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――「おらぁ!」


「うっ……! やめて、ください……」


「やめてください? てめぇが悪いんだろうが!」



倒れている男を力強く蹴る光輝。

体を二つに折り、咳き込む男。

咳をしたと同時に血も吐き出している。


……ここは?



「う……もう……許して……くださ、い……」



必死に懇願する男を無視し、ひたすら暴行を加える光輝にそれをただじっと見ている私。

気味の悪い空間。

見ている私はなんの感情も抱かず、終わるのをただ、じっと待っているだけ。


なに、これは……。


 


――「はっ!」



薄暗い室内。

でも確かに私の部屋だ。


……夢か。


時計を見ると午後六時を回ったところだった。

三時間も寝ちゃったのか。

人の気配がしないからお姉ちゃんは夕飯の買い物でも行ったのかな?

とりあえずベッドから起き上がり、なんとなく辺りを見回すと私の携帯のディスプレイが点滅していた。

画面を確認すると、『着信・二十三件 新着メール・五十件』の文字。


……はぁ!?


慌てて確認すると、全て『光輝』の文字で埋まっていた。

メールの内容はさっき来た内容とほぼ同じで、約一時間前のメールに『やり直そう。駅で待ってる。優奈が来るまで帰らない』と書いてある。

窓のほうを見ると、さっきまでとはうって変わって土砂振りの雨。



「行かなくちゃ!」



さっきの夢の事をすっかり忘れて、私は適当に傘を二本取り、雨の中走り出した。


約十分後。

ビショビショになりながら立っている光輝の姿が見えてきた。



「光輝!」



力いっぱい叫んだ私の声に驚いてこっちを向く光輝。



「優奈!」



お互いに駆け寄って抱き合う。



「もうダメかもって思ってたから嬉しい。ありがとう、来てくれて」


「ううん。私こそごめん。実はあれ見て光輝のことが少し怖かったんだ……」


「そっか。ごめんな」


「もう大丈夫だよ! このままだと風邪引いちゃうから光輝の家に行こう?」


「そうだな」



光輝は一人暮らしだからたまに家にお邪魔する。

改めて光輝を見ると、もう濡れていない所なんてないんじゃないかってくらいビショ濡れだった。

こんなになるまで待っててくれたなんて……。

なんで信じられなかったんだろう……。

光輝は光輝なのに……。



「あ、鍵。ちょっと待って」


「うん」



光輝の家の前に着くと、キーケースをポケットから取り出し、鍵を開けてくれた。

それにしても……。



「ねぇねぇ。それってなんの鍵なの? 光輝が持ってるのってバイクぐらいだよね? なんでそんなに鍵があるの?」



キーケースには半端じゃないほどの鍵。



「あー……。ん、まぁいろいろ? さ、中入って適当に休んでていいよ。俺風呂入ってくる」


「あ、うん。おじゃましまーす」



なんかあっさり流されちゃった。

まぁいいか。

入るとすぐに大きめのソファーとテレビ。

いつ見ても大学生の一人暮らしには見えないなぁ。

とりあえずソファーに座ってテレビをつけた。

いいのやってないなー。


……光輝、お風呂入ったよね?

見てもいいかな……?


私は視線を横にそらす。

ここに来て唯一入った事のない部屋。

前に見せてって言ったらダメって言われたからなぁ。

でもバレなきゃいっか!

よし!


そーっと立ち上がり、扉に手をかける。

そして手に力を入れると……。


ガタッ。


ん?


ガタガタ。


開かない……?

なんでだろう? パッと見、鍵もかかってないみたいだし……。



「何やってるの?」


「わっ!」



光輝は慌てて出てきたのか、タオル一枚で濡れたまま。

やばい。バレた、かな?



「は、早かったんだね?」


「ガタガタいってたからね。なんだろうと思って」


「あ、そうなんだ……」


「優奈」


「はい!」



光輝さん。お顔が……。



「開けようと、した?」



やっぱりバレてたか。



「ごめんね? つい、気になちゃって……」


「ここはお願いだから開けないで。開けたら優奈といっしょにいられなくなっちゃうから……」



そう伏し目がちに言う光輝に少し納得しない部分もあったけど、とりあえず頷いた。



――この扉の中身を知るのはあと、少し……ほんの少し未来のお話……。



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