大きくならない限り今のままでも問題はないそうだ。

白ワインは今のところマヨネーズに化けているし、大々的に飲めるのはこの農場とワインバーだけだけどね。

実は内々に王家と高級キャ○クラからもワインを納めて欲しいと打診を受けている。

セルヴィスに相談をしたら、今回の王子の旅への選別に極上ワインを贈ると言っていた。

選んでもらった樽を収納に仕舞う、そして出荷場所で大量の野菜を出荷担当者に話し持ち出した。


 王宮の調理場へ通してもらうとコロニッドがやってきた。

昨日のパンにとても感動したそうで、収納袋へ様子を見ながら王子の旅の料理を作って入れているらしい。

同行する近衛もダイアナも料理は普通に作れるし、騎士ともなれば野外活動は問題なしだ。

調理器具などはあるもので賄えるので問題ないそうだ。


 大量に新鮮野菜を王子の収納へ入れる、調理に必要な物はこの場で作って貰おうという算段だった。

料理長から副料理長であるコロニッドをお借りして、数名の助手をつけてもらった。

ポトフは既に入れているようなので、トマトベースのミネストローネを作ってもらった。

パンはもうこれでもかというくらい入れていて、さっそく昨日のチキンカツバーガーとホットドックとチリドックを入れていた。そう聞いたらベーシックなハンバーガーやチーズバーガーがないじゃないかと思い出したのだ。


 昨日の今日で大量の丸パンはあったので、挽肉と玉ねぎで薄めのハンバーグを作ってもらい、ピクルスとトマトスライスを好みの大きさに切り、味付けはケチャップを使って重ねていけば完成だ。

気がつけば料理長が興味深く見ていた、次々とハンバーグをコロニッドが焼き助手がバンズを炙る。

そして料理長が味見をすると周囲から、「ずっりー」とブーイングが響いていた。


「うむ、うまいな。しかも手軽で食べやすい」

「料理長、冷静すぎ。そんなリアクションじゃリュージ君の料理教室に参加できませんよ」

「え、いや。普通に来て下さい。特に隠すような技術もないですしね」

「おお、そうか。じゃあ今度はコロニッドじゃなく俺が行くことにするよ」

「ええぇ、そんなぁ」

周りから試食を熱望されたので料理長が許可を出すと、次々と自分の分を重ねて完成させて行き、待ちきれないかのように齧り付く。


「うぉぉぉぉぉぉ、なんだこれぇぇぇ」

「うめぇ、マジうめぇ」

「例のピザ屋で食べた時と同じくらいの感動を今俺は味わっている」

「え?ピザ屋なんてあるんですか?」

「ああ、最近出来た店で、何と今では幻となったアーノルド家のワインまで置いてあるんだ」

「おい、それはワインバーだろ。そこはリュージ君プロデュースのお店だからな」

「良かった、もう真似した店が出たのかと思いました」

「まじか、なあリュージさん。あそこはもう入店が厳しいんだ、何とか便宜を図ってくれないか?二号店とかでもいいぜ」

「無理言うなって、あの店だって出来たばかりだぞ」

「ああ、そうだな」

「その辺は追々考えますので、ワインバー共々宜しくお願いします」


 普段黙々と働く調理場で騒ぎがあるのは珍しい。

王子は旅の準備の事もあり、最近は時間が空くと調理場を覗くようになっていた。


「何だこの騒ぎは」

「王子、男子たるもの厨房を覗くものではありません」

「いや、王宮内で問題がある場合は私が責任者として解決せねばならない。おや、リュージかどうした?」

「昨日のお話で、旅のお供に何か支援出来ればと思いまして」

「何か催促したような言い方だった。すまんな」

「いえ、日頃より色々支援して頂いていますので」


 厨房の全員がハンバーガーを口にしているので、料理長がハンバーガーを組み立てて王子へ渡すと、躊躇いもなく齧り付く。そういえば普通、王家なら毒見係りとかいるんじゃないかとふと考えると、「うまい」と一言王子からコメントが飛び出した。どうやらコメント力的には料理長とさほど変わらないようだ。


 次々とハンバーグを焼くコロニッド、助手がバンズを炙る、調理人達が食べる。

「うぉい、お前達試食の量じゃないぞ」コロニッドが吠えた。

調理担当が交代したのでコロニッドが改めて試食に入る、バンズ担当者も交代したのでこちらもようやく試食出来ると喜んでいた。


 コロニッドが噛みしめながら「くぅぅぅぅ」っと唸ってると、バンズ担当者はこっそり何かをつけて食べていた。

さすが王国の調理場だ、もうバリエーションを考えたのかと何をつけているかじっくり見るとマヨネーズだった。

そう、彼はただ単にマヨラーなだけだった。


 料理長とコロニッドの号令でハンバーガーとチーズバーガーの量産が始まる。

そこにジャンクと言えばポテトだろうとフレンチフライの作成を指導する。

王子に必要な物を確認すると業務用に出しているマヨネーズ・オリーブオイル・ケチャップを指定された。

これは既にコロニッドが手配しているようなので、レイクの配送待ちだった。


 セルヴィスからの差し入れという事で、ワインを樽で渡すと、とても喜んでいた。

野菜も大量に入れてあるし、スープも2種入っている。

柔らかパンや調理パンだけではなく、長期保存に適した従来の硬いパンも入っているし、昨日のラスクなども入っているそうだ。


 さすがに王家の者が旅に出る訳だから抜かりがある訳がない、旅でしいて困ると言えば水の問題くらいだろうか?

それも樽に入れて収納に入れれば問題ないと思う、以前にザクスから貰ったポーション類をこっそり忍ばせて支援物資は終了にする事にした。


 月曜日の午前は戦闘訓練に力を入れる。

午後にはサリアル教授に今週の予定を伝えると、金曜の午前は学園長による特別講義があるので特待生全員で参加するように言われた。これは各指導員から本人に伝えるので特に伝言は必要ないらしい。

グループ活動ではフレアが絶好調らしく、一年を引き連れて準備体操をしていると、みんなを並べて例の振り付の詠唱を始めていた。


 冷めた目でフレアを見た後、サリアル教授に「いいんですか?」とだけ伝えると、「私は学生の自主を・・・自主・・・ふふふ」と明らかにおじいちゃんから振りの事を聞いただろう反応を返してきた。

「まあ、あれで訓練できているならいいですね」

「そうですね」


 自分はしっかり木曜まで戦闘訓練をしようと心に決めた。

それぞれ旅に出るための準備をしている、何事もなければ良いなと思った。




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