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チートな俺は、Gクラス。  作者: 夜来
チートな俺は、ネームレス。
46/51

第42話:アルトは、自らの弱点を看破された。

どうも、今回は結構早めの夜来です。


「わたし」と打とうとしてタイプミスすると、何故か「わつぃ」になっちゃいます。その度に笑っちゃいます。


わつぃってwww


それではどうぞ。

――Side ヨライ――



―――アルト=シューバがゆっくりと前のめりに倒れるのを、「Nameless」メンバー、エイナ=ユーグリットとラウス=ガレーダは静かに見ている他無かった。

全く予想外もしていなかった出来事……大悪魔(デーモン)が死んでいた事もそうなのだが、何より『アルト=シューバ』という存在が地に倒れたという事こそが、彼らにとって一番の衝撃的な出来事だった。――――――いや、その直接的な原因が同じ「Nameless」メンバー、ソフィ・マクエルだったのも、その原因だったのかもしれない。

そしてAクラスの2人、ダント=サスティーフとウェスレイ・リスニルは見てもいなかった。今の今まで大悪魔(デーモン)だと思われていた大型の骸骨(スケルトン)が崩れ去り、黒いドレスを来た女性がその背後に、音も無く、ただ立っていたから。……此方を、微笑みで見つめながら。


「――――――ソフィ?」


1番最初に口を開いたのはラウスだった。驚愕と困惑が入り混じった表情で、まるで彼が綺麗な女性を目にして惚けた様子で呟くような、そんな様子で。恐らくは、アルトの首に針を突き刺し、今はその針をクルクルと回しながら倒れ伏したアルトを見下げている彼女に向けて。



「――――ッ! 《聖槍(セイント・ロンギヌス)》ッ!!」


「《還れ、闇の穂先(グングニル・ボード)》――――――」



白と黒が交錯した。振り向きざまにダントの手から投げられる、『(セイント)』の粒子で構成された2m超の白く輝く槍と、それより数倍早い、ドレスの女性の手から投じられた2mほどの黒い槍。それぞれが互いの槍と接触し、高エネルギーが空気中へと勢いよく流れ出した。――――――即ち、爆発。

雷が落ちたような爆裂音と光が「Nameless」メンバーとソフィの間で響き、放たれ……4人は目を瞑ったり、耳を押えることしか出来なかった。


数秒後、4人が目を開けると其処にソフィの姿は無かった。有るのは、卒倒したアルトの姿だけ。ダントがバッと視線を女性が居た方向へ向けると、やはりというか、ソフィの姿は其処にあった。ドレスの麗人に頭を撫でられて、口元が綻んでとても嬉しそうだ。だがダントには、それが悪魔の笑みに思えた。


「――――――貴様、何者だ。ソフィ・マクエルだと思っていた貴様もだ。」


その愕然の気持ちが隠せていない問いに、麗人は薄く笑んで答える。その声は、今この状況ではありえないほど美しく、それでいてひやりとした感覚をダントに与えた。


「フフッ、そういえば自己紹介がまだでしたね、私としたことが。『敵と成るものには必ず己の名を』というのが、信条のはずだったのに……嬉しさで、忘れてしまっていたのですね……」


「ハーセ様! 私も同じ気持ちですよ!」


「よろしい、ブレイタ。……私の名前はハーセ。あなた達の中では、『大悪魔(デーモン)』と呼ばれる存在ですね。―――その顔は、どうも信じられないといった顔ですかね。ですが、先ほどの《還れ、闇の穂先(グングニル・ボード)》を見ていたなら、理解して頂けるんじゃないでしょうか?」


ダントは、思わず舌打ちして2人を睨みつけた。まさか、あの女性が『大悪魔』とはにわかに信じがたい。黒いイブニングドレスを着、長いだろう黒髪を上で纏めてある、黒縁メガネの、あの女性が。しかし、《聖槍(セイント・ロンギヌス)》を出した本人だからこそ分かることもある。つまり、あの女性、ハーセの出す魔法は言うまでも無く『本物』であり、「大悪魔」であろうとそうでなかろうと、目の前に立ちはだかっているということは―――強大で邪悪な敵だということ。

歯噛みするダントに向けて、今度はソフィが口を開いた。だが、その声は最早ソフィではなく、もっと低い、幼い男子のようなの声になっていた。


「そして、僕はブレイタ・ディアリスと言います! 変化が得意で……貴方達には、この姿でお会いしましたね!」


「―――! お前ッ!!」


グニグニとブレイタの姿が変わりだし、変化が止まった姿を見て声を上げたのはエイナ。どうやら倒れたアルトが気を失っているだけで死んでいない事を確認し、ハーセ、ブレイタとダントが睨みあう方向へ顔を向けたらしい。其処で彼女が見た姿は紛れもなく、「Hero's Blood」で肩がぶつかった黒髪の少年。どう見ても、そうとしか思えなかった。


