性格重視な女の話
「あなたは素敵ね。こんなに私を笑わせてくれるのだから」
「アハハハっ、僕と結婚してくれたら君をもっと笑顔にしてあげるさ」
―――
「こんなに可愛い子たちを、ありがとう」
「あはは、なんたって僕は、プレゼントが大好きだからね」
―――
「今日も残業ご苦労さま。あなたってとっても真面目ね」
「ああ。そうでなければ食べていけないからね」
―――
「ああ、母さんっ。ぼくは……何もしてあげられなかった。なんでっ、こんなっ!」
「大丈夫よ。貴方は優しい人だから。お義母さんも幸せだったはずだわ……」
―――
「くそっ……!! なんで俺が!?何十年勤めたと思っているんだ!!こんなちっぽけな退職金じゃどうしようもない!!」
「大丈夫よ。あなたは計画的な人だったから、ローンは終わっているし、何とかなるわ」
―――
「あ~、酒はまだっ、ひぃっぐっ!が~!! ちくしょう!!あのどき、おればな~!!」
「貴方は我慢強い人だったから。もう我慢しなくて良いのよ。わたしがなんとかするわ」
―――
「空に白い、ちょうちょが~、ああ、銀河に吸い込まれてっ!!綺麗だな~」
「貴方は実はロマンティストだったんですね。まるで詩人の様だわ」
―――
「おが、お母さん、ヤダっ!?死なないでっ僕はぼくはあああっ!?」
「あらあら、知っていましたよ。貴方は純粋な人だって。でも、子供みたいな綺麗な心の人だから。……だから、こんなにも追い詰められてしまった」
―――
―――
「…………………」
「……私は貴方に感謝しているんですよ。私が育児ノイローゼになった時も貴方は一言も私を責めませんでした。パートの所為で子供たちを失いかけた時も、自分を責める私を嗜めてくれた。子供たちが警察の御厄介になった時も、辛抱強く話しを聞いてくれました。会社をクビになってからは少し乱暴になったけど。記念日には、タンポポをくれたわ」
「もう私たちはおじいちゃんとおばあちゃんですね。子供たちも立派になって……。昨日電話が有ったんです。曾孫が産まれたそうです」
「いろんな事がありましたね。楽しい事も、悲しい事も。もう私は十分です。十分、思い出をいただきました。ですが最後に、優しい貴方に会いたかったです」
「………………ぁ」
「……あなた……」
「あい、してる……ぼくの、かわいい、ひ……と」
「……まあ。ふふっ。知りませんでしたよ、貴方がこんなキザなひとだったなんて……」
―――
―――
「父さん、母さん。……僕も今では貴方たちと同い年ですよ。この年になったから、今ではあなた達のすごさが解かります……。だから……、後悔しているんですよ。ああなってしまった父さんに、……情けない人だって、言ってしまった事を。母さんに……、最後まで気丈だったあなたに、弱い人だって言ってしまったことを……」
「もうすぐ、謝りに行きますよ。父さんは、言っていましたよね。謝る時は、心から言葉を相手に直接って…………」
「おじいちゃん……。誰に話しかけてるの?」
「ああ。おじいちゃんの、ヒーローだった人に……さ」
「ひーろー?それってかっこいいの?」
「ああ……。かっこ良かった。優しかったし、真摯な人だった。大きくて……。それに楽しい人でもあった。そして…………、強かった……」
「あはは、それっておじいちゃんみたいなひとだね!」
―――
END
人間、きれいな心を持つことほど難しい話はありませんね。