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チートな俺は、Gクラス。  作者: 夜来
チートな俺は、ネームレス。
37/51

第33話:アルトは、双頭龍と対峙した。

お久しぶりの夜来です。

意味も無く予約投稿。いや、来れないかも知れないからね。


――Side アルト――


―――――朝だ。 深夜3時に強引に起床して、エイナと駄弁っていたら……時間というものは、意外と早く過ぎる物のようで。

森に居る、種類も分からない鳥型魔獣が、ニワトリとはお世辞にも似ているとはいえない「グアー! グアー!」といったガラガラ声で朝を告げる。

時計を見ると午前6時。 太陽はとっくの昔に上がっていた。 夏だもんな。



「……龍狩り(ドラゴン・ハント)、か……。 今日中に学園に帰ることができれば良いんだけどな」



「……」



一般的に、【採集】目的で(ドラゴン)族を(たお)すことを「龍狩り(ドラゴン・ハント)」と呼ぶ。

他の魔獣と区別されるというのに、(ドラゴン)族を斃す事の難しさを象徴しているのだ。


俺は、半ば呟くように言う。……俺と一緒に起きているはずのエイナからの返事は、無い。


まぁ、仕方ないよな。寝てるんだから。

……あぁ、「番」の途中でエイナが寝たいって言うもんだから、しょうがなく寝かしてやったんだ。 甘い? 可愛い女の子(しんゆう)からの頼み、1回位叶えてやっても良いだろ。

【クリエイター】で【常時起きている体】を望んだ俺は、エイナが寝てから1時間半、ただただ沈む月と昇る太陽を観賞していた訳だ。

この6人が居る所に、俺がXCMでダント戦に使った聖属性の防御魔法《聖域(サンクチュアリ)》を結界代わりに掛けて、な。

だって、魔獣やら盗賊やらが来たときに対処するのは面倒だし。だったら魔法で何とかする。



さて、起すと悪いから呟くように言った俺なのだが、直ぐにそれが不必要な物だと悟った。

……いや、起さなきゃならないじゃん?



