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チートな俺は、Gクラス。  作者: 夜来
チートな俺は、Gクラス。
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第4話:アルトは、その【チカラ】を発揮した。

――Side アルト――



―――大熊型魔獣、ベアル。


3mを超える体長と、300kgを超える体重を持つ、巨大な魔獣。 元の世界での熊に似ている。

違うのは、切れ長の目。 目を見るだけで、小魔獣は気絶するとも言われたり言われなかったり。

鳴き声はもはやゲームで言うラスボスの鳴き声であり、それを聞くだけで中型の魔獣が怯みあがってしまうとか何とか。

その歯は動物をかみ殺すために犬歯が比較的長く、少し口内からはみ出ているのが普通。 それに噛みつかれると、大型の魔獣でもやばいとか何とか。

そのほか、鋭い両手の爪も、相手を引き裂くのに十分なほどだ。


性格は基本凶暴。 狩れそうな相手を見つけると、所構わず狩る。 そんな性格をカバーするため、身体能力は高い。


深層魔法(魔獣が無意識に使う魔法、第2話参照)を使い、魔法攻撃を無効化する不可視の鎧を作り出すことがある。

そのため、「魔法使い殺し(マジックキラー)」と呼ばれたりする。 サナブ婆は、倒すのに苦労したらしい。


基本的に黒い体毛だが(ブラックベアルと呼ばれる)、火山地域には深層魔法で暑さを遮断する、紅い体毛のレッドベアル。

雪原地域には、同じく寒さをシャットアウトする、白い体毛のホワイトベアルが居る。



…とまぁ、ベアルとはこんな感じの魔獣である。


つまり、ブラックベアルに見初められた俺は、かなりやばい。 やばいやばい。 殺されるって。



「ギャオオオオオオォォォォォ!!!!」



と、突進してくるベアル。 その速度は中々の物だ。  だが、距離があるだけ避けられない事も無い。

ベアルが近づくにつれ、ベアルの口元、はみ出した犬歯に、赤いものが付着しているのが一瞬見えた。


「食ってんのかよ…」



震え上がる俺。 このベアルの体からして、ボアーナ一体で腹は膨れそうに無い。 つまり腹がまだ減っている可能性が。

腹が減った凶暴な魔獣より怖い魔獣は居ない。 駄目だ、勝つ気はサラサラ無いが、逃げられる気が全くしない。



とりあえずベアルがギリギリまで近づいたときを狙って、横っ飛び、そして脱兎の如く逃げ出す…そんな理想を立てて、いよいよベアルが近づいてきた――――!!



「ギャアアアアアアォォォォォ!!!」


「……うおおおぉぉっ!?」



近づいてきて分かる、圧倒的な威圧感、殺気、そして振り上げられた爪の鋭さ――――こんな物、受け止められるわけねぇだろ!

先ほどあんなに理想を描いていたにもかかわらず、俺はほぼ無意識に右に跳んだ。



ズバンッ!と、元の俺の位置、その後ろにあった木の幹がベアルの爪によって直径の3分の2くらいが引き裂かれている。

あんな物俺が喰らったら――――まだ格闘術と魔法しかない俺には、楽々とオレが血だまりの中で倒れているイメージが想像できた。


「グオオオオオオオォォォォ!!!!」



「…あっ…やべえ!!!」


その光景に呆然としていた俺は、獲物を逃したことによる、ベアルの怒りの咆哮に正気を取り戻し、横っ飛びの体勢から急いで逃げ出そうとする。

…だが、現実はそう甘くも無く。



「うおおおぉぉぉ!? 速ぇぇぇぇぇ!!!」



決してベアルの身体能力を侮っていたわけではないが、先ほどの速さとはまったく違うその俊敏さに、チラリと後ろを向いた俺は度肝を抜かれた。

しかし、速い。  食い意地というものは、動物をこんなにも進化させるのか―――――いやいや、違う違う!

もう少しで追いつかれそうだ。 そして、後ろから爪を振り下ろされては、対処できない!


…クソ、一か八か…ッ!