「―――つー事は……全部テメェらか。あの依頼も、テメェらの魔法か何かで仕組んだんだろ?」


「大正解。実はですね、あなた達が倒した双頭龍(ジェミニ・ドラゴン)は私のお気に入りだった物で……。あなた達が戦っているときも、私たちは草むらでずっと見ていたんですよ。そしたら……倒しちゃうじゃないですか。その茶髪の少年が」


ハーセは、エイナの手によって仰向けにされ、今はリスニルとラウスが看ているアルトを指差して不敵に笑う。


「その瞬間からですよ。私の目がその少年に向いたのは。―――私は無益な殺生を好みませんからね……とりあえずブレイタを偵察兼仕掛け人として貴方達について行かせました。依頼書には《限定人払い(リミット・クリアー)》を掛け、貴方達以外が寄り付かないようにしました。貴方達ならば、きっとこの依頼を受けてくれるはずだと思ってね……」


「そして、依頼を受けたことが分かりましたから集合場所を盗み聞きして、あの女の子に化けました! あとはヴァードの丘近くまで来たら、この、特製魔法針で一撃です!」


「この子が持っている針には魔法を掛けておきました。当たると2日ほど眠り続けますよ。その少年は勿論、この子が化けていた女子も、この針で眠らせてあります。貴方達人間如きが、魔法を解けるなんて思わないことですね。――――――フフ、しかし私の予想は正しかったですね。見た目は無敵ですが、無意識になれば何もすることが出来ない……まさに、完全試合(パーフェクトゲーム)ですね」


そうか。そう「Nameless」全員が思う。【創造主(クリエイター)】を持ち、神を超えられるだろうアルトだが、肝心の【チカラ】が使えなければただの15歳の少年だ。ブレイタ……いや、作戦を考えたのはハーセだ。……ハーセは仲間を装ってブレイタをアルトに近づけ油断させ、その魔法針とやらで眠らせた。殺そうとして武器を取り出せば確実に自分たちに見つかる。ならば、眠らせて後から殺せば良い。

ハーセがアルトを殺すかはまだ分からないが、サタナーの大悪魔(デーモン)のお気に入りだ。今すぐ殺されなくても、散々甚振られた後で惨殺される可能性が高い。


そして、アルトの前に立つ自分達が、最初の標的なのだとも4人には分かっていた。


「……クソッ、嵌められたか……」


「さて、無駄話はもう終わりにしておきましょう。……ブレイタ」


驚きが未だに収まらない4人の前で、「ハイ!」と名前を呼ばれたブレイタは元気よく返事をし、その瞬間彼の姿は眩い光に包まれた。またも目を覆う4人だがその光は先程よりも素早く収まり、もう一度2人の方向を見るとブレイタの姿は無く、代わりにハーセの手に1本の長剣が握られていた。刀身は真っ黒で無地、しかし鍔と柄は、遠く目からでは分からないが何やら細やかな装飾がされているようだった。


「ブレイタは『剣の擬人(パーソニティー)』で、本当は城に保管されるべき剣なのですが……今は私の元で働いているんですよ。……因みにですが、ブレイタの正式名称は<壊剣(ブレイクソード)ディアリス>……その名の通り、『斬る』より『壊す』性能が高いのでご注意を――――――このように」


足元にあった高さ50cm程の岩を剣でコツンと叩くハーセ。瞬間、叩かれた部分から内部を貫き通すように崩壊が始まった。モノの数秒で数cmほどの石ころの山となってしまう岩だった物。それから目を離して4人へと向き直り、何時もの、微笑み顔を向けた。




だが、それ――圧倒的有利を体現するかのような微笑み――を顔に出したのは、間違いだったのかもしれない。


「―――ハッ、下らねぇ。要は、アルトを護りながらお前を倒せばいいんだろ?」


エイナは魂が再び入れられたようにフラッと立ち上がり、彼女愛用の大剣を背中から引き抜いた。彼女の【チカラ】で鋼鉄よりもさらに硬くなったそれは、刀身が太い為そのまま盾にもなる。通常ならば成人男性でも持ち上げられないような重さだろう物を軽々持ち上げ、肩に担いで問う。


