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砂の雫から出来た国へ  作者: 小野 茜
112/137

110:分岐点-30

 リンが、狼の群れに埋もれるようにして眠っている様子を見て、何となく、狼に可愛い弟を奪われてしまった様な錯覚を覚えてしまった。

 こちらの世界へ来て、怒濤のような日々を過ごし続けているけれど、基本的なことは何も変わっていないつもりだった。

 兄とレイは、リンが可愛くて仕方がないのだ。

 こちらの世界へ、リンを追って来た事を後悔することなどなかったし、リンが元気にしていられるのが、こちらの世界であるのなら、このままで構わないと思っていた。


「はぁ、兄さんが戻ってくるまでに、ある程度の体裁は整えてしまわなくてわね」


 皇都を出発してから、日々少しずつ書き出していたメモの束を再確認しつつ、領都内で施行する条例を纏めることと、総合ギルトの方は他所のギルドの決まり事を参考にしつつ編纂した決まり事に過不足がないか確認すること。

 兄のライと決めた、領都内住民の戸籍と土地の所有者の記録も順次で進めるが、戸籍の登録をするときは、教会から引っ越してくる人に手渡したのと同じような通行証のようなものを発行することにして、住民カードとしよう。

 自給自足を目指して、農業や林業、水産業にも手を出したいが、初めからあれもこれもやりきることは難しいので、やって来た住民希望者との相談をするための議会を設立しようと思っていた。

 餅は餅屋に任せる方がいいけれど、任せっぱなしでは取り締まりも何もなく、イセリの町の役人のように管理が出来ていない状態に為りかねない。

 定期的な視察は行っているようだが、関係者各位が揃って隠し通せば、あら不思議、イセリの町と同じ、ということに繋がるのだ。


「問題山積よねぇ。こういう時は、ライ兄さんがいてくれると助かるのだけれど。居ないものは仕方がないし、領に兵士は必要になるのかしら」


 両隣の国のことを考えれば、守護のために必要はあるから、門番や領内のもめ事を治めるための役目を負う人は必要になるだろう。

 魔法と純粋な戦闘力を併用する必要があるとして、領主を筆頭に組織編成を考える必要はあるが、省庁のようなものを作ってしまおうかとも考えていた。

 しかしながら、これらをレイ一人で考えて決めるのは無理がある。

 ついでに言うなら、こういうのは兄のライが、意外にも得意としているのだ。

 大雑把なようで、悩む間もなく苦もなく道筋が見えてしまうらしいのだが、本人曰くつまらないそうで、なるべくやりたくないのだとか。

 それでも、今回のような必要な事態には、そんな様子など少しも見せることなく、そつなく事態を収束させてしまえるのだ。

 ライ本人曰く、頑張り過ぎるとガス欠を起こすから、程々が丁度いいのだ、とか。


「アズールが皇都に戻るのと、私達が最低限の領内整備を終わらせるのと、どちらが早いか競争だわね」


 ふふふ、と笑いながら気分を切り替えたレイは、リンの様子を確認して、ルウをひと撫でしてから眠りに就いた。


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