第29話:アルトは、学年最高位と再会した。
更新速度ががた落ちの夜来です。 1ヶ月はほぼ1日1更新したから、いいんだもん。
サブタイトルは「ダントとの再会」ですが、物語はギルドに行くまでに進みますよ。
――Side アルト――
目に飛び込んできたのは、見たことが無い2人と、確実に見たことがある金髪の男、ダント・サスティーフ。
ほぼオールバックは健在のようで、XCMから殆ど何も変わってねぇな。 リスニルは結構変わってたというのに。
ダントは、視界に俺達を捉えたのかその瞬間だけ石像のように固まり。
「き、貴様ッ! 何故貴様が此処に居る、アルト=シューバ!
最下位はさっさと寮の中に入っていろッ!
其処の大剣女も同じだっ! 私の視界から失せろッ! 今すぐにッ!」
……ちょ、感動(笑)の再開なのに、其処までまくし立てるか。
っていうか、XCMで負けたことを根に持っているようだな。未だに。 ……しつこい。
「なっ……、いきなり何なんだテメェはっ! それがアルトに負けた奴の言うセリフかっ!
っていうか大剣女って何なんだよ! せめてアルトみたいにフルネームで呼べよ!」
エイナ、お前もか。 感想で指摘されたばかりなのに、酷くなってる感がするぞ。
まぁ、名前で呼んでもらえないのはちょっと可哀想な感じがする。 ……「お前が言うな」って聞こえたけど、無視。
「落ち着いてください、ダント様。 美しいお顔が醜くなっておりますから」
リスニルがダントを宥めようと、そんな言葉を口に出した。 ……貶しては……ないよな?
「まぁまぁ、落ち着けって。 あいつもエイナの名前知らなかっただけかもしれないだろ?」
そして俺も、エイナを落ち着かせようとそう言葉にする。 まぁ、ダントは頭に血が上ってエイナの名前が出てこなかったことは明白だが……気にしない。
しかし争いはすぐには収まらず、5分後。
ダントとエイナは幾分落ち着いたか、まだ相手を睨んでいるが(ダントは俺を、エイナはダントを、だな)口喧嘩をすることは無さそうだ。
それを見たリスニルは、息を小さくつきながら話し始めた。
「……えーっと……。 この6人で、夏季休暇のギルダーズクエストを受けたいと思う。
6人は結構多めの人数で依頼も難しいものになると思う。 だが、このチームで頑張っていきたい。
まずは自己紹介と行こう。 私はウェスレイ・リスニル。 このチームのリーダーを務める。 よろしく」
あ、「私が作るチーム」って言ってたからやっぱり、ダントじゃなくてリスニルがリーダーなんだな。
リスニルは、次に「よろしくお願いします」と隣のダントに言う。
「……ダント・サスティーフ。 ……よろしく」
頭を掻きながら、渋々といった表情で自己紹介するダント。 何か、調子狂うな。
次は、多分ダントの右隣にいる黒髪の女子だろうか。
「……Bクラスのソフィ・マクエルです。 よろしくお願いします」
丁寧な自己紹介をした黒髪の女子、ソフィ。 ニコニコ笑う姿は可愛らしいな。何も持って無いから、武器とかを使う感じじゃ無さそう。
いや、こんなか弱そうな子には武器は扱えないか。 ……ソフィは、次の碧髪の男子に回した。
「同じくBクラスのラウス=ガレーダ。 あんまり活躍できないかもしれないけど、よろしく」
軽くお辞儀をした碧髪の短髪男子、ラウスはそう自己紹介。 こっちも目立った武器は見当たらない。
細身だけど、何かしら武器を扱えるだけの筋力があるのは、腕からチラッと見える筋肉から明らかだ。
……次は、エイナか。
「Gクラスのエイナ=ユーグリッドだ。 よろしくな」 ……何時もと同じ男勝りな、もう男同然の口調で話すエイナ。 説明は不要だな。
……そんで、次は俺か。
「同じくGクラスのアルト=シューバ。 俺もあんま活躍できないかもしれないけれど……よろしく」
「……やっぱり、貴方がシューバさんだったんですね! XCMの決勝戦見てました!」
「最高位のサスティーフを殴り飛ばした時は凄いと思った。 全く、憧れる」
俺の自己紹介に、ソフィとラウスが食いついてきた。 ラウスがダントの名を出した途端、ダントはあの時を思い出したのか、胸に手を当てる。
小さく、「……く、くそ……」なんて呟いてる。 ……なんか、すまん。
「……っ! サ、サスティーフさんも凄かったですよ! あんな強い魔法を使えるなんて! ……ラウスッ!」
「……! ……確か、《輝く世界》だったか。 最上級魔法を一個でも使えるだけでも凄いのに」
ダントが苦しむ姿(……正確には、苦しむダントを心配し、2人をその鋭い瞳で睨むリスニル)に気付いた2人は、慌ててダントを褒めるが、もう遅い。
「……はぁ……」と1回大きなため息を吐き、「もう良い」と2人とリスニルに言った。
「リスニル。 何故コイツらをメンバーに選ぶんだ。 ……仲が悪いのは目に見えていただろうに」
