第5話:アルトは、己にとって大事な場所へ行くこととなった。
――Side アルト――
………見知らぬ天井だ…。
「何言ってるの愛しのアルト♪ ここは私たちの家よ♪」
「思考読まないでよ婆ちゃん…」
「あら? 口に出てたわよ♪」
目を開けた視界に入ったのは、俺の良く知った老婆の心配そうな姿だった。
見た目5・60台の婆さんが語尾に「♪」を付けてる風景は、俺の寝起きのぼんやりした意識を、シャキッとさせた。
心配そうな顔で「♪」をつけてるとかどういう以下略 とかは気にしないで欲しい。 だって本当にそうだったんだから。
「それにしてもすごいわねアルト! ベアルを倒しちゃうなんて!」
「え?… あ、あぁ、うん。 なんか…【チカラ】が発現したみたいなんだ」
「あ、やっぱり? アルトがベアルを倒しちゃうなんて、【チカラ】を開花させる他に無いからね!」
…あぁ、つまり俺はまだベアルを素で倒せるぐらい強くないんだよな…ちょっとショックだ。ナシズ爺は昔、素手で倒せたって言うし。
でも、あの…俺の【チカラ】なら…。
「…あの現場を見る限り、アルトの【チカラ】は「身体強化系」って所かな!」
「あらダーリン! 何時の間に?」
「さっきからさハニー!」
「ダァ―――リィ――ン!」
…ガシッと抱き合う2人。 ベッドでそれを冷めた目で見つめる俺。 勿論俺の目に二人は気づかない。
「…にしても身体強化系か」… と、俺は考え込む。
―――さて、今回は【チカラ】についてだ。
【チカラ】はこの前言った通り、人によって多種多様、様々な【チカラ】がある。
だが、様々な【チカラ】も大別すれば幾つかのカテゴリーに分けることが出来るのだ。
今日は、そのカテゴリーを紹介しようかな。
「身体強化系」…その名の通り、身体の一部、または全部の能力を強化する【チカラ】のカテゴリーだ。
この前の俺のように怪力になったり、腕を鋼鉄にしたり、とてつもない俊敏さを得ることが出来たり。特殊な例としては、体を煙に出来たりとかかな。
身体能力を強化するので、「ブースター」と呼ばれるらしい。 そのまんまだな。
「自然操作系」…これもその名の通り。 自然の物体、または自然現象を操る【チカラ】のカテゴリー。
雷を操ったり、木の根っこを触手のように操ったり…誰だ、触手プレイとかいった奴は。 後は、水の三態を操ったりね。
これは結構強力な力の為、デメリットも多いらしい。 まぁ、それが世の常って奴だよな。 無かったらチートだし。
「召喚系」…いろいろな物を召喚する【チカラ】のカテゴリー。
魔獣を召喚するのは勿論の事、魔人を召喚したり、もしくは生き物ではない武具や防具を召喚できる【チカラ】もあるらしいな。
特殊な例を挙げるなら、自分の分身を召喚するって所かな。 ドラゴンの召喚者なんかは、結構強力だ。
「他能力」…上記3つに分類されない、特殊な【チカラ】のカテゴリー。
殆どの能力は上の3つに分類されるため、このカテゴリーの【チカラ】を持つ人は稀。かつ強力なのが多いらしい。
相手の精神を乗っ取るなんて【チカラ】、触れるだけで傷や病気を癒す回復系の【チカラ】もあるらしい。
RPGの勇者みたいな、光を操る【チカラ】みたいなのもあって、見ているだけではこのカテゴリーが1番面白いかも。
上3つは似たような【チカラ】が多いため、絶対数も多い。が、「他能力」の【チカラ】は似たようなのが少ないため、絶対数の割合は1:1:1:0.001ぐらいらしい。
――――「アルトの【チカラ】が開花したことだし! 今日は3人でパァーッとパーティーだね!」
「そうね! じゃあ私はチーキンの丸焼きでも用意するわ! ダーリンは何を用意するの?」