現在、俺達6人は円形になって座っている。 俺の左隣にはラウス。右隣にはエイナ。

ラウスの左にはソフィが居て、その左にはダント。そして、その左にリスニルが居るわけだな。

とりあえず、隣のラウスを起すか。


「おーい、ラウスー。朝だぞー」 トントンと肩を軽く叩き、声を掛ける俺。すると、意外にもラウスは数秒で意識をとり戻した。


「……もう、朝か」 眩しい太陽からの光で完全に目が覚めたのか、目を擦り、碧色の髪をグシャグシャと掻いて呟くラウス。

そうなんです。今は朝だから起きなきゃいけないんです。人の定めなんです。


ラウスにはソフィを起すように言ってから、俺は右隣のエイナを起そうと、首を右に向けた。案の定、まだ寝ている。


「おーい、エイナー? もう朝だぞ、起きろー」 


肩を持って軽く揺すり、そう声を掛けた俺。なのだが、エイナはラウスほど眠りが浅いわけではないみたいで、中々起きない。

早々と起きる前例(ラウス)を見ていた俺なので、少しイラッとするのは言うまでも無いだろう。


「……」


「……!! ぉ……おはよう、アルト」


「おはよう、エイナ。目覚ましビンタならぬ目覚ましチョップのお味はどうだ?」


「やっぱお前かよッ!」


まぁ、簡単に言うとエイナに脳天チョップしたのだ。あくまで軽く、だけれども。

それに反応して起きたエイナ。俺が目覚めの一言を掛けると、エイナは起きたばかりだと言うのに綺麗にツッコミを返してくれた。


エイナにはその隣のリスニルを起してくれと頼もうとしたが、その必要は無かった。

なぜなら、俺とエイナが早朝漫才をしている間に、ラウスから回った目覚ましはリスニルまで行っていたのだから。エイナだけじゃねぇか。眠りが深いの。


「……何時見ても仲が良いな、貴様ら」 漫才を呆れるように見ていたダントさん。一言ありがとうございます。




――――



「それでは……食ってから早速ローカルド大平原に行き、双頭龍(ジェミニ・ドラゴン)を斃し……に行くぞ」


朝食タイムの最中、リスニルが言う。

文が途切れ途切れになっているのは、リスニルが食いながら話しているからだろう。いやいや、行儀悪いって。


「作戦とかは有るんですか?」


そうリスニルに尋ねるのは、食料を早めに食べ終えた(小食なのかもしれないが)ソフィだ。丁寧な言葉遣いは元来の物らしいな。やっぱり。


「はっきり言ってしまうと、無い。下手に作戦を立てて失敗すると元も子もないからな。

 何より初陣だ。まずは力押しで行こうじゃないか。その内このチームで最適な作戦という物が見つかるだろう」


あ、やっぱりゴリ押しなんだ。綿密に作戦立てても、それが破られたら対処するまでに数秒なりともラグが生じるからな。

それを防ぐなら、作戦無しで突っ込んで力押しした方が良いというわけだな。

幸いにも場所は平原。各々周囲に少しでも気を配っていれば、仲間の魔法が当たって戦闘不能、何て馬鹿な事にはならないだろう。


ソフィも俺と同じく考えたようで、「分かりました」と返事を返した。




数十分後。朝食を食べ終えた俺達は、リスニルの指示通りローカルド大平原へと向かうことにした。

昨日看板が有った位置まで戻ると、その看板は昨日と同じように(しっか)りと(そび)え立っていて。変わらず[←2km先 ローカルド大平原]の文字が書かれている。

それに従い、左へと進路を変更する。

左右の森は、今にもこの舗装されていない道路に覆いかぶさろうとしているかのように空中で繋がり、トンネル状になっていた。

2kmという物はあっという間で。そのトンネルの森を抜けると―――――



――――雄大な平原があった。

ローカルド大平原。広さは、元々巨大なエクシリアが3個入ってしまうほど。見渡す限りの草と、所々突き出した岩と、そして晴天の空。吹き渡る風に靡く草。

遠くにはカメラで取っておきたいほどの綺麗な光景だ。元の世界、外国は知らないが日本じゃまず見られない、そんな景色。

