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チートな俺は、Gクラス。  作者: 夜来
チートな俺は、ネームレス。
47/51

第43話:アルトは、自分が何処にいるのかを認識した。

こんばんは。


短編が完成しない件について

これはまだ連載続けろという神さまのお告げ・・・!?


今回は珍しくエイナ視点です。

――Side エイナ――



強い。ハーセとか名乗ったこの(アマ)の印象を言えと問われたら、この一言に尽きるだろうと俺は直感する。



アルトの野郎が油断してブレイタとか言ったあの黒髪のガキに針を突き刺された、その10数分後。俺達……といっても、4人なんだが……は、サタナー・エリアの大悪魔(デーモン)……ハーセと戦っていた。

身体的な特徴といえば、黒いイブニングドレスと黒縁のメガネ、結い上げた黒髪だけ。大悪魔は変化(へんげ)が得意というが、コイツは人間に変化するのが得意なんだろうか。しかし、一般的な女性ならば、まだ子供とはいえ3人相手に勝負を挑むような、そんな真似はまずしないだろう。


「《聖礫槍セイント・メテオランス》ッ!!」


エクシル魔法学園、1年次最高位(トップ)のダント・サスティーフ。ムカつく態度でいつもアルトに吹っ飛ばされてる金髪野郎だが、実力は本物だ。今出した魔法も、白い槍が空の向こうから何十本も相手に向かって飛来する、多分、最上級魔法に属してもいいんじゃないかと思うほどの魔法。なのだが。


「《穿て、幾千の暗刃(シュート・ナイフ)》」


アルトが以前、ダントの【チカラ】に関する説明をしてくれたことがあった。それによるとダントは「(セイント)」を操って聖属性の魔法を自由自在に出せる、アルトに次いでも良い様な、強大な【チカラ】を持つ奴なのだ。けれど、目の前にいる奴は一言そう言うだけで『ダント』の『最上級クラスの魔法』を弾き飛ばす。今だって、白い槍に真っ向から対抗するように黒いナイフのような短い刃が飛んで、槍を全弾打ち落とした。


(何なんだコイツ……いとも簡単に防ぎやがって……)


殆ど無意識にそう思う。しかし本当に驚くべきことは、ハーセがそんな魔法を使っても尚疲れた様子がないことだ。例えば【闇を操るチカラ】でも持っていれば話は別なのだが……。そして、ハーセが動き出した。


「なんですか、双頭龍(ジェミニ・ドラゴン)を倒した集団の力とはそんなものなのですか? 正直、失望しましたよ……」


言うなりハーセは手に持った黒い剣――確か、壊剣(ブレイクソード)ディアリスとか言ったか――を正面に構えて、足を踏み出した。俺に見えたのは、たった1歩だけ。いや、確実に1歩しか踏み出していないはずなのに……。


「―――グッ!?」


1歩しか踏み出していないはずのハーセは、それだけで俺の眼前まで(・・・・)来ていた。……だが何とか間に合った。幸いだったのは、微かにハーセの剣の切先が此方に向いたのを確認できたことだろうか。そのおかげで剣をハーセのほうに向け、防ぐ事に成功したのだが……何かおかしい。何故か、ピシピシとかキシキシとか、そんな何かが崩れるような音が聞こえる……と、そんなところでハーセが目の前で口を開いた。


「早く回避しないとそれ(・・)、折れますよ?」


「――――――――――!! チ……ックショ!!」


そういえば。そんなことを思う前に俺の剣の一部……ディアリスと衝突している部分が、崩れだしていたのに気付いた。先ほどの岩よりは遅いのだが、物の数十秒で鉄屑になってしまいそうな速さ。思考よりも早く、大剣を振って左に体をそらす動きの方が早かった。大剣の欠片が、空中に舞った。


