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砂の雫から出来た国へ  作者: 小野 茜
33/137

33:霖-28

 属性の力を行使することが出来るのは、限られた人だけ。

 皇都の軍属関係者は、その力を持っていることが多いらしい。


「祖母が使えたみたいだから、遺伝かもね。こっちへ来てから、気が付いたら使える状態だったし。おそらく、俺だけじゃなくて、妹のレイも使えるようになっている気がするよ」

「そういうもの?」

「色々と考えるのは、苦手でね。頭じゃなくて、身体で覚えるタイプなんだよ」

「その割りには、細身に見えるけど」


 鍛えても、必要以上の筋肉なら不要だし、動きづらくなるようなら逆効果だ。

 力不足を感じることの無いように、それを補うべく身に付ける技もある。


「筋肉が付き難いみたいだから、こればっかりは仕方がないね。その分は、別方向でカバーしているから、問題はないよ」

「ライって、本当に不思議な人ね。初仕事で緊張しているかと思ったけれど、全く心配無用のようだし」

「適度な緊張はいいけど、緊張しすぎて本来の力が出せないことの方が恐ろしいでしょ。これでも、精神修行は一生懸命に積み重ねているつもりだからね」

「それは、確かにそうだけれど。口にするのは簡単でも、なかなか実行に移せるものではないの。そういう意味でも、ライは凄いよ」



     *



 傭兵ギルト経由で、皇都アシルのハーラ伯爵家に連絡が入った。

 長男のライは、現在も皇都に向かって移動中である隊商の護衛任務を受けて、一行と共に皇都へ向かっている、と。

 その知らせを受けて、当主のダレンは、ナターシャにもその事を伝え、同時にナイゼルへも知らせを送った。


「長男のライ、長女のレイ。そして、末弟のリン。これで、三人の無事は確認出来たな」

「えぇ、そうね。三人が、ハーラ伯爵家で合流することになるでしょう。その先のことを、三人と相談しなくてはね」


 息子であるアズールから、レイと一緒にいることを知らされていたが、出掛けた先での仕事が片付いてからの帰還になることも伝え聞いている。

 一番に皇都へ到着するのは、ライになりそうだ。

 その次は、リン。レイに関しては、アズール次第である。


「レイに、迎えを送ろうかしら。でも、アズールが臍を曲げても困るのよねぇ。あの子ってば、誰に似たのか。本当に頑固で、融通が利かないと言うか……だから、あの子は属性の力を使えないのじゃないかしら」

「それとこれは、関係が無いと思うがな。まぁ、迎えを送るよりも、帰りを早める催促の方が良さそうではあるな」



     *



 ライとフレアを含めた総勢十二名の護衛は、とても順調な旅を続けていた。

 あまりにも順調すぎて、何か起きるのではないかと危惧する。

 そんなことを告げたのは、ライが初めての依頼に従事していることを知った面々だった。

 いつも、今回のように順調な訳ではないのだ、と言いたいのだろう。


「あっ、向こうの方に土煙が立ち上がっているけど、何だろう」

「見間違いじゃないんだろうな、ライ」


 自らの馬を持たないライが、御者の隣に腰を下ろしているのは毎日のことだった。

 その彼の口から、まさかその様な言葉を聞くことになるとは思ってもいなかったのだろう。

 まだ、かなりの距離が間に横たわっているが、このままの進路で進むのならば、途中で遭遇するのは確実だった。


「野生の動物かな? 物凄い勢いで駆け回っているみたいだ。群になっているみたいだけど、こんなことってあるの?」

「ライ、どんな動物か見えるか?」

「そうだな。今は無理だけど、もう少し距離が縮まれば大丈夫だと思う」

「そうか。なら、正体が判明したら教えてくれないか」

「了解」


 そんなやり取りの数分後には、群の正体が判明した。

 この辺りでは、本当に珍しい野生馬の群れで、何かから逃げるように走り続けているのが覗える状態だった。

 それならば、群れの後方には、何が控えているというのか。


「しかし、立派な馬が多いな。これほどの馬ならば、野生馬でも珍しいのではないか?」

「そうなんだ。フレアは、野生馬に乗れる?」

「乗ったことはあるが、馬のプロフェッショナルと一緒にいた時だったから、自力では無理だろう」

「ふうん。あの群れのまま、そっくり欲しいと思えるくらいには、どの馬も立派だなぁ」

「ライ、お前は……っなんだあれっ!!」


 どうやら、馬の背を追い掛けていたのは、何処の者か分からない怪しげな人の集団だった。

 それを見て、やはりここまで順調すぎた反動か来たな、と誰もが口々に戦闘態勢へとシフトチェンジを行っていた。

 馬に向かって弓を鋳掛けている者達は、黒尽くめの格好をしていた。


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