周りの森が所々削られているのは、龍の攻撃か、それに挑んだ物の攻撃の痕なのか。どっちでもいいや、まぁ置いておこう。


「……おぉ」 エイナが、感嘆の声(と思われる声)を上げる。エイナにもわかるのか、この綺麗さ。


ソフィが「綺麗ですねー」と言っていたり、ダントが「この景色は1度文献で見たことが有るが……」とか何気に博識ぶっているのはまぁ割愛するとして。



……広すぎじゃね?こんなんじゃ、双頭龍(ジェミニ・ドラゴン)がどっかで出てきても、見えない可能性あるぞ。

事実、平原の中央に向かって気付かないほどのなだらかな坂になってるらしいし。地平線を越えてるように見えるから。


「リスニル。 此処は中央に向かってなだらかな坂になっているらしい。坂のあちら側で龍が出現しても、私達に見えない可能性があるぞ」


俺がリスニルに言おうとした途端、そのリスニルに話しかけたのは、奇しくも俺と全く同じことを考えていたらしいダントだった。

何なんだ、帰りに殴る量+1発だぞ?とか、理不尽なことを考えている俺。馬鹿みたい。


「……そうですね。比較的見やすい中央に向かいましょう。……それでは、平原の中央に向かうぞ」


やはり、ダントとの会話に出る敬語モードと、その他に出る騎士モードの切り替えが上手いリスニル。

なんだろ、リスニルが《聖騎士》の二つ名持ってても、気にならないよな。


閑話休題。そうして平原の中央に向かおうとする俺達。

正直、何kmあるのか分からないからダルい。ここは空気を読まずに、馬車でも作ってしまうか……なんて、考えていた時だった。



ガササッという、草同士が擦れあう音。俺達の直ぐ傍の森からだ。全員が、足を止めて森を見た。

数秒後、其処から飛び出してくる影。……数は、4つ。


「ウルフィーネ……っ! しかも4体ですか……」


突然現れた狼型魔獣、ウルフィーネの群れに驚き、そう言うソフィ。ラウスも驚いているようだ。

此方としては4体なんて楽勝以下の物だけども……手ならしに倒していくか。



そう思っていた、のだが。



なにかウルフィーネの様子がおかしい。まるで、俺達に意識が向けられていないかのようだ。

俺達と対峙する様子を見せず、森から来る「何か」に怯え、逃げているような印象を持てる。



そして、ウルフィーネ達が一段と早く駆け出したその数秒後、俺達は「何か」の正体を知る羽目になった。



ウルフィーネ達が逃げてきた森。その木々の隙間から、ズバンッ!と、三日月状で薄緑に色づいた大きさ2mほどの物が、ウルフィーネ達より数倍早く、群れに突進して行った。

群れの1体がそれに直撃し、その飛来した物は刃物なのか、骨など無かったかのようにスッパリと胴体を切り裂かれたその1体。赤い液体が、両方の体から流れ出る。

それどころか、その三日月状の物体は地面に着弾すると小さな三日月に分裂。四方八方に高速で飛び散る。


その無数の三日月は残った3体のウルフィーネの体に突き刺さったり、中には貫通した物まであるようで、体中のあちこちから血を垂れ流し、倒れ伏す3体。

ドロドロと流れる紅い血液とか、様々な形を持ってボトリボトリと落ちるように溢れる臓物。グロテスクこの上ない。


……って、こっちにも飛んでくる!?


「《聖域(サンクチュアリ)》!!」


ほぼ無意識に、先ほどまで使っていた《聖域》を使った俺。6人を覆うように、薄く白に色づいたドームが展開。

さすがにこれは貫けなかったようで、《聖域》に当たった三日月はキィンッ!と小気味良い金属音を出しながら弾かれ、空中で消滅した。


「っ……た、助かった。ありがとう、アルト=シューバ」


リスニルが、そう俺に声を掛ける。「無意識に使っただけさ」と流して(ダントが恨む様な目をしていたのが気になるが)もう三日月が飛んでいないのを確認してから《聖域》を解除した。一気に晴れる視界。