「サクッとポテイーターでも狩ってくるよ! じゃあアルト! まだ安静にしてるんだよ!」
「いってきまーす♪」
…本当に仲がいいなぁと今更ながら思いながら、ドアから出て行く2人を見送り、俺は再びベッドに横になった。
そうそう、チーキンとはその名の通り鶏型の魔獣だ。 姿形は鶏と同じで、やはりその肉は元の世界と同じで美味い。
ポテイーターは植物型魔獣だ。端的に言うと、食人植物。
元の世界のハエトリソウみたいな二枚貝型の、しかし鋭い牙が付き、人を飲み込めるぐらい巨大な葉が印象的だ。
葉が生い茂る地域に住み着き、気付かずやってきた人間を食う恐ろしい植物だ。 根茎はそのままじゃが芋。 芋は勿論、葉もかなり美味い。
とまぁ、2人は美味しい魔獣と植物を取りに行ったわけだ。2つとも一度食ったことがあるため、結構嬉しい。
俺は2人が帰ってくるまで、俺は先ほどの出来事を巻き戻し、再生していた。
力が漲り、あのベアルを押し返したときの感覚。今でも忘れられない。
そしてベアルの喉笛を突き破ったアレは、今でも鮮明に、網膜に焼き付いている。
あのタイミングで【チカラ】が開花したことは本当に幸運だった。 これも神様の悪戯だろうか。
――――そんなことを考えていたら、いつの間にか眠っていたようだ。
気がつくと、鼻を擽る良い香りが漂ってきた。 どうやら婆さんが既に帰ってきて、料理を作っているらしい。
考えていたことはひとまず胸にしまっておいて、今日は素直に、料理を楽しむとするかな。―――
「アルト! ちょっと話があるんだけど、聞いてくれるかな?」
チーキンの丸焼きとポテイーターのサラダ、コンソメのようなスープに、パンのような主食(あくまで『ような』だが、食感は完全にパンだ)。
そんな、この家にしては(量だけは)豪勢な夕食だ。 香りだけでなく、味も申し分なく美味い。
そして、チーキンの丸焼きに齧り付くというワイルドな食い方をしながら、ナシズ爺が唐突に切り出してきた。どうやって声を出してるんだ。
「いいt…じゃなくて、何? 爺ちゃん。」
用事のない日曜の昼はいつも増刊号を見ていた俺。 画面に向かって「いい●もー!」する癖が付いていた俺は、危うく恥をかく所だった。
気を取り直して、スープを静かにすすりながら(サナブ婆は食事マナーに厳しかった。爺さん以外には、だが)用件を尋ねた。
「うん、愛しのアルトももう13歳…いや、もう少しで14歳だよね」
そう、あと1年ちょっとで俺は二度目の教育を受けなければいけない。
元の世界ではそれはもう散々な学校生活を送ってきた俺。恐怖もあるが、期待はそれを大きく上回っていた。
「そうだけど…何?」
「15歳になっていきなり大きな街へと行くのはちょっとどうかなと思ってね。 今度、私と一緒に学校がある街へと行かないかな?」
おお、それは良い提案。
確かに、下調べ的なものをしておけば困ることは無いだろう。爺さんも、たまには良い事を言うな。
「何を言うんだいアルト。私が何時良い事を言わなかったんだい?」
「思考読まないでよ…。 そうだね、一度行ってみたいかも」
「それじゃあ決定だね。 それじゃ明後日。 色々買出しもあるし、それを兼ねて行こうか」
―――このように、俺は爺さん婆さんが俺を入らせるだろう学校がある街、王都へと足を踏み入れることとなった。
この買出し兼下見はその目的だけでなく、俺の今後を決める、大事な物となるのだった。
旅行中止(活動報告参照)でテンションがた落ち\(^o^)/オワタ
おかげで文も思いっきりグダグダになってしまいました。すみませんorz
あ、老夫婦の思考読みは思いっきりネタですww 突っ込まないで…ww
感想・アドバイスもどうぞよろしくです!