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砂の雫から出来た国へ  作者: 小野 茜
73/137

73:カーラル砂漠-08

 夜中に危険な気配が近づくこともなく、交代で火の番をしていた三人は、日が昇り始めたことで、まずはひと安心していた。

 意外にも、早い時間帯に目を覚まして起き出してきたリンに、しっかり眠れたか確認して、問題なく今日も進める事が分かり、朝食の支度を始めた。

 そして、朝から変わった訪問者を迎える事になった。


「あ、おはようございます! でも、なんでこんな所にいるの?」

『うむ、今日もいい日であるな。少しばかり、暇でな。相棒の友人がいる山まで送って行ったが、その後しばらく経っても音沙汰がなくてな。少しばかり様子見に、こちらの界へやって来たが、まだ何やら話し込んでいるようであった故、放ってきた。それで、折角こちらへ来たのだから、リンの顔を見てから帰ろうかと思っての』

「そうだったんだぁ。アルデラって、砂虫も食べる?」

『ほぅ、そんなものがあったか?』


 ここへ来る前に、ライが真っ二つにした砂虫を、リンの空間魔法で保管している事を伝えると、ならば新鮮なままということだな、と念を押してから食べるとも、と返してきたアルデラに、とりあえず一匹分の砂虫を引っ張り出した。

 果たして一匹だけで足りるのかも分からないので、まだ二匹分あることも伝えると、朝からご馳走だな、と全て腹に収めていくことになった。

 解体の手間もいらなくなったし、美味しそうに食べているアルデラの姿に満足感を覚えたリンだった。


「ところで、リン。そちらが、ナイゼル様の相棒と言われていたお相手か?}

「うん。えっと、幻獣種だから普段は違う場所にいるんだ」

『構わんぞ、この場の者達には名を呼ぶ事を許そう。我は、アルデラ。耄碌爺のナイゼルの相棒だ。して、リンよ。姉は分かるが、お主の兄は一人ではなかったか?』

「こっちが、レイ姉ちゃん。それで、その隣がライ兄ちゃん。あと、ルーイ兄ちゃんだけは、僕の家族じゃない。でも、多分……これからもずっと一緒にいる事になりそう。そういうことだから、血が繋がらない僕の兄ちゃんって感じかな」

『そうか。この先も、リンをよろしく頼むぞ。ルーイとやら、お主は面白いモノ達に懐かれておるようだな』

「え、あ……こちらこそ、よろしくお願い申し上げます。しかし、面白いモノ達とは、どういうことでしょうか?」

『今は、まだ分からぬだろう。されど、この先で思い当たる時が来る。それまでは、頭の隅にでも覚えておれば良かろうよ。では、馳走になった』


 達者でな、と最後に別れの挨拶を残して、アルデラが飛び去っていった。

 その後から、リンは問われた。

 この先も、さっきと似たり寄ったりの出来事が繰り返されるのか、と。


「そんなの分かんないよ。僕だって、気が付いたら友達人口比率が人以外ばかりになっていて、今だって仲良しの友達いないのにさぁ」

「ナイゼルさんの所にも、人はいたのでしょう?」

「うーんと、純粋に人と言えるのか不明だよ。館の中で働いている人がいたけど、あの人達って、本当に気が付くとその場にいる感じだったから……人じゃないって言われても不思議じゃない感じだったから」


 不思議だなぁと思いつつも放置していた問題でもあり、リンもいつかはナイゼル爺ちゃんに聞こうと思っていたことだった。

 しかし、聞いてどうなるという訳でもない気がして、どんどん先送りにして、その間を縫うように、砂漠で復興作業中の代理監督を引き受けてくれている地の龍やアルデラと遭遇する事になったのだ。

 別に狙っていた訳でもないし、偶然からこんな状態になっただけで、特に何かを望んでという訳でもないのだ。

 とりあえず、話題を変えようと思って、リンの方から今日の進行予定について口を開いてみたが、今こうして後片付けをしている森から少しでも砂漠へ近づくことが大前提だということしか決まらなかった。

 リン以外の三人曰く、何が起きるか分からないから、あんまりカッチリと予定を組みすぎても道中が味気なくなるだけでしょう、とのことだった。

 そんなものなのだろうか、と首を傾げつつ、まぁ為るようにしか成らないから考えるだけ無駄か、とリンも納得をして出発の時を迎えた。


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