何だったんだ?突然三日月が飛んできて、ウルフィーネをぶった斬った。そう思っていると、正解はやはり森の中から来た。


ズン……ズン……。森から、足音らしきものが聞こえる。森は高い木々で構成されていて、その正体を見ることは出来ないが。


ズン……ズン……。そんなことなどお構い無しのように、足音は此方へと近づいてきた。「なんだ……?」そうエイナが言う。


ズンッ!……ズンッ!……いよいよ、近づいてきた。同時に、森の木々が強引にへし折られるバキバキッ!という音も聞こえ、そして。




最後にバキバキバキッ!と木がへし折られ、姿を現したのは――――――――――やはりと言うか、依頼対象だった。


目立つのは、2つ伸びた長い首。3mほど有るだろうか。その先に繋がるのは、いかにもと言うべきの、『龍』の頭部だった。左は薄緑の頭、右は薄茶の頭だ。

そして、首がもう一方で胴体に繋がって居る。首と同じくらい長さがある胴体はそれなりに太さがあり。色は薄緑と薄茶がまだらに絡んでいた。

その胴体の後ろからは尻尾が伸び、これもそれなりに太い。目一杯力を使って振り下ろせば、小さなクレーターぐらいはできるだろう。

胴体下部からは、短く太い足が伸びる。短いといっても、筋肉はありあまりほど付いているだろうが。

翼は畳んでいるのか、胴体上部には何かが折りたたまれて鎮座していた。



まぁ、あれだ。一言で言うなら、ポケ●ンの●ーマンダが首を長くし、尚且つ首を二つにした色違い。それで説明は良いと思う。

全体的に、全ての攻撃を弾けそうな輝く鱗が、依頼対象―――――「双頭龍(ジェミニ・ドラゴン)」を引き立たせていた。



「でけぇ……」エイナが呟く。まぁ龍だもんな。

他の4人も、あっけに取られているようだ。俺?……元の世界で結構考えてたからな、龍の事。でかさについてはノーコメント。


森の木々をへし折りながら出てきた龍は、俺達に気付いていないのかすぐ前を通過し、行き着く先は、4体の骸が転がる場所。

何か、ギャアギャアと緑の頭が言い、それに反応して茶の頭も騒ぐ。しかし、その争い(?)は直ぐに終結したのか、鳴き声は収まった。

緑が胴体を一刀両断されたウルフィーネを食い、血を滴らせながら噛み砕き、嚥下していく。茶も、同じように1頭のウルフィーネを食い始めた。



「……(おい!今がチャンスだぞ。気付かれないうちに勝負を仕掛ける!)」


今まであっけに取られていたリスニルがそう小言でそう言い、剣を構える。

4人も、それに同意のようだ。不意打ちだろうとなんだろうと、勝てばいいんだからな。勿論俺も同意。

そして、今まさに攻撃を仕掛けようと6人が走り出そうとした瞬間。


【……緑の頭が、ぐるりとこちらを見た】


今までの威勢はどこへやら、凍りつく俺達。いや、あの龍の顔はヤバイ。マジでヤバイ。今にも食い殺されそうだもん。

緑は、数秒此方を見つめ、そして茶色に何かグギャアグギャアと話しかけている。すぐに、茶色も此方を向いた。



そして、何をするのかと思えば。



『おーおー! 何かと思えば人間ではないか!久し振りに会うたのう……』


茶色は、人間の俺にも確りと聞こえる言葉で喋りだした。詰まる話、人語を喋っているのだ。

―――「龍」族という物は、魔獣の中でも「賢」い「獣」……「賢獣」と呼ばれ、人語を喋ることができるほど知能が高い。

そんな頭を持ってして魔人と呼ばれないのは、まぁ分かるとおり立派な「獣」だからで。 魔人と呼べる龍族の「龍人」も居るにはいるが……それは放っておこう。

楽しげにお爺さんボイスで話す茶色。そして、緑も喋りだす。


『だろ? ほんとにひっさしぶりだよなぁ! 何十年前だ!?

 ……そんで、お前らは一体何しに来たんだ? この……お前ら人間では「双頭龍」と呼ばれているだろう俺達が住む、この平原によ』


此方は若い男の声だ。爺さんとチャラい若者が同居してるって、それなりに辛いよな……。

チャラいと言っても、その声は威厳に満ちている。表現しづらいけど、確かにそんな感じなのだ。


「……っ、私達はお前を倒しに来たッ!」


勇気を振り絞ったのか、一瞬躊躇してからリスニルが大声を張り上げる。

他の皆も、立ち向かえないほどブロークンハートしていないようだ。無論、俺も。



『……ハハハッ!おいおい聞いたかよ?俺達を倒しに来たんだってよ!』


『止すのじゃ、ウィン。……なるほど、以前にも私達を倒すといってこの平原に来た人間はいた。無論、返り討ちにしたが。

 私達は、いかなる挑戦も拒まぬ。性分だからのう。じゃがこのグラン……』



嘲るように笑う右頭の緑……ウィンを、左頭の茶色……グランが抑える。

そして、俺達に優しげに語り掛け、一旦話を切ると――――――――――――――



『……一切、手加減はせぬ。肉片になろうとも、私は知らぬぞ!!!』


『行くぜ人間共!!! あの返り討ちにした奴みたいに、グッシャグシャにしてやるよ!!』



ギャアアアアアアアアアアアァァァァッ!


途端、一瞬でグランの口調が豹変。 それと同時にウィンも攻撃モードになったらしく、畳まれていた翼を大きく広げ、咆哮を上げる。

翼はやはり薄緑と薄茶色。5mほどあるだろうか。……アレを持ち帰るのか……。



「さぁ、皆行くぞ!絶対に討伐するのだっ!」



……どうやらそんな心配をしていたのは俺だけの様だ。リスニルがそう叫ぶと、5人は一斉に駆け出す。

そして俺も、心の片隅で先ほどの心配をしつつ、龍を仕留めようと駆け出したのだった。

さて、準備するかな……色々と。

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