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第二話

連続投稿!(笑)




(嫌な予感は良く当たるが、今回もビンゴ・・・だな)


俺は今居る部屋の中を見回す。

どう考えても、今まで居たオフィス街ではない。

石造りの部屋。そして肌で感じる今までとはどこか違う異質な空気。


(コイツは転移じゃなくて、召喚・・・)


俺は視線を女性に戻す。

未だに震える自身の身体を両腕で抱き締めながら、俺を呆然と見詰めていた。

俺は女性に近付き、目線を合わせる為にしゃがみこむ。


「あ〜、俺の言葉が分かるか?」


俺の声にビクッと身体を強張らせた女性。良く見ると、年齢は俺とさほど変わらない様だ。


「参ったな・・・。言葉が通じないと、面倒だ・・・」


溜め息を吐きながら頭を掻く俺に、目の前の女性が言葉を発した。


「あ・・・あの」

「ん?」

「あ・・・貴方の言葉は分かり・・・ます・・・」


彼女の声は震えていたが、しっかりと俺の目を見て喋っていた。


(ふむ・・・どうやら会話は出来る様だ)

「そうか。ならば聞くが、ここは何処だ?」

「ここはパンアという国にある都市ジーア・・・です」

「ジーア?」

「はい・・・」


聞いた事のない国。知らない都市。

間違いなく此処は俺の居た世界じゃないみたいだ。

ったく、頭が痛くなる。


「で、何故俺を呼んだ?」

「あの・・・」


ジッと見詰める俺の目を見ていた彼女の目が、視線の行き場をなくしたかの様に泳ぎ出す。


「?」

「貴方を呼んだのは私ではないのです」

「どういう事だ?」

「この部屋にある魔方陣は、私達の間では機能を停止していた魔方陣なのです。今では失われた太古の技術で造られた魔方陣なので、今は研究対象でしかなかったのですが・・・」


勝手に起動してしまった訳か・・・。

でも、この魔方陣・・・どうやら大気中の魔力を吸収・蓄積して起動するタイプの様だ。

さっきから、微量ながらも魔力を吸収してやがる。

まぁ、起動するまでの量を蓄積するには永い年月が掛かりそうだが・・・。


「ならば、今回の件は事故・・・・と?」

「はい・・・」


事故・・・。

まぁ、彼女とそこでへたり込んでる男の様子を見れば、そうなんだろう。

どう見ても今の状況・・・俺が召喚された事は予想外みたいだ。

ならば、特に気にする程でもないか・・・。

俺はそのまま立ち上がり、扉の方に向かう。


「あのっ・・・」


そんな俺の背中に彼女は声を掛けてくるが、俺は足を止めない。

石造の大きな扉に手を着けて少し力を入れると、ゆっくりと扉は開いた。

意外と軽いんだな・・・・ん?この扉、微量ながら魔力を吸い出して動いてるのか。

ハイテクなのか、ローテクなのか微妙だな。

完全に開ききった扉から一歩出て、部屋に振り返ると、未だに俺を見詰める彼女と騎士風の男。


「さて・・・」


俺はそう呟いて虚空に手を伸ばし、何かを掴む動作をする。

そして、何かを自分に巻き付ける動作をすると、一瞬で漆黒のフード付きのローブを身に纏う。


「今回の件は事故・・・。ならば、俺が此処に留まる理由はない」


ニヤリと笑って俺は二人に告げる。


「今宵、この場所であった事は夢だった。俺は去る・・・」


トン・・・と軽く床を蹴り、身を宙に浮かす。その跳躍力は常人のソレを逸脱しているだろう。

俺を見る二人は呆然としていた。


「あ・・・」

「面倒事は嫌いなんでな・・・。じゃあな・・・」


俺はよるの闇に身を溶け込ませ、その場を消えた。









「主様」

「雫か?」

「良かったので?」


周りの建物の中でも一際高い塔の上に立つ俺の傍らに着物姿の女性が片膝を付いて、頭を垂れていた。

その姿は、肩を顕にした形で気崩した黒髪の女性だ。

髪は結い上げられ、唇には薄く紅を刺している少々、気の強そうな顔。


「お前が居たのは正直助かるよ」

「私は常に主様と共に・・・」

「そうだったな」


頭を上げずに答える雫に俺は苦笑する。


「私は主様と魂で繋がっておりまする。例え何処に居ようと私は・・・」

「ありがとう・・・」

「!?・・・勿体なきお言葉で御座います」


顔は見えないが、なんとなくだが照れてる気がする。


「異世界・・・か。とにかく、どうにかしないとな」


風に靡く前髪を掻きあげながら、目の前に広がる町並みを見渡す。

月明かりに照らされた町並みは、俺がいた世界ではまず見られない程に灯りがなく、静かだった。


「さてはて、どうなることやら・・・」


何をするにしても、まずは・・・。


「忙しくなりそうだ・・・」




俺の呟きは夜の静寂の中に溶けていった。








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