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チートな俺は、Gクラス。  作者: 夜来
チートな俺は、ネームレス。
50/51

第46話:アルトは、『腕』と対峙した。

やっと終わったー!

――Side アルト――


「――――――いやぁ、楽しい旅行だったなぁ……」



1人呟く、俺。まぁこういう具合に喋ることが出来て、その内容も気楽な物だったってことは、俺は生きてるということで。あの……ハーセとかいったっけ、大悪魔(デーモン)が自爆特攻してきた時は結構ビビったもんだったけど。


「何が旅行だ……。私達は死に掛けたんだぞ……貴様が簡単に不意打ちにやられてしまうからッ! あんなことにッ!」


「お気持ちは痛いほど分かりますがッ!! 今は争うべき時にはございませんッ!!」


……俺の呟きを聞いたのか、手をギュッと握り締めての非難が途中から恨みたっぷりの糾弾になり、最後には聖剣(エクスカリバー)振りかざして俺に襲い掛かろうとさえしているのは、皆さんおなじみ学園の1年最高位(トップ)、ダントさんだ。その細身な体を必死で押さえつけてくれているのが、ギルダーズチーム「Nameless」リーダーで学園の1年第2位(セカンド)、綺麗な長い銀髪が特徴的なリスニル。……何でリスニル、顔がちょっと嬉しそうなんだろうか。


「……アルト。ダントの聖剣が太陽みたいに輝きを増してるんだが、大丈夫なのか?」


「ダントがどんな未知のパワーで聖剣を強化しようと俺に敵わないって―――――――――……多分、多分な……」


「……大丈夫なのかよ……?」


俺の横を歩くエイナは、心配そうに俺と後ろのダント&リスニルを交互に見て、話しかけてくれる。俺は苦笑気味に答えるのだが、後ろの聖剣の輝きが増しに増しに増しているのは俺の前に現れる影の濃さから一目瞭然である。だから俺は、口角は依然上がりつつ、冷や汗はダラダラ。俺がエイナに言った返答を聞いてさらにダントは怒り狂ってるし。エイナが心配そうに見つめているのは、これも要因の1つだったりするのかな。



「……綺麗だった……大悪魔(デーモン)……」



……それでいいのか、ラウス。



――――



……俺達は今、ヴァードの丘からエクシリアへと帰る途中だ。行きと同じで対した魔獣も出ず、ゆっくりとエクシリアに向かっている。俺と、エイナと。ダント、リスニル、ラウスの5人。ソフィはハーセの剣だったあの黒髪の奴が化けてたらしいから、1人減ったことになる。でも今となっては敵は居ないし、ソフィはエクシリアに居るだろうから何も悩むことはないんだけど。



「……意外とあっさりだったなぁ、最後」


「ま、アルトだからしょうがないだろ。俺なら到底出来ないぜ……爆弾の爆風をそのまま"跳ね返す"なんてよ」



……だろうなぁ……そう考えながら俺は思い返す。ハーセが人間……いや、魔人爆弾になった時の事。


俺はハーセが爆弾になったなんて思いもよらず、着火を許してしまったわけなんだけど。その時考え付いたのが「そうだ、反射(カウンター)で跳ね返せば良いじゃん」ってな感じのこと。後は手を伸ばして「反射!」って叫んだら、爆風の全てが俺とは反対の方向へと吹っ飛んでいった。……違うからね、あの人じゃないからね。


「爆風で向こうの木が"消えてた"からなぁ……あれ当たってたら危なかったな」


「……よく冷静に言えるよな、アルト……」


何かエイナの顔が青くなってるんだけど、放っておこう。……その後、邪魔な大物が居なくなったから雑魚を一掃して、依頼完了。後は「Hero's Blood」で金を貰うだけだな。


そういえば、依頼完了時の流れは説明していなかったな。今やっている「討伐」は、討伐対象の一部をギルドに持っていけばあのハイテクボールが判断してくれる。報酬金は依頼時に依頼者が支払い、完遂すれば全額が支払われるとの事。ハーセとブレイタに踊らされていた俺達だから、どうせ依頼はブレイタがやったのだろう。それ相応の報酬金だったから、よほど自分達の作戦に自信があったんだな。




まぁ1つ言えるのは、無茶苦茶に強い+αの俺を相手にしちゃったのがあのコンビの失敗って所か。


……あのコンビ、かぁ。確かにハーセは自爆したけど……ブレイタはどうなのかな。剣形態では普通以上の強度はあっただろうし。



そんなことを考えながら、ただひたすら歩く。歩かなきゃ着かないからね。……いや、本当は転移とか、何かしら乗り物使いたいけど……そこはアレだ。みんなの脚力が強くなるようにっていう俺の母心なんだよ。うん。







「キャアアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!」



近くの森から女性の叫び声が聞こえてきたのは、その時だった。


そんな悲鳴に反応しないわけも無く、聞こえてきた方向、近くの森を向く。表面上は何も変化してないから多分森の中で何か事が起こっているのだろう。そう考えた俺が森へと走り出そうと1歩を踏み出し……目の前を、何か影が横切った。


「ダント様!?」


その一瞬後にリスニルが叫ぶ。その影が走り去っていった方向を見ると、やはりというか、かなりのスピードで森へと突っ込んでいく金髪、ダント。……あー、アレは多分ハーセが使ってた「(ダーク)」の粒子を使った加速術を「(セイント)」に変換して使用してるな。流石、学園最高位(トップ)は伊達じゃないと言うか。敵の魔術も吸収して自分の知識に出来るって、良いよな。


おっと、話が逸れた。


「……というわけで俺も行って来るわ」


「どういう訳だよ!? 今の話に理由あったか!?」


「まぁまぁ、それは良いじゃん。ダントに良い所取らせたくないんだよ」


「お、おぅ……。じゃ、俺はここで待ってるよ。どうせお前らには追いつけないだろうからよ」


よく分かってる、流石エイナ。ラウスには聞いてないが……なんだろ、待ってるのかな? まぁどっちでも良いや、行こうかな。とか思いながら超加速でダントを猛追し始めた。



――――



俺とダントがその森へ入ったのはほぼ同時だった。最初こそ「何故貴様が来るのだ! リスニルで良いだろうに!」とほざいていたダントさんも、ちょっと頭を小突いてやったら静かになったので捜索開始。少しダントの頭が凹んで見えるのは、気のせいだな。……いやでも、今回はおふざけ100%ではなくて、少し本気も入っていたのだけど。



「キャァァ!! 離してぇぇ!」



また聞こえてきた女性の声。大分声が近くなったのでやはりこの森の中にいるのは確実だな。……どうやら何かに拘束されているようだ……盗賊? いや、魔物か? どちらにしろ、ぶっ潰すに違いは無いけど。


ガサガサと草むらを掻き分けながら、出来るだけ早く近づく俺達。俺は拳を握り締め、ダントはいつでも聖剣を出せるように準備しているらしい。さて、声も大きくなってるわけだし、もう少しで声の主まで到達する。前方の草は一層生い茂っていて先の様子が全く分からないが、声からしてこの先にいることは確実だ。


「……アルト=シューバ。同時に踏む込むぞ。女性は複数に襲われている可能性も有る。一気に殲滅するのだ」


「あーはいはい。足手まといになるなよ? 一気に行くから、本気(マジ)で」


「その言葉、そのまま貴様にお返しする! ……行くぞ、1、2の―――――――」




「「3!!!!!」」




同時に言い合い、前方の草に一気に突破した俺達。――――――そこには、1人の女性と、複数の『手』が居た。草を突破して受身を取る間に聖剣を召喚したダントは、今すぐにでも女性を襲う不届き者を一掃しようと滅茶苦茶やる気になっていた。当然、俺もなんだけど。



「あれは……『(アーム)』かっ!?」


うん、腕だね見た目どおり……なんて冗談は止しといて。あの地面から生えている黒くてでっかい手首から先……一本は女性を掴み、もう一本はウネウネしながら待機中……は『悪魔の腕(デーモン・アーム)』だな。2本が1セットで行動し、どこに目があるのか知らないけど地面からいきなり這い出てきて人間や魔獣を掴み、引き千切ったり圧殺したりもするとか。口は掌の中央にあるらしい……うわ、口開いた。真っ赤だな。


大悪魔(デーモン)とは関係ないらしいけど、強い象徴として「悪魔」の名前が付けられているらしい。


「そ、そこの人!! 早く助けてっ!!」


魔獣に対する考察は、女性の悲痛な叫びで終わった。……ふむ、あのままだとホントに引き千切られそうだな。さっさとやるか……と、隣で聖剣を構えるダントに問いかける。


「弱点狙ってさっさとノすぞ。『(アーム)』の弱点、分かってるよな?」


「当たり前だ、私を誰だと思っている! 行くぞ、聖剣(エクスカリバー)!!!」


言うなり勇猛果敢に飛び出していくダント。女性を捕まえている『腕』の、狙うは―――――――――親指。



「ハァァァァァァァァァッ!」



……『聖剣』と呼ばれるだけの切れ味を誇るそれ(エクスカリバー)ならば、骨付き肉を斬ることなど容易らしかった。ただ単に何か薄い物を斬ったような『ピィン!』という音がして、親指の第2関節から上は本体からおさらばした。


……うんうん。『腕』の心臓部分は指の中にある。それ以外のところを斬っても瞬時に再生してしまうのだが、唯一そこだけはダメージを与えられ、斬れば即死。……らしい。そしてその心臓部分は手指の中で1番小さい指の中にあって……ん? 1番『小さい』?



