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砂の雫から出来た国へ  作者: 小野 茜
95/137

94:分岐点-14

 その晩は何事も無く、雨季にしては珍しい晴れ間が見える朝を迎えた。

 雨が止んでいるのは助かる、とリン達は早めに行動を起こした。


「じゃあ、この子……名前は『ハク』にした……と一緒に行って来るけど、無理せずに待っていてね」

『委細、承知した。ハク様をよろしく頼む、リン』

「分かった。元気に戻って来るから」


 堀の一部に橋を渡し、壁の外側へ出たリン達は、そこで驚いた。

 即席の堀には、すでに水棲の魔物がいて、鰐と似ているそれらから、我等がこの場に住まうことを認めてくれるのならば、この場は我等が守るとの申し出があり、快諾したリンだった。

 その他にも、水場を求めて共和国側から逃げてきた数種の魔物も共存していた。

 その事から分かったのは、共和国側から逃げてくる魔物が多いことで、何かに追われてやって来ていると言うことだろうか。

 何が、そんなに彼等を追い立てているのか。

 共和国の民は、亜人が多いと聞いているけれども、彼等が魔物を追い立てているのだろうか。

 それとも、もっと違う大きな生きモノでもいたのだろうか。

 雨季の雨が、また降り出す前に、目的地へ辿り着けるといいけれど、おそらく難しいと思われる。


「今晩だけは、どう考えても野宿ね。なるべく林に近い場所までは移動したいけれど」

「うん、そうだねぇ。イセリの町だっけ、明日の昼くらいに到着出来ればいいね」

『少し待て、何かが近づいて来ている』

「何だろうね、僕達の方へ近づいて来ているものがあるみたい」

「あら、そうなの。少し様子を見て、それから次の行動に移りましょうか」

『来るぞっ!』


 砂の海から現れたのは、蠍のような魔物だった。

 姿を見せるのと同時に襲い掛かって来たが、リンが防御結界を起動させる方が早かったため、皆が無事でいた。

 リンには、攻撃手段がない。

 従って、消去法でレイがこの魔物と戦うことになったのだが、その前に攻撃を仕掛けた者がいたのには驚いた。

 リンの起動させた結界から出て、攻撃を仕掛けたのではなく、結界の中にあって、そのまま結界の外側で力を発動させたのは、ハクだった。

 驚いたのは、攻撃の準備をしていたレイだけではなく、ハクを腕に抱きかかえたままだったリンもだった。


『森狼の子が、風の力を使ったのか。力が強いのは、感じていたが……』

「ハク、凄いねぇ。蠍もどきが、あっという間に細切れになっちゃったよ」


 クゥクゥと、褒められて喜ぶ様子のハクはそのままに、レイは周囲の状況を確認し始めた。

 これ以上の敵がいないか、と。

 瑠王とも意見を交わし、現状で周辺に敵はいないことを確認した後、リンに防御結界を解除させ、一行は再び移動を始めた。

 子狼とは言え、侮れない力を秘めている事が発覚したハクは、力を使った後に疲れたからか寝てしまった。

 イセリの町までには、砂漠との間に薄い林が二層あり、二層目の林を抜けたら直ぐに町へ入る事が出来る距離になっている。

 町を挟んだ更に向こう側には、海が広がっており、この街は小さいながらも港を持っているため、色々な物は海路より届くことが多いのが特徴でもあった。

 天候も良く、このまま外敵に襲われることもなければ、予定通りに一つ目の林を抜ける辺りまでは移動できることだろう。

 林の端で一泊して、朝から再び移動することで、明日の昼過ぎにはイセリの町へ到着出来る目論見だが、予定は未定だ。

 何事も無く進めるといいな、という希望は、やはり希望に終わった。


「あそこで襲われている人、どこかで会った気がするわね」

「多分、砂虫の時に会った人だと思うよ。今度は、砂虫じゃなくて、人に襲われているみたいだけど」

『盗賊ではないか?』

「盗賊ね。捕まえて、近くの町まで連れて行くと、確か報奨金のようなものが貰えるのではなかったかしら」

「連れて行くのが面倒だよ。襲われている人に、そのまま押し付けてしまえばいいと思うんだけど、駄目なのかなぁ」

『報奨金は、手に入らなくなるぞ』

「そっちについては、別に心配しなくてもいいわ。壁作りながら移動中に、少しずつ狩った魔物の素材が換金出来るから」

『レイの荷物が多いと思ったのは、それがあったからか』

「そうよ。折角ですもの、捨てるモノが換金出来るのを知っていれば、運べる分だけでも運んで換金した方がいいでしょ」

「そういう事なら、僕に言ってくれれば良かったのに。異空間倉庫が使えるから、手荷物も少ないまま移動できるよ」

「そう言われてみれば、そうね。すっかり忘れていたわ」

『我もだ。使える者が少ない力であるから、あまり大っぴらにせぬ方がいいぞ』

「はぁーい」


 見つけてしまったのも運だ、と仕方なく今回も襲われている隊商の救助に向かう事にしたリン達だった。


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