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第六話


あれから少しして宿屋に着いた俺達。


「いらっしゃい」


宿に入るとカウンターに居た女性が営業スマイルを向けてきた。


「食事だけ?それとも宿泊?」

「宿泊で」

「一泊二食で200ルピだよ」


そう言われて俺は小袋から硬貨を20枚取り出してカウンターに置いた。


「じゃあ、帳簿に名前を記入して。部屋は二階の一番奥だから」

「食事の時間は?」

「夕食は日が沈んでからならいつでも構わないよ。朝は日が昇ってから。あんまり遅いと食事抜きになるからね」

「はいよ」


帳簿に記入した俺達は、そのまま部屋へと向かった。

そういや俺、何も食ってねぇな・・・。




とりあえず今日の宿を確保した俺達は部屋に入り、ベッドに女の子を座らせ、俺は椅子に。雫は俺の傍に立っていた。


「さて・・・。まずは自己紹介か。俺はクレーエ。こっちは雫だ」

「わ・・・私は・・・・フラムって言います」


フラムか。


「じゃあ、フラム。何でアイツらに追われていたのか教えてもらえるか?」

「私、冒険者をやってるんですけど、戦闘とか全然ダメで・・・。それで、他の冒険者の方とパーティ組めば何とかなると思って・・・。そんな事を考えてた時に、さっきの人達に声を掛けられて、付いて行ったらそのまま裏路地に連れて行かれて・・・突然襲われて・・・ふ・・・ぐす・・・」


フラムは喋りながらも涙を流して泣き出した。

まぁ、フラムの考えも間違いじゃないが些か無用心過ぎる気がする。

冒険者なんてやってるんだから、荒くれ者なんかも居るだろうし。


「状況は分かった。今回の事は災難だったな・・・としか俺は言えない」

「ぐす・・・はい・・・」

「今後は変な奴に引っ掛かんなよ?」


俺がそう言うとフラムはこくんと頷いた。


「もうアイツらも追ってこないだろうから、フラムは帰りな」

「あの!」


椅子から立ち上がり、ローブを脱いで椅子の背に掛けて窓に向かう俺にフラムは結構な声で声を掛けてきた。


「何だ?」

「クレーエさんと雫さんは冒険者なんですか?」

「俺は冒険者だが、雫は違うぞ」

「そう・・・なんですか?」

「あぁ。ちなみに今日、ギルドに登録したばかりだ」


俺の言葉を聞いて、しゅんとするフラム。

こりゃパーティ組みたいって言いたかったんだろうな。

だが、俺とて新人。自分の事で手一杯なのだ。・・・多分。


「まぁ、何かあったら相談とか乗るから。今日はこの辺で・・・」

「はい・・・今日はありがとうございました・・・」


しゅんとしたまま部屋を出ていくフラムを、俺と雫は静かに見送った。


「主様・・・」

「言うな、雫。俺も何とかしてやりたい気持ちはあるが、コッチも余裕がないのも事実だ・・・」


ま、良くあるラノベの主人公なら救いの手を差し伸べるんだろうが、生憎と俺はンな事はしない。

明日の生活もどうなるか分からない現状で、良くも知らない奴と組むのはさすがにマズい。

それに、こちらの世界で俺がどこまで出来るかも把握できてないのだから・・・。






「あら?一緒に居た女性はどこだい?」


夕飯の時間になり、食堂に降りた俺に宿の女将が声を掛けてきた。


「アイツは別行動だよ」

「そうかい。もう食べるんだろ?」

「ん、頼む」

「あいよ」


席に着いて食事を頼むと女将は奥へと引っ込んでいった。

この宿は宿泊客だけでなく、普通の食堂としても営業しているらしく、なかなかに客は多かった。

最も、酒もあるので食堂というよりも居酒屋に近いかもしれないが・・・。


「おまちどうさま」


少ししたら女将が食事を運んできてくれた。


「美味そうだな」

「だろ?ウチの主人が腕によりをかけて作ってんだ。たんと食べな」


バシバシと俺の背中を叩いて笑いながら去って行く女将。

イテェよ・・・。


食事が終わり、マティと云うお茶を飲んでる時に、食堂のカウンターで酒を飲んでいた冒険者達の会話が耳に入ってきた。


「おい、聞いたか?」

「あぁ、西の森の事だろ?」

「何の話だ?」

「なんでも、ビッグマンティスを討伐に行った奴等が森の中でオークの大群に襲われたらしいぞ」

「マジかよ!?」

「でも、オークっつったら群れで行動するんだから珍しくは無いだろ」

「それが、普通じゃ有り得ねぇ数だったらしい・・・。4人パーティが命からがら逃げ帰ってきたみたいだぜ?」

「4人パーティが!?」

「それが本当なら、かなりの数なんじゃないか?」

「あぁ・・・。恐らく明日にでも依頼が出るんじゃねぇか?」


西の森にオーク大量発生・・・か。

冒険者達の反応からして、滅多にない事なんだろうと予想はつくが・・・。

カップの中のお茶を一気に煽り、空になったカップをテーブルに置いて席を立つ。


「ご馳走さま。美味しかったよ」

「ゆっくり休みなよ」

「あぁ」


女将の言葉に頷いて、俺は部屋に戻った。








一夜が明け、朝食を済ませた俺はギルドへと向かった。


「おはようございます」

「おはよう」


屋内に入った俺に挨拶をしてきたのは昨日の受付嬢。

俺も挨拶を返し、そのまま掲示板へと向かう。

何か良い依頼がないかと一通り見ていると、ある依頼に目が止まった。


〜オーク討伐 報酬 対象一体につき200ルピ〜


・・・やっぱり出たか。

昨日の冒険者達の話からして、討伐依頼は出ると思っていたが・・・。

オーク自体はそんなに強くないみたいだが、集団となると厄介だな。

だが、こちらの世界で俺がどこまで出来るかも把握しておきたい。


「・・・やるか」


俺は受付カウンターへと向かう。


「オーク討伐の依頼を受けたいんだけど・・・」

「オーク討伐ですか・・・。失礼ですが、クレーエ様は昨日ギルドに登録したばかりですよね?」

「あぁ」

「戦闘経験は・・・」

「少しはあるから何とかなるだろ。無理なら諦めて戻って来るさ」

「まぁ、オークは比較的弱い部類の魔物ですから・・・」

「ランクも依頼がC、俺がDだから規約には引っ掛からないし、何があっても自己責任だ」

「そこまで仰るなら・・・では、ギルドカードを・・・」


俺がギルドカードを差し出すと、受付嬢はカードを受け取り、横にある水晶にかざす。


「・・・これで依頼は受理されました。今回の依頼は討伐なので依頼完了の書類はありません。討伐対象を討ち取れば自動的にカードに記録されますので、戻られましたらカードを受付に提出してください」


なるほど。討伐数は自動的にカウントされるのか。

何という不思議カード。


「では、お気を付けて。クレーエ様」

「行ってくるよ。あぁ、それと様付けはやめてくれ。そんなに大層な人間じゃない」


受け取ったカードをヒラヒラと振りながら俺は初の討伐依頼に向かった。









さて、どこまで出来るか楽しみだ・・・。










初の討伐依頼を受けたクレーエ。

次回は初戦闘となる予定です。

う~ん・・・上手く書けると良いのですが・・・。




読者様の皆様からのご意見・ご感想等をお待ちしております。



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