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砂の雫から出来た国へ  作者: 小野 茜
30/137

30:霖-25

 ライが、こちらの世界で初めて見る街だった。

 今まで歩きながら見てきた景色が、それはもうどこの野生児だ、と抗議したくなるような状態だったのだから、少しは驚きもあったのだろう。

 北部で二番目に大きな街だと教えてくれたが、このウォルという街よりも大きいノルンを見る事があれば、どのような光景なのだろうか、と少し気分が高揚するのを感じる。


「あそこよ、あの通り沿いの赤い屋根の建物があるでしょ。あれが、傭兵ギルドの建物よ。この街の西側に商業区があって、その一角に各ギルドの建物が集まっている感じかしらね」

「なるほどね。ありがとう、フレア。全く金銭を持っていない状態でね、狩りで得たモノが換金出来るといいんだけど?」

「あぁ、それなら大丈夫だわ。物によりけりだけど、商業ギルドの受付で尋ねてみるといいんじゃないかな」


 ちなみに、傭兵ギルドの左はす向かいにある青い屋根の建物がそうだ、と教えてくれたフレアに再び礼を述べてから、ライは腰に下げていた物を手にして、教えて貰った建物に向かって足を進める。

 人が沢山いるし、声も絶えず飛び交っていることから、それなりに商売繁盛しているのだろうと見当を付ける。

 入ってすぐの場所にあるカウンターへ近寄り、ここで買い取りを行っているか尋ねてみた。


「この街へ来る途中で、これらの手に入れたんだが。ここでは、買い取りをしてくれるのだろうか」

「はい、ありがとうございます。初めてのご来店ですね。こちらで、お客様のお出しになられた商品を買い取ることは可能です」

「何か必要な物が、他にもあるのなら教えて欲しい」

「査定する時間を少々と、買い取り承諾書への署名を頂ければ、換金を致します。査定内容も詳しくご説明させて頂いた方がよろしいのでしたら、その時間も少々掛かりますが」

「あぁ、それはいいよ。簡単な明細を教えてくれれば、これからの参考になるし、それはお願いしたいけど」

「それでしたら、ご心配なく。買い取り承諾書へ署名をしていただく前に、査定内容の簡易リストをご確認していただきますので」

「確かに、それなら大丈夫だな。じゃあ、これなんだけど……」


 そう言って、ここへ来る途中に行った狩りの成果をざっと、一応は解体して保存食に出来る様に加工した食肉と皮革、その他には骨や鱗、角などがカウンターの上に所狭しと広げられる。

 じゃあ、これで全部だからと告げると、カウンターの向こうにいた従業員の顔に、乾いた笑みが浮かんでいた。


「なるべく注意して持ち運びしていたつもりだけど、大丈夫かな?」

「あっ、はい。し、失礼しました。これほど持っていらっしゃるような様子には、とても見えなかったので驚いてしまって」

「ははは、そういうことか。意外と、力持ちなんだよ」

「そ、その様ですね。それでは、早速これより査定に入らせて頂きます」

「はい、よろしくお願いしますね。あの窓際のソファで、座って待っていたらいいのかな?」

「それで結構ですわ。査定が終わりましたら、お客様の名前をお呼び致しますので、こちらへ名前を頂戴出来ますか」


 査定用紙の依頼者氏名を書く欄へ、ライは記名をした。

 ライ=タカツカサ=ハーラ。

 本当は、少しだけ悩み、タカツカサだけにするか、ハーラだけにするか考えてから、面倒になって両方を書くことにしたのだ。


 ソファに腰掛けて、窓の外を少し眺めながら、建物の中にいる人達の様子を窺っていたライは、この場所へいろんな人達が訪れる事に気が付いた。

 商人も、自分と同じような買い取り依頼に来た狩人もいた。

 見るからに、貴族です、というような容姿で来店した面々には、早々に別室への案内が付いていたが、身分の上下に関わらず客にするのが、この店の方針のように見受けられた。

 これならば安心していてもいいかな、と少し落ち着いて、初めての街を窓越しに観察していた。

 この後の予定を考えながら、換金が終わったら傭兵ギルドへ行き、登録を行った後のことを思案した。

 そうこうしている間に査定が終わったようで、カウンター越しに名を呼ぶ声が聞こえた。


「この度は、とても良い状態の品々を有り難うございました。こちらが、今回の査定内容になります……」

「あぁ、これでいいよ。換金してくれるかな」

「お互いにとって良い取引になったようで、何よりでございます。では、しばしお待ち下さい」


 査定内容に問題もなく、手頃な金額で換金出来そうだったので、このまま換金して貰うことに決めた。

 金銭を入れる革袋をオマケに付けて貰い、金額の確認をして受領のサインをしたライは、建物から出て斜向かいの赤い屋根の建物を目指した。


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