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砂の雫から出来た国へ  作者: 小野 茜
74/137

74:カーラル砂漠-09

 外が明るい時間をフル活用して移動するしかなく、森の中をひたすら進む一行。

 この日は、ライの馬に同乗することなく、リンは瑠王の背中に乗って移動していた。

 すると、今までは気が付かなかったけれど、レイとライとルーイの周りに近づいている沢山の属性に対して、一定の方向性らしきモノが分かった。

 三人に共通しているのが、風であるらしく、自分を含めてこのメンバーで旅をして、風に悩まされることはなさそうだった。

 アルデラの言っていた事から察するに、ナイゼルはまだ自分の屋敷へ戻っていない。

 それならば、あの砂漠へ直行することにしても問題はない。

 地上に現れている部分だけでも、リンがあの場所を訪れた時より広がっている。


「ねぇ、ライ兄ちゃん。この森を出たら砂漠になるんだよねぇ」

「地図通りなら、まぁそうなるな。どうかしたのか?」

「えっと、ナイゼル祖父ちゃん所へ行っても、今は留守みたいだし。遺跡の神殿へ向かうことにしても、別に問題ないよねぇ?」

「その方がいいなら、それでも構わないぞ。問題の場所というか、当分はそこが拠点になるんだろうし、確かめておきたい気持ちもあるからな」

「僕が仕掛けていた刻印魔法で、復興は進んでいるみたいなんだけど。何だか、別の協力者が増えているみたいなんだ」

「ほう、それは……瑠王からの情報なのか?」

「いろんな子達も教えてくれているから、今まで聞くだけにしていたんだけど……何かよく分からないけど、大物が復興途中の水路に乗り込んできたみたいなんだよ」

「それが、新しい協力者に繋がるのか?」

「そうみたい。昔、水路の奥へ番人みたいな感じに棲み着いていたらしいよ。それで、何だか昔の生活が戻るのなら、その為の協力は惜しまないとか何とかって……」



 少しばかり、時を遡る。

 リンの刻印魔法が、きちんと稼働しているのを確認しつつ、留守中の監督を請け負った地龍のクランは、その場に刻一刻と数を増やしていくモノ達の姿を眺めていた。

 水の流れが元へ戻ろうと、刻印魔法によって復元途中にまで蘇っている水路へと、その滑らかな足を伸ばし、少しずつのその流れが太さを増してくると、流れ込む水に乗って来たのか、水の属性を保つモノ達が集まり始めた。

 日を追う毎に、その数が増えていくのを眺めながら、クランは思った。

 この場所が、時は違えてしまったが、全盛期のような賑わいを取り戻す日も夢ではなくなったか、と……その傍らで、自らの寝床をこの地に改めて定める算段をしていた。

 そこで思い出したのだが、リンの生国では、入浴という習慣が根付いていることもあって、自分も風呂好きだと言っていた……温泉と呼ぶ、地下から湧き出る湯に、様々な効能が隠されていて、湯治としても利用されていると言っていた……この砂漠のある地域にも、それらしき場所が合ったはずだ、と。

 どれ、ここは一つ探してみるかのう、とクランは地下の様子を確認しつつ、住み処にする場所の確保に力を向け始めた。


 そんな状態に成っていることなど全く予想していないリンは、自分の稼働させた仕掛けの進み具合が気になるばかりだった。

 しかし、地下の進み具合も気になるのだが、それよりも先に国境へ運河を一気に建造してしまう課題が飛び込んで来た。

 必要な場所だと思える部分の大地を陥没させてしまうか、切り裂いて出来た溝の幅を広げてしまうか、どちらの方法を選ぶべきか悩んでいた。

 昔の自治領区と同じ場所と考えるだけで、その難易度は格段に変化を見せる。

 砂漠の真ん中をぶった切るような形で、今のアレイシア皇国とナレイティア共和国の間に横たわる形で存在していたから、その境界線は、河と運河によって隔てられていたらしいと聞いている。


「ホント、どうするのが一番いいのかなぁ」

『どうするのがいい、とは?』


 背に乗っているリンの呟きに応えた瑠王だったが、リンからの答えまで期待していた訳ではなかった。

 しかし、リンからその答えが返って来て、成る程と思考を巡らせる。

 瑠王に分かるのは、河の復活が望めないことと、運河の復興には、地下の建造物のように残された物がないので、一から新しく造成する必要が有るということだけだった。

 それを伝えると、リンの中で何かが定まったようだった。

 問題なのは、砂漠の砂。

 運河を造ろうにも、その両側を支える壁が必要になるが、砂漠の砂を固めて作る事は無理だと考えられる。

 コンクリートのように、砂を混ぜると言うのであれば、それもどうにかクリアにすることは出来るのだろうが、あの砂漠では無理だ。

 それに代わるモノを考えなくては、運河の造成を最優先事項に決めても、それを実行に移す術が問われる。


「やっぱり、大きな石でも切り出して並べるしかないのかなぁ」

『石か。それならば、砂漠の下に埋まっているのがあったと思うぞ。それを使ってみてはどうだ?』

「それは嬉しい情報だなぁ。瑠王、ありがとう」


 瑠王から知らされた有力な情報に、リンの脳内稼働予定は前へと進むことが可能になった。

 必要な場所に、必要な資材を移動させて、海面よりも少し上になるような堤防を造ってしまおう。

 そこまで進めば、あとは運河に水を引き入れるのは、比較的に楽な分類の作業だ。

 さて、どれくらいの日数で運河沿いの堤防を造成出来るだろうか。

 リンの次なる悩みは、その事に絞られていった。


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