「《天高く突き上げる大地(グラウンド・スピア)》ッ!!」


「《聖槍(セイント・ロンギヌス)》ッ!!」


左へと転がった俺の目に見えたのは、俺の同じような大剣を突き刺し詠唱するリスニルと、先ほどの白く輝く長槍を投擲しようとするダントの姿だった。XCMで俺に向かってきた土の槍の列が、一直線にハーセに向かっていく。ダントの槍も、ソフィ(に化けたブレイタ)に投げた時もよりも早く、地面の土を巻上げて吹っ飛んでいった。俺も早く、《修理(リペア)》で大剣を直さなければ。





「―――――――――フフッ」


……すぐに直せれば、どれだけ良かったのか。だがアルトとは違って、すぐに直せるわけじゃない。どれだけ早くても、数十秒は掛かる。大悪魔(デーモン)相手にそんな時間稼ぎなんて出来るはずがなかった。そんなことを思ったのは、ハーセが向かってきた土の槍と白い槍を剣でフッと触り、『消失』させたその数秒後だ。


ふと横を見ると、ラウスが数百匹の魔獣相手に奮闘していた。一気に魔獣を潰せるラウスの【巨人】……今はまだアルトに近寄らせていないが、明らかにラウスは疲れている。多分、ラウスの【チカラ】はエネルギーを消費するのだ。それも、半永久的に沸いてくる魔獣が相手と来たら……何時潰れるか分からない。



「―――――――――《黒色槍乱舞(ブラッド・ダンス)》」



「ちくしょ……だぁぁぁぁぁッ!!」



ハーセの目の前に集められた黒い何かは、そのまま黒い鋭い槍……XCMでアリスが出していた蔦の槍みたいな感じだな……に姿を変えて俺達に蛇のように飛び掛ってきた。まだ大剣が直らない俺は横に跳んで回避しようとするが、避けきれるはずもなかった。何てったって、ダントのあの槍並の早さだったのだから。赤くて生暖かい液体が右腕と左脚から吹き出る。正直、痛い。他の2人がどうなっているかなんて、考える暇もなかった。



だけど、だけど……。



「ざっけんな……そんなんで俺が倒れると思うなよババァ……」


「フン、人間風情にババァなどと呼ばれたくはありません。その口を早々に閉じてあげますよ」



倒れるわけには行かない。自分のため、アルトのため、皆のため……。






――――――――――――倒れてたまるかよ。



――――

――Side アルト――




「―――――――――んで?」


「んで? とは何かなシューバ君。もしかして私のスリーサイズとか聞きたかったり?」


「此処は何処で俺は何故こんなとこに居て何故お前が此処に居て俺に話しかけてるかを丁寧に説明頼む」



……風景は依然黒いまま。だけどバカ(ユース)の姿だけははっきりと見える摩訶不思議な空間に俺は居た。首に違和感覚えてから数分立ったか、もしくは数十分か、数時間か。そんぐらいの事も全く分からないし、正直どうすれば良いんだコレ。……とまぁそんなこと考えて、ユースに息継ぎ一切なしの疑問文を提出したわけなんだけども。ユースはちょっとだけ考えたような顔をして、口を開いた。


「うーん……じゃあ最初から答えていくけども、先ず此処は君の思想空間……私は《スポット》って呼んでるけど。つまりシューバ君の中ってこと」


「はぁ? 思想空間(スポット)? なんだそりゃ……ってか、何でそんなとこに居るんだよ俺は」


「まぁ簡単に言うと、君は眠っちゃったんだよ。ぐっすりね」


相も変わらずポカーンとした表情だろう俺にユースが説明したのは、俺にとっちゃ結構衝撃的な真実だった。まず此処……思想空間(スポット)は、例えば俺が寝るときにいつも俺の意識が収納される場所らしい。何でそんなところに居るのに俺の意識があるのかというと、ユースが強制的に覚醒させたらしい。なんだ、何でもできるのかチクショウ。

