第41話:アルトは、ヴァードの丘へと到着した。
皆さん、おはようこんにちはこんばんは。
今の時刻ではこんばんはの夜来です。
とびっきり遅れましたね、アハハ……ごめんなさいね、最近疲れが溜まってる物で……。
それでも応援してくれている人のために、そして自己満足のため(比率5:5)に書き続けます!
あ、ご指摘がありました「!」とか「?」とかの記号はこの回から全て半角にしました。見易くなっていればいいんですが……。
それではどうぞ!
――Side アルト――
……俺が「Hero's Blood」奥の通路でとんでもない物を見た、その翌日。今日も、絶好の狩り日和だ。
この前の双頭龍の時と同じく、1番人の出入りが少ない2番副門……通称、西門が、依頼の出発地となる。
俺は、名前もよく知らない魔獣が門の外でギャーギャー鳴いているそんな所で突っ立っていた。
「――――――暑ぃ……」
今日は猛暑日らしく、俺は、あらかじめ持ってきたでかい水筒から水分補給。中身はお茶(のような味のする清涼飲料水)だ。元の世界に似てる物があるってのが、あのバカ女神がユースたる所以なのかもしれない。明らかに遊んでるもん、これ。あいつがこの世界を作ったなんて言って無いけど、なんかそんな感じがする。
さて、先ほどのセリフは正確に言うと「俺は」じゃなくて「俺達は」であり、この前のように、既に殆どの「Nameless」メンバーが集まっていた。
先ずは俺、アルト=シューバ。続いて学園1年次最高位のダント=サスティーフ。同じく第2位のウェスレイ=リスニル。
いや、リスニルがダントに続く第2位っていうのは驚いた。確かに強いけど、まさかナンバー2とは。因みに知ったのは、俺がダントに大悪魔討伐の話を持ちかけたとき。学園寮では部屋が順位順になってるから、ダントの向かいの部屋=第2位=リスニルの部屋となっているわけだ。いやぁ、驚いた。
そして、俺と同じGクラスのエイナ=ユーグリッドと、Bクラス、ラウス=ガレーダ。……おい其処のアンタ。ラウスの本名忘れてただろ。……つっても、俺も忘れてたわけなんだけどな。確か1回しか出てきてないし。
「……アルト=シューバ。何話してる」
「……いや、別に」
「それより、ソフィが遅い。先に行けとは言われたけども……」
さて、今回遅れているのはエイナでは無くてソフィだ。しかも数秒とかの遅れじゃなくて、数分。リスニルの方は見てないが、イライラしてるだろうなぁとか思いつつお茶(のような以下略)を飲む。緑茶と麦茶を足して2で割って何らかのフレーバーを入れた味だ。美味い。「それもう茶の味じゃなくね?」とか言うツッコミは一方的につき返すから覚悟しとけ、あたかも一方さんのように。
……ラウスによると、ソフィとラウスは互いに向かい合う部屋であり――つまり順位が1つ違いなんだな――双頭龍を狩りにローカルド大平原へ行ったときはラウスがソフィに声をかけ、2人で西門へと来たらしい。そして今日もラウスが声をかけ、一緒に行こうと言ったと。だがソフィは「すぐに行くから、先に行ってて」とラウスに呼びかけ、仕方なくラウスは独りで来たというのだ。
「……あ、ソフィ」
「……やっと来たか。何分待ったと……まぁ良いんだけど」
そんな話をしていると、遠くからソフィがタッタッタと駆けてきた。何時ものように、長い黒髪が揺れている。……此方へ着く時には、膝に手を当ててハーハーと肩で息をしていた。いやぁ、相当慌ててきたんだろうな。
「す、すみません! ちょっと準備に手間取ってしまって!」
……これは、リスニル怒るかなぁ……と、恐々しながらその方を見ると、「ハー……」なんてため息さえ付いているものの、別に怒るつもりはないようだ。「この前エイナが遅れてきたときは怒ってたのになぁ……女子だからかなぁ……」
「……アルト。俺も一応女だぞ」
「なッ!? く、口に出てたかッ!?」
「あぁ……まぁでも、そういう論理で行くと俺は女として見られてないのか、あの銀髪に……ハァ」
……いや、リスニルがそう思うのも無理ないよなぁ……だって、一切スカートの類を着ないんだぜ? エイナ。学園の女子制服はスカートなんだが、それもイヤイヤ着てるという感じ。度々俺の部屋に来るときは、いっつもスカート以外のものを穿いてる。よっぽど嫌なんだな。
……1年前はいっつも女の子女の子してたらしいじゃねぇか、ホントに何があったんだ……(第28部 Side Story参照)
「……まぁ少し遅れたが、やっと揃ったな。時間は有るが、急ぐに越したことはない。直ぐ出発しよう」
うんうん、無闇に怒らないのもリスニルっぽいな。よし、行こう…………んん?
