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砂の雫から出来た国へ  作者: 小野 茜
57/137

57:皇都アシル-12

 問題の場所に、リンが一歩ずつ近づいていく。

 二人の子供の方も、近づいてくるリンに気が付いて、ここは危ないから来るな、とリンを止めようとし始めていた。

 しかし、それは元から分かっていることであり、まずは励ましている方の一人を仕掛けの範囲外にいるナターシャの元まで手を引いて連れ出したリンは、再びもう一人の捕まっている場所へ足を向けた。


「そのまま、もうちょっと待っててね。まず、ここにいる……あれっ?! ちょっとこれって、このお城の地下に何か閉じ込めてない?」

「どういう意味だ?」

「ここの仕掛けを壊すと、もれなくそっちも開いちゃうんだよね。でも、そうしないとこの人をここから出して上げられないかも知れないし……どうしたらいい?」

「……地下の主が出て来たら、リンでも捕まえられないか?」


 ナターシャは、城の地下に封じられているモノがあることは知っていたが、この地を守る為の礎になっていると聞き及んでいた。

 それ故に、ソレを解き放つことに繋がる行動(この場合は仕掛けを壊すことだが)を、安易に実行してよいものがどうか悩んだ。

 逃がさず、再びこの地に留まって貰うことは出来ないだろうか、と都合のいい考えが頭を過ぎったけれど、ソレにとっては屈辱的なことであるのかも知れないのだと思えば、こちらの都合ばかりを押し付けても駄目だと反省する。

 なれど、何かよい方法は無いものかと悩み、口から出した言葉だったが、こちらの考えている事などお見通しだと言わんばかりの視線を受け止める事になった。


「多分、無理だよ。ここにいてやってもいいと、向こうが好意的に感じてくれていたのなら別だけど、何がいるのかも知られていないんだから……閉じ込められているモノに、どういう風に感じているのかも分かるでしょ」

「そうよね。いいわ、目の前のあの子を助けるのを最優先します。その後のことは、私が旦那に申し開きでも何でもするわ」

「そういうことなら、母上だけの責任ではありませんよ。我々も一蓮托生です」

「アレク……アズールも、泣かせるわねぇ。でも、そういうことなら尚更、あの子を早く助けたいわね」

「了解しました。んっと、これがこうなっているから……」


 昔に、有子祖母ちゃんと一緒に楽しんだ遊び、綾取りのような少し入り組んだ力が編み込まれて、そこに引っ掛かって逃げられなくなっている精霊を解放しつつ、編み込まれている力も同時に拡散させて削除する、という作業を続けて数分後、一番近い場所に建っていた石造りの塔が壊れた。

 塔が壊れるのが先かどうかの差で、仕掛けに捕まっていた子供も助け出されて、無事にアレク達に預けられた。

 壊れた塔の下、地面に亀裂が入った場所からは、人の姿をしているが人にあらざる気配のモノが姿を現した。


『久方ぶりに表へ出たが、面白い。そこにいる人の子からは、懐かしい気配が覗える。何ぞ、周りの様相も穏やかならぬようであるし、まずは尋ねよう』

「えっと、僕のこと?」

『そう、お主のことだ。ここは、知っている限りでは、アレイシア皇国の皇都であっているか?』

「多分、それで間違いないと思うよ。僕もここに初めて来たばかりだし、来たらあちこちで変な仕掛けが発動中になってて、そこに精霊達が捕まってたり、属性の力が吹き溜まりのようになってしまっていて、このままじゃ拙いでしょ」

『あぁ、拙い事になるであろうなぁ。我がこの地で、大人しくしていた元凶は存じておるのか?』

「うーん、僕は知らない。この国の偉い人に聞いたら、それは知っているのかも知れないけど。それで、とりあえず……この状態を何とかしようっていうことになって、ここに集まっている人達と一緒に、問題解決に動き出したところだったんだ。あ、僕は、リンです」

『ほぅ、ここにも有った様だな。痕跡が残っているが、すでに破壊されておるし、我が出るために出来た大地の亀裂は、一応ながら我の責任として元に戻しておこうか』

「ありがとうございます。それで、この後はどうする予定ですか?」

『リンとやら、お主に付き合ってやってやろう。我も、少々ばかりこの仕掛けやら、今のこの辺りの環境には思うところがある。では、ここはもう終わっておるのだ。次に向かおうではないか』

「あー、ちょっと待って下さい」


 リンは、自分の手に余る、と背後にいる面々を振り返った。

 どうすればいいのか、と相談するつもりだったのだが、誰もがリンに声を掛けられるまで自失呆然の状態だったような状況で、まずはこの場で助け出された子供二人を親元へ帰らせることにした。

 そして、宰相アレンとアレクが我に返ってすぐに、その場に膝を突いて頭を垂れて言葉を発したのだった。

 その様子から、どうやら宰相達には相手の正体が分かっていると察せられた。


「守護様に申し上げます。私は、卑小の身ながらこの国で宰相の位にいるアレンと申す者

でございます。ただ今、この街は、リンの申すように非常事態のような状態です。守護様のお手を煩わせるのも申し訳ないことではありますが、ご協力いただけると言うことであるのならば、喜んでお願い申し上げたい。よろしくお願いします、と」

『うむ。その方は我等のことを幾何かは存じておるようだが、元々の契約期間はそろそろ切れておる故、今後の事もある。まずは、リンの手助けを致そう。それで、我とリンの他に、誰が同行するのか?』

「えっと、手伝ってくれるんだね。ありがとう! それで、僕と一緒って事は……あ、僕と一緒に動く人って誰だったっけ」

「リン……相変わらずだな、お前は。まぁいい、レイがルーイ達と一緒に動く。俺は、フレアとアズールと一緒だ。リンは、城内だけナターシャさんと同行して、その後はアレクさんとヒルダさんが同行する。今度こそ、ちゃんと分かったか?」

「うん。大丈夫だよ、ちゃんと覚えたから。えっと、守護様って、僕もそう呼んだ方がいいの?」

『それでは面白くないな。そうよな、しばらく仮の名を使うか。リンよ、我の事は【カラル】と呼べ。ここにおる者は、皆、同じようの呼ぶとよい。契約期間が切れるまでのことではあるがな』

「分かった。じゃあ、カラルさんも一緒に次の場所に移動だぁ!」

『そうしよう』


 リンは、身を小さくして肩に控えていた瑠王を地に下ろし、いつもの大きさに戻って貰うと、カラルに瑠王を紹介した。

 すると、カラルは、成る程そう来たか、と呟いて笑っていた。


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