次に説明させられたのは、何故俺が眠っているのか、ということ。


「んじゃ、此方をご覧くださ~い」


ウザい声とともにユースの左に現れたのは、古いブラウン管テレビのような四角い物体。本当にテレビだったらしく、何か前面から映し出されている。何故地デジ全盛のこの時代(といっても死ぬ前の時代の事だが)にブラウン管なのかは知らないが、とりあえずは鮮明に何かが映っていた。

それは赤い髪の女の子が大剣を持って掛けていたり、金髪のいかにもウザそうな男が白い槍をブン投げてるところだったり、銀髪の女が剣を地面に突き刺してる所だったり、碧髪の少年が何やら張り手してる所だったり、黒いドレスの女が剣を振り回してる所だったりと。まぁつまりは「Nameless」がそのドレス女と戦ってるところだったんだよな。何かテレビ番組張りのカメラアングルはともかくとして。


「……は? ユース、こりゃなんだよ?」


「正真正銘、今起きてることだよ。君が倒れた後、「Nameless」の4人(・・)は必死に、大悪魔(デーモン)と戦ってるわけね」


「お、おいちょっと待てって。俺が今倒れてるとしても「Nameless」は5人だぞ。1人足りないじゃねぇかよ」


俺にとっては当たり前の指摘だった。俺がヴァードの丘に来るときまではちゃんと6人揃ってたし、1人死んだとは考えにくいし。でもユースは、此方こそ当たり前といった顔でこう話す。


「あー、確か話してなかったね。実のことを言うと……」


ソフィが、「Hero's Blood」でぶつかった黒髪少年だったこと。その黒髪少年が、敵……大悪魔(デーモン)の部下だったこと。俺はソイツに何か特殊な物を打ち込まれて眠ってしまったこと。大悪魔(デーモン)は、崩れ去る巨大な骸骨(スケルトン)の隙間からちらりと見えた、あの黒いドレスの女だったということ。……そして、ソフィと俺を除く「Nameless」のリスニル、ダント、エイナ、ラウスの4人は、今とても苦戦してるということ。このテレビから流れる映像だけでも、エイナが腕と脚に、リスニル、ダントもそれぞれ出血していることは分かった。対して相手……ハーセというらしい……は無傷。


「……ユース」


「なんだいシューバ君。やっぱり私のスリーサイズを聞きたくなっt」


「どうやったらあっち(・・・)に行ける? 早くあのハーセとかいう奴をぶっ飛ばして、みんなを助けたいんだよ、俺は」


ユースの冗談はこの際無視。必死だが仕方ないだろ、皆のピンチなんだから。双頭龍(ジェミニ・ドラゴン)の時とは違ってあっちに俺もいないし、グダグダしてたら皆殺されちまう。勿論俺の【チカラ】を行使しようとしたが、当然の如く無理だった。だったら、ユースに頼るしかない。そんな願いを聞いたのか聞いてないのか、ユースは戦闘シーンが映るテレビを見ながら口を動かした。


「『お前の能力はほぼ万能なんだから、さっさと行け』……うん、嘘。そんな凄まないでマジで。……それでその質問は、君の3・4番目の質問の答えになっちゃうかな。何で私が此処に居て、シューバ君に話しかけてるか……分かる?」


分かる訳無い。此処に来たこと自体初めてだし。分からないと首を横に振りつつも、希望的観測として1つだけ思い当たる物はあった。ユースの口から語られるものが、俺の予想と当たっていれば―――――――――。





「じゃあ言うけど、私はシューバ君の意識を戻そうと此処に来たの。私の絶対権限でね。……シューバ君にはこんな所で死んでもらいたくないからさ。まぁ君が意識を取り戻しちゃえば、大悪魔(デーモン)なんて大悪魔(デーモン)(笑)ってもんでしょ?」


ユース(てんせいしん)が語るのは、俺が「こうであって欲しい」と願った物と何一つ違わない、希望通りのもので……そして。






「でも注意してね、これエネルギー大量に使っちゃうから、3回使ったら……シューバ君。君が消滅する(・・・・・・)





破滅への第1歩だった。

・・・とりあえずはこれでいいはず。



それでは。

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