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砂の雫から出来た国へ  作者: 小野 茜
71/137

71:カーラル砂漠-06

 かなりの速度で追い掛けてきている兄達の存在を感じつつ、上空から近づいて来ている一つの気配に気が付いたレイとリン。

 その気配の主であるイシュルは、リンの姿を目指して一直線に飛んでいた。

 すっと、リンの左腕が上がったのを確認したイシュルは、そこへ向かって高度を下げていった。


「おー、やっぱりイシュルだったなぁ。久しぶりだけど、元気そうだな」

「それよりも、リン。一生懸命にここまで届けてくれた手紙が先よ、見せて」

「はい、これだよ。レイ姉ちゃん、ライ兄ちゃん達がもうすぐ追い着くよ」

「あらそう、かなり離したつもりだったのに。あの馬の脚力は、流石ね」

「でも、ルーイ兄ちゃんも凄いね。あの馬と離されずに着いて来ているし、ライ兄ちゃんと並走している感じだよ〜」

「ルーイもねぇ、やる時はやる人だからね。おそらく、風の助力を受けながら進んでいるのではないかしらね」

「うーん、それだけでもないみたいだよ。ルーイ兄ちゃんって、地の属性もある気がするんだけどなぁ……僕じゃないけど、かなり多くの属性の子達から好かれていると思うよ」


 リンの話を聞いて、何となく今までスッキリしなかったことに納得がいったレイは、それって、本人は気が付いているのかしら、と聞いてみた。

 今のところは、一方通行の状態で、ルーイは気付いていないと答えたリンだったけれども、ライと一緒に旅をしている間には一方通行じゃなくなる気がするとも付け加えた。

 そうこうしているうちに、レイが手紙を読み終え、ライとルーイが追い着いてきた。


「早かったねぇ、もうちょっと後になると思っていたんだけどね。結局、どうしたの?」

「放ってきた。付き合ってられないだろ、大事なモノは、まぁ人それぞれだが」

「そういうことだよ、リン君。それで、何か重大なお知らせでもあったか?」

「ルーイも、何だか兄さんと似ている気がしてきたわ。それはまあともかくとして、イシュルが届けてくれた手紙によると……」


 アズールからの手紙ではなく、アズール経由イシュルによって届けられた手紙は、宰相と皇太子からの二通だった。

 それで、何が知らされてきたのか。

 ルーイとライから聞かれ、何となく続けて言われた。

 どこが戦端になっているのか、とでも書かれていたのか、と。

 宰相からの手紙には、正しくその通りの内容が記されていただけに笑えず、兄の直感力のようなモノに苦笑を返しつつ、手紙をそのままライへと手渡した。

 皇太子の方からは、皇国側の砂漠区域の報奨として三兄弟へ譲り渡された証となるモノを送ることと、その範囲の記された地図が書かれた手紙になっていた。


「これを見る限り、レイとアズールの婚約云々に関係なく、この範囲は前回の働きに対する褒美として貰えるって事だな。おそらくは、この証になるモノをアズールに持たせて送るが、宰相の手紙に書かれている方が終結を迎えてからって事になるだろうな」

「そうですね。でも、こんな時に隊から離れて別任務って、俺としては変な感じがするんだけれど……トルーディア王国との国境二カ所から同時に侵攻って、かなり本気っぽいですから、それを黙って見ているほどナレイティア共和国も大人しくないと思うからねぇ」

「ライ兄ちゃんとルーイ兄ちゃんは、そっちの牽制もよろしくってことだよね?」

「まぁ、そうなるだろうな。場合によっては、実力行使で残り半分のナレイティア共和国側に掛かっている領地を奪還してもいいって考えれば、それほど理不尽でもないか」

「いや、ライ……いくらなんでもそれは、理不尽以前に無謀じゃないか?」

「そうでもないだろ。何となく、行けそうな気がするし……少なくともこの状況で、リンがそのまま大人しくしている訳もないからな」


 そうだろう、と問われて、リンは気持ちのいい笑顔で、当然だね、と返した。

 ちょうどいいから、ナレイティア共和国側との境界線上に、最優先で運河を造って侵攻されないようにするつもりだよ、とやる気十分に言いきったリンに、ライを除く二人は呆れた表情を浮かべながらも笑っていた。


「ところで、リン。お前、あそこから持ち出したモノは、今どういう状態なんだ?」

「えっと、僕が使える魔法の中に、時魔法と空間魔法っていうのがあって、時の停まった異空間に専用スペースが作れるみたいなんだ。だから、練習も兼ねて放り込んであるよ」

「はぁ……滅茶苦茶だな、滅多に使い手のいない魔法属性だぞ。あんまり、他人に知られない方がいいよ。いい様に使われて、自由を奪われる可能性が大きいから」

「分かった。ありがとう、ルーイ兄ちゃん」


 とりあえず、ここだけの話ということで暴露された、リンの使える属性の魔法が多岐にわたっている事は、再認識されると共に呆れられた。

 ほとんどの属性に適正があり、但し使える力の方向性に縛りがあるのだ。

 攻撃として使う事が出来ないという、微妙に厄介な状態で、その代わりにアザレス神から、守護獣として瑠王がリンの元へやって来たのだと知り、ライとレイは感謝した。

 呼ぶだけ呼んで放り出す事も出来たのだろうが、そうしなかったアザレス神に、ライとレイは、自分達の生活する領地の主神をアザレスにすると決めた。


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