―――親指は、ダントが斬り飛ばしたその1秒後にはもう復活していた。


……。


「ダントテメェ!! 勘違いしてんじゃねぇぞ!」


俺、猛ダッシュ。女性を掴んでいない『腕』の『小指』に向かって、拳を振った。―――――するとどうだろうか。よほど俺の力が強かったのか、それとも弱点である小指の耐久力が低かったのか……小指は根元から引き千切れて遥か遠くの地面へと落ちる。切断面……切ってないから殴断面か、からは緑色の血が噴水みたく溢れ出た。



「―――――――!!! ……」



『腕』は声になってない絶叫を上げながら後ろへと倒れ、もう倒れた時には、動きを止めていた。地中で連結(リンク)していたらしく、ダントが勘違いして親指を斬ったもう片方の『腕』も同じように倒れる。―――――最後の力とばかりに、女性を放り投げて。


「!? キャァァァァァ!?」


当然の如く女性は空を舞い、そのまま地面に叩きつけられ―――――ヤバイっ!? 悠長に説明口調で言ってる場合じゃない……ッ!!




―――だが、女性が背中を打ちつけることは無かった。いつの間にか聖剣を消滅させたダントが、女性の背中と脚をフワッと抱えたからだ。……俗に言う。お姫様抱っこという奴だろうか。


……女性は俺達と同じギルダーかもしれない。長くて少しカールした金髪に、迷彩柄が施された服装。こんな如何にもモンスターを狩りますみたいな服装の人、この世界には魔獣を狩るハンターか、俺達みたいなギルダーしかいない。といっても、金が多く貰えるからという理由でハンターの多くはギルドに所属しているわけなんだが。



「……大丈夫ですか、お嬢さん。さぁ、此処は危険ですから一緒に行きましょう……」



……あの野郎。さっきのミスを踏み倒してすぐ復活してやがる。……こりゃもう1発確定か。俺がそうやって密かにダントをぶっ飛ばす口実を作り上げているとは知らず、まだお姫様抱っこのまま、イケメンスマイルで女性を口説くダント。


「……あ、貴方達の名前は?」


ありゃ、これは王道的な展開に行っちまうのかおい……。でも、こればかりは俺には止められない。人の心を操れないっていうのも、【創造主(クリエイター)】の出来ないことの1つだし。……まぁよく考えれば、イケメンと美女でお似合いかもしれないんだが……それでも、すぐ目の前で見せられるとイラつくんだけども……。


「私はエクシル魔法学園1年次最高位(トップ)、ダント=サスティーフだ。そしてあそこの茶髪は同じく1年最低位(ワースト)のアルト=シューバ。まぁ立ち話もなんですから、そこらの休み処でお茶でも……」


……今あの女性が居なかったら、確実に俺はダントを殴っている。そりゃ最高位(トップ)最低位(ワースト)を強調すればムカつくだろうがッ!! 畜生、3回は殴る。絶対3回は殴る。……だけど、女性の方は名前を聞いて満足したのか自分からダントの手から解放され、後ろの森へと消えていこうとする。


「……残念ですけど、私は時間がありませんし。……遠慮いたします。それではさようなら、シューバさん、サスティーフさん」


「あ、ちょっと待って……」


ニッコリと笑いながら森の中へと消えていく迷彩服の女性。ダントは彼女の後を追おうとするが、『誰か』の手が彼の腕を掴む。……バカめ。そんなことは問屋が……いや。





「チョット待トウカ、ダントサン……」





――――――少しだけ片言になって、左手でお前の腕を掴んで右腕を引いている、俺が許すわけ無いだろ。

どうも、夜来です。 これにて第2章、「チートな俺は、ネームレス。」編が終了となります!!


えー、新年になって物凄く更新速度が遅くなり、読者様には誠に申し訳ございませんと言う他ありません。

これからもこんな感じで進むと思います。こんな私ですが、読んで下さると嬉しいです。



さて、次は人物紹介とSide Story(ダント編を予定しております)の後、第3章となります。



ついに、あの2人の秘密が明らかに!?

第3章「チートな俺は、王国騎士軍」(仮)を、どうぞお楽しみに!

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