「……おーい、ラウス? どした?」
いや、なんかね? さぁ行こうという時になって、ラウスが動かない。なんか一方向を見てポーッと惚けているような……あれ? この光景、この前どっかで見たような……えーっと、何処だったっけ……そう、双頭龍を倒してきて……それで帰り道を歩いて……「Hero's Blood」に行って……俺が「とんでもない物」を見た……いや、その少し前だ。
「おいおい、確かに綺麗な人だけどよ。傍に男居るぞ」
「まぁ……分かってるんだけども……!?……?」
つまりは、ラウスの「綺麗な人に見惚ける」癖のようだった。まぁ、確かに長い金髪の綺麗な人だったけどさ……。彼氏みたいな人が居ても、コイツは自覚ありで見つめるのか。見つめられる方になると怖そうだな。実際ちょっと女の人ちょっと怖がってたような。
それで、次にラウスが起したアクションは何かに向かって身構えることだった。一瞬不思議がったが、この前の光景を思い出してなるほど納得。そういえば、ギルド内でラウスが同じことしてた時、攻撃を受けたんだよなぁ……。思うに、ソフィが「晶槍」の小さい奴でチクチク背中をやってたと思うんだけども……なんか、今日はそれが来ないらしい。
「なんだ、いつも来るのか? 背中への攻撃」
「いつも」
へぇ、珍しいこともあるんだな。今のソフィは、止まってる俺達に向かって「早くー!」なんて呼びかけてる。ギルド内のあのおっそろしい笑みとは大違いだな。
……さて、あんまり待たせるのもアレだし、そろそろ行こうとラウスに行ったら、渋々ながら了承してくれた。なんだ、やっぱ見たいのか。
そういうことで、俺達はヴァードの丘へと向かう為、西門を潜ったのだった。
――――
――――さて、俺達はいまヴァードの丘まで後少しというところに居る。
え、道中の描写は無いのかって? いやぁ、何もなかったのを描写してもつまらないと思って。あえて何かあったと言うならば、ちょっとダントの態度がムカついたんで2発ほど殴ったことかな。短絡的だと思われてもいいんだけど、最初から読んでる人には俺がそういう人間だとよく分かってるはずだから……え、わかってない?
ヴァードの丘……名前の由来は、昔何もない荒野だった此処を豊かな農業地帯にしたヴァードという男らしい、ガフリア王国西部にある小高い丘。前に双頭龍の翼を獲る為に行ったローカルド大平原よりも西にあり、実際此処に来る途中、平原の近くを通った。アタナー・エリアに隣接しているだけあり、また小高いことも重なって遠くにサタナー・エリアの大きな火山が見える。……えーっと、サタナー大火山だったっけ。ヒュマン・エリアの呼び名だからあっちの呼び名では違うと思うけど。
大悪魔が住み着くもっと前、サタナーの弱い魔獣が蔓延る前はこっちの魔獣が丘にすんでいたらしい。
比較的温厚な兎型魔獣のホワイトラビリアや、天馬の小さくなった感じのウイングポニー、ちょっと大きいアルマジロ型魔獣のボーラーなどなど……まぁ色々居たらしいと。だけど、ある日突然サタナーの魔獣……主に虫型の魔獣……さぞかし気持ち悪いだろうな……が攻めてきて、ヒュマン側の魔獣は散り散りばらばらに逃げて、その近くに住む人は魔獣倒しに精を出すことになった……そして依頼理由に戻ると。
「気味が悪いな……さすがはサタナーの魔獣が住み着く場所だ」
ダントがそう呟くと、リスニルも同意したように首を縦に振る。この2人が気味悪がるのも無理ないな。今俺達が歩いているのは、両端が高い針葉樹林の森に包まれた、ヴァードの丘へと続く一本道。針葉樹林とは言うけれど、此処までサタナーの魔獣が進出してきたのか何か木の先っぽが溶かされたかのように丸まっている。なんだろう、酸を吐く魔獣でも居たのかな、Aクラスのフィンル・エレンスみたく。
「な、なぁアルト……」
「……ん? どうしたんだエイナ」
「……い、いや……ちょっとこういうのには昔から弱いんだよ……」
「頑張れ、あと少しで丘に出るぞ」