「なぁ。出来るよな、皆?」


「勿論だ。あの程度(・・・・)の敵を倒せなくて、アルト=シューバを倒せるはずが無いのだからな」


即答したダントは《聖召喚・聖剣セイントサモン・エクスカリバー》で1本のグレートソードを取り出し、切先をハーセに向けた。【(セイント)を操るチカラ】を持ったダント、グレートソードで通常の太刀裁きは不可能に近いのだが、180cmもの長さを持つそれをさも自分の腕の様に扱う。


「何せ、アルト=シューバを護る者を除いても3対1だ。貴様に勝つ道理は無い」


アルトを看ていたリスニルも立ち上がり、魔剣『クラッカー』を構える。通常の魔法が上手く使えない代わり、『クラッカー』に封じられた魔神の魂に魔力を食わせ、高威力の技を繰り出す彼女。銀色の刀身に陽光が反射し、輝く。


「《潰せ、巨人の手》――――――護るのは任せて」


ラウスは、アルトに近寄る魔獣の群れを潰しながら口を動かす。彼の力は【不可視の巨人を扱うチカラ】。彼が拳を振るえば、それよりも十数倍大きな拳が相手に向かって飛んで行く。そんな彼の秘めたる能力を知る由もない、アルトに近づこうとする虫の魔獣たちは、彼の動きとシンクロして振るわれる『巨人』の手に悉く押し潰され、見るも無残な屍となって地面にへばり付いていく。


相手が強大だと知っても尚、自分達の力を信じて敵に立ち向かおうとする4人。ハーセはそれを認めたのか、それとも犬の遠吠えだと見たのか定かではないが、口を開いた。


「私は無益な殺生を好まないと言いましたが……自分に危害を加えると、明らかに判断したものなら話は別です。覚悟してくださいよ、魔王の参謀(ブレイン)なんて名は頭脳だけでは有りません。力があってこそ参謀なのですから!」


「行くぞ、皆!」


ハーセの眼鏡越しの瞳が一層鋭くなり、剣となったブレイタを、血を払うように一振りした。4人の位置からでも、ハーセの体から滲み出る闇のオーラを感じ取ることは出来る。

それでも、「Nameless」リーダー・リスニルは叫んだ。こうして、チート(アルト)不在の戦いは幕を開けた。




――Side アルト――



――――――――ん? 何だ? 何が起こったんだ……? 骸骨(スケルトン)が突然崩れて――あれ、大悪魔(デーモン)じゃ無かったみたいだな――、ソフィに肩を叩かれて、目の前の出来事に集中してるから手を払おうとしたら突然ブスッとされて、意識が朦朧として……でも、刺されたのか斬られたのかさえ分からなかったし、一体何だったんだろ、あれ……。


と言うか、何処だ此処。何か真っ黒で、地に足は着いてないし、ふわふわした感じだなー……いやいや。そんな気楽に構えてる場合じゃない。どっちにしろ多分5人は戦ってるし、そこに俺は居ないし、とりあえず早く此処から脱出しないと……


―――まぁ、30分前はそう思ってたんだが……足着いてないから満足に動けないし、……あ、そういえば元の世界で売ってた1本満●バーとか、最近食べたくなってきたな……5時じゃないが食べたいな……ハァ。


「現実逃避は良くないと思うな、シューバく~ん」


耳元で女性の声が聞こえた。この緩い声は、突然夢の中に侵入してきたこの声は、妙に間延びしたこの声は――――――!


「誰だっけ?」


「うおぃ! 其処まで思い出しといてそれは無いよシューバ君! 大体君の名前は本当は適当に作ったんだよ! 全然生前の名前とか考えもしなかったんだよ! そしたら秋葉 有斗って名前がピッタリ合っちゃって、それだけに「あっちゃー」って思ったんだよシューバ君!」


「わかった、とりあえずそれが「アルト=シューバ」って名前の制作秘話って事はわかった。それにそのダジャレ100点満点中4点ぐらいの完成度だ。絶望してもいいぐらいの完成度だから落ち着け」


いや、忘れてるわけないじゃん? 何せ俺をこの異世界に転生させた張本人だし? しかも頭には何か天使の輪みたいなものが浮かんでいて、金とクリーム色の中間みたいな長い髪に、名前分からないけど神様が着る服っていう典型的女神様スタイルのソイツを忘れるわけ、ねぇ?





「何しに来たんだよ、バカが」


「ユースって呼んでほしい、せめて女神を入れてほしいな、シューバ君」



――――――こうして、不本意ながら俺と転生神は二度目の邂逅を果たした。


「不本意って何さ! ちゃんと転生のお仕事してるんだからね私だって!」


――――――地の文にまで入ってくるな。

急死……いやいや、休止はまだしなさそうです。自分事なのに「しそう」っておかしいですが、しなさそうなんです。



しなさそうなんです。短編は書いてますが。

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