「…オラアアアァァァァ!!!」



「グオッ!?」



俺が行ったのは、逃げる体勢から振り返り、爺さん直伝の正拳突きをベアルの腹へとお見舞いすることだった。

ベアルは俺の行為に驚いたようだが、今更防いでいられないらしい。 

なんたって、俺とベアルの距離はベアルの速度で2秒もないだろうし、俺は振り向いて直ぐ正拳突きを放ったのだから。


「バァン!」と音がし、俺がベアルに向かって放った突きは―――――ベアルの腹、体毛で止まっていた。

やはり俺の突きはベアルにダメージを与える事が出来なかったらしく、俺は改めてやばいと感じた。


だが、ベアルからは一向に攻撃は来ない。 ―――実はベアル、弱点というか欠点が有る。

それはリーチの短さ。 3mという体長の癖に、腕はなんと1mほどなのだ。 身長が1m50無く、しかもベアルの懐に居る俺に爪が届くことは無い。

しかし、懐に居れば安全というわけではなく、勿論ベアルは体重を掛けて俺を潰そうと仕掛けてくるだろう。 これが、俺の恐れる理由。

それから逃れようと懐から脱出しても、爪の餌食。格闘は効かず、深層魔法で魔法は無意味。その身体能力で、爪を逃れても直ぐ追いかけてくる―――――――万事休す。



「グ……グァ…。」


今のは俺の呻きだ。  そう、予想通りベアルは体重をかけ、俺を圧死させようとしている!

もう俺は仰向きに押し倒されていた。


―――俺は、心からこう願った時は元の世界でもないだろう。  


「怪力が欲しい…コイツを超えるような強さが欲しい…」と。


―――そして、その願いは叶うことになる。



…圧死する寸前だ。 もう少しでも力が入れば、「潰れる」――――そう考えていた。

あぁ、俺は転生しても、13年で人生を終えるのか―――こうも思った。



しかし、神様はそれを許してくれなかったようだ。



「…グ?」


見事に、俺とベアルの声が重なった。 どちらも、驚愕。

何か、俺の中から力が生み出されて各部位に補充されていくような、そんな感覚を覚える。 端的に、力が漲ってきたのだ。

それは、俺の中にある考えを(よぎ)らせた。 「今なら、コイツを超えられるのではないのか」と。


グググッ…と、俺を圧死させるために掛けられたベアルの体が、押し返されていく。 少しずつ。 その間にも、俺の中の力はドンドン漲っていく。

ベアルの腹に当てられた俺の手は、再び押されること無く上へ上へと伸ばされている。 立ち上がるために片腕を使ったが、そのもう一方の腕だけ(・・)でも。


「う、おおぉぉ…」


そして、元の…ベアルに突きをぶち込んだ時の体勢へと戻った。 だが、決定的に違うのは、俺が優勢であるということ。

何かが俺に教えてくれる。 「もうパワーは十分溜まっている」と。



「…うおおおおぉぉぉらぁぁぁぁぁぁ!!!!」



渾身の力を込めた。 先ほどと同じ、だがスピードや威力が段違いだろうその正拳突きは、ベアルの腹にダメージを与えるどころか、吹っ飛ばした。 しかも、拳で。

その強さのため吹っ飛ばされたことなど無いベアルは、受身を取ることなどできず、5mほど宙を舞い、ズドォォンと言う轟音と共に、地に堕ちた。


そして俺はベアルに止めを刺すべく、背中を強く打ちつけ、腕の短さも相まって動けないベアルへと近づく、そしてその喉に狙いを定めた。

俺はその喉に向かって手刀での突きを放ち、それはいとも容易くその強靭な喉を貫いた。 骨が折れるグシャッという音。



…俺が手を引き抜いた時には、ベアルは目を驚愕に見開きながら、喉を真っ赤にして絶命していた。



「ハァ…ハァ…これが…これがか…」


動かなくなったベアルを見下ろし、荒い息を吐き続ける俺。

俺にはもう分かってた。これが【チカラ】かと。 人間にのみ備わる特殊能力かと。

嬉しいが、早く家に帰らなきゃな……そう思った矢先。  …あれ、急に脚が崩れ落ちる…?


それだけでない、意識も急に朦朧としてきた俺は、あっけなく意識を闇に飛ばすのだった。

それはベアルと戦闘したことでの極度の緊張が解けたことによる積み重なった疲れもあったのだろうが、違う要因もあった。

初めて【チカラ】を使ったことで、体がそれについていけなくなったのがそれなのだが、当時の俺がそれを知ることは無く。


後に心配した爺さん婆さんが絶命したベアルと共に倒れ伏す俺を見つけ、家で俺が目覚めるまで、俺の意識は何処かへと飛んでいたのだった。



――――こうして、アルト=シューバの【チカラ】は開花した。

――――それは、俗にチートと呼ばれる物であり…転生した彼だから持てた物なのかも知れなかった。

【チカラ】開花フラグ回収ー。


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