……へぇ、こういう一面あるんだな、エイナ。いかにも「何にも怖い物はないぜヒャッハー!」みたいな外見なのに。いや世紀末じゃないけど。でも、エイナなら大丈夫だろうと思って其処まで深く追求したりしない。だってエイナなら悪霊とか出ても「オラァァァァァァァ!!!」とか不思議パワーで斬っちゃいそうだし、心配は不必要だと見た。エイナは俺の言葉を聞いて「うぅぅ……」と唸っているようなので、とりあえず食べられないように身構えておこうかな。(注:エイナの声は涙声です)
「……まぁでも、私たちの力なら一発で解決ですよ! 明るく行きましょうって!」
ソフィは何故かテンション高めだ。なんか変なものでも食ったかな、俺が見た限り、道中は普通の物しか食ってなかったはずだけど。
「ソフィ、なんでハイテンション?」
「だって、これから魔人と戦えるんですよ! テンション上がらない方がおかしいですって!」
「……?」
やっぱおかしい物を食った疑いあり。後で精密検査しておこうかな。いや今にでも……別に卑猥な意味じゃないって。よし、そうと決まれば体の異常を見分けるクリエイターで創った魔術、《探査》で……。
「……皆、着いたぞ。ヴァードの丘だ」
リスニルの声に、《探査》を中止せざるを得ない俺。まぁいいや。逆にハイテンションな方が戦闘に良いし。戦闘中におかしくなったら俺が【クリエイター】で治せばいいし。……ちょっとまった、別に倒れたら回復してまた送り出すループなんてしようとしてるわけじゃないぞ?
―――ヴァードの丘は、それはそれは赤茶色の丘だった。なんかね、土の茶色と何故か知らないけど付いた赤色が交じり合って、もう気持ちが悪い。
そしてあちらこちらに、大悪魔が来る前から棲み続けているらしい、虫型魔獣。太り太った百足みたいなやつとか、いやぁ、もうなんか気持ち悪すぎて、逆にスッキリするね!
……冗談はよそう。
「……アレか?」
そんなヴァードの丘の少しずつ進んで行った先に、ソイツの姿はあった。
サタナーの魔獣である骸骨は、体長1m50cmほどなのだが、視界に入ったソイツの姿は違う。体長はざっと2mほど。通常のスケルトンに比べて骨が黒く、それでもって緋のマントを肩から掛けていた。そして、骨で作られていると見られる玉座らしき物に、ソイツは座っていた。
「アレか……大悪魔って奴は……此処まで来ると、逆に腕がなるぜ……」
エイナが言う。ソイツと俺達の距離は30mほど。相手は勿論俺達の気配に気付いているだろうし、やはり魔王の頭脳だ。正々堂々、行くしかないか。ダントも、リスニルも、エイナも、ラウスも、ソフィもやる気満々だろう。勿論、俺も。
そして、ソイツは口を開いた。
いや、口が取れた。
「……あれ?」
誰かが、声を漏らした。しかし、大悪魔の下顎はポロリと取れ、そのままコロコロと地面を転がっていく。それと時を同じくして、全身の崩壊が始まった。頭蓋骨の一部が砕け、肋骨の1本が取れ、大腿骨が崩れる。緋のマントもバサリと落ちた。
どういうことだ? そんな今の状況では理解不能な出来事を必死に理解しようとする俺の肩に、誰かの手が触れた。
「……アルトさん……」
……その声はソフィか。いや、今あんまり聞かないでほしいんだよね。なんか今起こってる状況が理解不能で、正直どうしたらよいかわからなくて、自分ひとりで考えられる物ならなるべく自分で考えてほしいっていうs
『ズッ――――――』
俺の体内に、何かが皮膚を突き破って入ってきた。
……何が起こった? ……腹に刃物をブスッと突き刺されたわけじゃないし、頭部をハンマーでぐしゃぐしゃにされたわけじゃない。軽くて、身体的なダメージはもっと少ないような物。針みたいな……でも心臓に一突きされたわけじゃないし…………あー、なんかもう何も考えられない……何処がおかしいかも、わからない―――――――――。
―――既に殆どが崩壊している大悪魔とその玉座の後ろから黒いドレスのような物を着た女性が出てきたのを薄らと見たのを最後の視覚的情報にして。
――――――俺の意識は、闇の底へと堕ちた。
ちょっと「チーG」書くのを休止して、短編小説なんか書いてみようかと思ってたりします。
息抜き大事ですしね!
まぁ、何時になったら書くのかなんて、分かりませんがね!
それではこの辺で!
追記:今後の展開のため、一部修正いたしました。