「……すみません、ダント様。 しかし、アルト=シューバとエイナ=ユーグリッドの力は強力な物というのも、お分かりいただけるかと思います」
「……まぁ、だが……」……リスニルの的を射た(?)意見に、ダントは納得しながらもまだ不満があるようだ。
……此処で俺がなんか言うと、またダントは怒り狂うだろうから、口出しはやめておこう。
まぁ、チームを組むんだから仲が良いのが1番1番。
「……いい加減納得しろよな。 負けたんだから」
……あっ。
隣から聞こえた一言。 俺がそれをエイナの放った一言だと認識した時には、それは的確にダントの耳を通り抜けていて。
今度こそダントの心は折れたようで……バタッと。 その場に倒れ伏したのだった。
俺がエイナを少しばかし強い調子で叱り、リスニルはその場に崩れ落ちるダントを支え、ソフィとラウスはその場で立ち尽くす。
そんな構図が、数分続いた。
――――
「……それで、もうギルドに行くのか?」
意外にも10数秒で復活したダント。 リスニルにそう尋ねる。 ……ん? 俺はちょっと疑問が。
「負けず嫌い。 お前、リスニルから何も聞かされて無いのかよ?」
「くっ、だからそう呼ぶな……あぁ、私はリスニルに『お願いですから入ってください』と数時間前に言われたばかりだからな」
……お前も苦労人だな。 少しは計画性持て、リスニル。
「まだ日は高いですから。 ギルドに行って、今日のうちにギルダー登録を済ませてしまいましょう」
その計画性が無いリスニルは、そう提案する。 まぁ、まだ2時30分にもなってないしな。 そのほうが良いか。
リスニルは俺達に良いかと確認を取り(ダントに確認を取らない辺り、強制的なんだな)、全員が良いと言うと……
「それでは、早速行こうじゃないか」
そう言い放ち、学園出口へと向かうのだろうか、歩き出した。 ……案の定、その予想は当たり、出口から商人エリアへ出た俺達は、そのままギルドへ向かう。
出口からエクシリアギルドでは十数分しかないため、特に話すこともなく。 ……まぁ、ちょっと外へ出るのは久し振りだった為、少しばかし懐かしい。
そんなことを思っていると、着いてしまった。 早ッ。
俺達6人が立ったのは、まるでサーカスのテントのような丸い外壁にでかでかと掲げられた看板、その下の扉の前。
看板には、赤字で「Hero's Blood」と、書いてあった。
――――王都エクシリア公認ギルド、「Hero's Blood」。
「勇者の血」の由来は、「勇者の血によって出来た国」という意味と、「勇者の血が流れる国」という意味が有るらしい。
勇者の活躍で出来た王都、そして国。 そして、今でも勇者の子孫が暮らし、ギルダーにも、少なからず勇者の力という物が流れている……そういう意味。 多分。
此処で言う「勇者の力」とは、別にエクシリア都民全員に血が流れていることではなく、あくまで雰囲気的なものだろうが。
扉を押し、中に入った俺達。 中は、そのちょっと怖い名前とは違い、白と黒と赤を基調とした、小奇麗な内観だった。
1階は受付らしく、中央には受付らしきカウンター。 可愛い3人の受付嬢が、それぞれ屈強なギルダーの応対をしていた。
右を向くと、様々な依頼が書かれた依頼書が張られた壁。 何人ものギルダーが、S~Dに分けられたその依頼書の内容を、しっかり吟味している。
此処から依頼書を取り、受付嬢に持っていく。 そして予定時間となると、クエストスタートとなる。
―――クエストは指定時間内に目的を達成できれば、クリアとなる。 まぁ、これは当たり前か。
クエストには大別すると【採集】、【護衛】、【輸送】、【調査】、【その他】の5個に分けられる。
【採集】は、魔獣の討伐や捕獲、植物などの採集が混ざった物。 討伐しても、どうせ魔獣の毛皮とか、良いものは貰っていくから採集に入ってるらしい。
【護衛】。 国の主要人物などを護衛する仕事。 立ちふさがる魔獣や賊はすべて排除する。 大物が依頼主のケースが多い為、報酬が弾む物が多い。
【輸送】は国跨ぎの配達だな。 時にはサタナー・エリアに入ることもあるらしい。 配達品は絶対に壊してはいけない為、高ランクが多い。
【調査】、遺跡の調査とか、魔獣がいるかもしれないエリアの調査とか。 遺跡調査は、思わぬ発掘品があるかも。
【その他】はその名のとおり。 雑用(窓拭きとか、迷子とか)をするのが多い。 故に、Dランクが多いな。
ま、色々クエストがあるのだ。 それだけの話。
左側には、ギルダーたちの交流の場である酒場が設置されていた。 ギルダーたちは、此処で交友関係を持ったり、チームを組んだりするのだ。
酒場と言っても酒だけ置いてるわけではないのが良いな。
リスニルは登録を行うのだろう、受付へと向かう。 それに付いていく俺達。
「……エクシル魔法学園の生徒だ。 ギルダー登録、及びチーム登録をしに来たのだが」
「学園生徒の方ですか! 分かりました、それでは生徒証をお見せください。 直ぐにギルダーカードを発行しますよ!」
そう言われ、俺はポケットから、事前にリスニルに言われ、持って来た学生証(紙製だ……)を取り出す。 他の5人も持ってきているようだ。
ギルダーカードは、ギルダーの証明証のような物。 いろいろな情報が其処に入るらしい。
受付嬢は6枚の学生証を手に取ると、奥から何か黒い物が中で渦巻く、ガラス球のようなものを持ってきた。 大きさは……「判定球」ぐらい。
「……なんですか、それ?」 ……ソフィが受付嬢に尋ねた。
「これはギルドボールといって、ギルダーカードの発行からクエストの依頼記録まで何でも出来ちゃう優れものなんですよ!」
受付嬢はそう言って、ギルドボールと同じく持ってきた名刺サイズの鉄板と、リスニルの学生証を、ギルドボールに触れさせる。
途端、ギルドボールはその2枚を飲み込み、数秒したところでその2枚がゆっくりと吐き出された。 2枚を手に取る受付嬢。
「はいどうぞ、ウェスレイ・リスニル様」 ……そう言って、2枚をリスニルに手渡した。
ちょっと近づいてよく見ると、リスニルが受け取った元鉄板……ギルドカードは金色に変化していた。
表面には、Aランクを示しているであろう「A」が左上に大きく、そして中央には「ウェスレイ・リスニル」と刻印されている。
そして下部には一見ランダムで打ち込まれたと見える、ドット模様。 多分これが、ギルドボールだけが読み込める、個人情報なのだろう。
……判定球といい、これといい、この世界のボールハイテク過ぎだろ。
その後も次々にカードは発行されて行き、俺にもギルドカードが手渡された。
「はいどうぞ、アルト=シューバ様」
Gクラス=Dランクのギルドカードは、元のまま鉄板の鈍い輝きを放っている。 左上には、「D」の文字。
うーん、まぁエイナと俺以外の4人は金色だからちょっと見劣りはするけど、まぁいいか。
「そのギルドカードは絶対に失くさないで下さいね。 失くして再登録しても、此処での活躍は元には戻りませんから。
それでは、次にチーム登録ですね。 全員のギルダーカードをお預かりします」
そう注意してから、受付嬢は横に退けていたギルドボールを正面に動かし、6枚のギルダーカードを受け取った。
「……チーム名はどうされますか? チーム名はそのチームを表す大事な物ですから必ず決めていただきます」
……チーム名? そんな物決めるのか。 ……リーダーであるリスニルはというと……。
「……」
……今考えるのかよ、計画性持てッ!
そこから、俺達は数分唸っていた。
「「The Dant」とか……」と言うのはリスニル。 「「My Team」とかか?」と、ダント。 ……こいつら……。
……うーん、下手な名前じゃアレだよな。 ……決めろって言われても。 ……もういっそ名無しで良いんじゃ……!!
そのとき、俺に電流走る。
「……「Nameless」って、どうかな。 今は名無しだけど、後々今よりも強くなる、みたいな」
……反応は……
「……良いですね。 響きも気に入りました!」……ソフィ。
「良いと思う」……ラウス。
「アルトにしちゃ、いいアイデアじゃねぇか」……余計なお世話だ、エイナ。 ……反応は上々のようだ。
あとの2人はまださっきのアイデアでもめていた。 そしてこの案を告げると、案の定またギャアギャアいうので……
「それじゃ、「Nameless」でお願いします」 ……放って置いて、受付嬢には俺が言った。
「かしこまりました」と、紙に「Nameless」と書き、6枚のギルダーカード、そしてまた新たな1枚の鉄板とともにギルドボールに入れる受付嬢。
数秒後、出てきたのは銀色のカードと、それぞれのギルダーカード。
「この銀色のカードがギルダーズカードです。 Aランクが4人、Dランクが2人なので、Bランクスタートとなります。
ギルダーカードと同じ様、失くさない様にリーダーが常に携行して下さいね」
ギルダーズカードは、基本的にギルダーカードと同じようだ。Bランクを表す大きな「B」、「Nameless」と刻印された中央。 そして下部のドットと。
Aクラス2人は最後までごねていたが、数に押し切られたようだ。 諦めたようで、2枚のカードを受け取ったリスニル。 他5人も、それぞれギルダーカードを受け取った。
――――チーム「Nameless」、此処に誕生。
ネームセンスの無さに脱帽しました。 自分で。
それでは、デメリット募集は打ち切らせて頂きます。
たくさんのご提案、ありがとうございました。
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