番外編:アルトは、夢の中転生神に出会った。
今回は番外編です。
感想にあった「主人公と転生させた神様」のお話を書いてみました。
――Side アルト――
「……さてと、寝るかな」
―――XCM後のある日。
何時ものように1-Gで勉強し、実技(今日は魔法訓練だったな)をし、夕食を食べ、エイナたちと別れて、此処は俺の自室。
そして、何時ものように入浴洗顔歯磨き。 そんでもって時間割決めの4連コンボを決め、颯爽とベッドインする俺。
違うからね、卑猥な意味じゃないからね。 と、一応断っておこう。
あー……眠くなって来た。
そうして、俺は安らかに意識を飛ばした。 ……はずだったのだが。
「――――……んあ?」
変な声を上げてしまった。 なぜかって、寝たと思ったのに何故か真っ暗な空間にいるんだぜ?
一応地面はあるけど、それも真っ黒。 見える景色も漆黒に包まれ、いったい何があるのかわからない。
その内、どこからか光が差し込んできた。 ようやくその空間の様子が分かってきた。
それなりに整理された、少しだけ広い部屋だ。 しかし……本棚に、ベッドに、テレビに、パソコンに……。
……これって、もしかして……!!
「――――そういうこと。 やっと分かったかな、シューバく~ん?」
俺が答えを思う前に、これまたどこからか、やたらふざけたような若い女性の声が聞こえてきた。 いや、「く~ん」とか絶対ふざけてるだろ。
何処からだ、と辺りを見渡す。 ベッドを見る、誰も居ない。テレビの前を見る、誰も居ない。 デスクの前を見る、やっぱり誰も居ない。
そして、本棚のほうを見る、女神がいた。 そしてそして、もう一度ベッドのほうをm「おーい!」 ……ボケツッコミ兼用か。
……本棚の前にいたのは、若い……20代位の女性の「神」だった。 いや、俺が思い描く女神様だったから、女神って表現したんだけど。
頭には何か天使の輪みたいなものが浮かんでおり、長い金髪(というかクリーム色?)に、名前分からないけど神様が着る服。
「いや~? 女神で合ってるよ。 ボクは女神ユース。 無念のうちに死んでいった魂を異世界に移す、俗に言う「転生」の神さ」
よろしく、とその女神様は言う。 ……転生の神……って、もしや。
「んじゃ、俺を転生させたのもアンタか?」
「もちろん。 なんせ、全ての世界の転生を司ってるからね~。 君もボクによって転生した1人さ~」
「……あー、そうですかい。 それじゃもう1つ。 何で俺を元の世界に連れてきた?」
どうせファンタジーなテンプレ世界だ。 受け入れるようにしているから全く問題ない。
そして、此処は元の世界、日本の俺の部屋だ。 転生したら全く覚えてなかったけど、この配置を見た瞬間に思い出した。
……死んだ瞬間にテンプレみたいに出てこなかったくせに、今頃何用だよ。
「ん~、…………何となくかな」
……猛烈に殴りてぇ。
「って言うのは冗談で」
……冗談かよ。
「転生させるとき、私はその魂が1番心に残っている場所でその魂に会うことにしてるんだよ。 一番多いのは、やっぱり自分の家とか、住処とかだね」
「やっぱり、心残りあると、嫌じゃない?」
「確かに。 でも、死んだ時に俺はアンタに会ったことも、ましてや自分の部屋でアンタと話したことは無いぜ?」
「……それだよ、それ。」 ……俺が転生した瞬間を思い出して言うと、女神ユースはそう言って、俺を指差した。
「その日に会えなかったから、今会いに来たんだよ。 ずーっと忙しかったからね~」
「だからボクは君の生前のお部屋に、君を招待したって訳さ~」
「君はもう転生して、アホみたいにチートな【チカラ】を手に入れて、この世界の重要な人物になってるから、お話しすることは少ないけどね」
あー、なるほど。 死んだ時は忙しかったから、今会いにきたって訳ね。 一発殴らせろ。
「このいたいけな女性を殴るなんて。 暴力反対だよ、シューバ君?」
「時にシューバ君。 君は生前の名前を覚えているかい? 忘れてるなら、思い出させてあげるよ?」
うわぁ、やっぱり殴りたい。 コイツ、絶対ふざけてる。
……名前は、覚えてないな。 転生したときに忘れたっぽい。
「思い出させて、何かメリットでもあるのかよ?」
「うん? ……ぶっちゃけちゃえば、無いね☆ ……まぁ、初夏の特別キャンペーン、みたく? 時々思い出して、元の世界を想ってしみじみするとか?」
ぶっちゃけたな、無いのかよ。 ……でも、ちょっと名前を思い出したくなるときも、合ったには合った。
……頼んで、みようか。
「はい、注文入りましたー!」 ……思考読むなよ。 ユースはそう中華料理店みたくふざけて声を出し、そして、俺に言う。
「でも、普通に教えるんじゃ面白くないから……パーツだけ教えてあげる。 並べ替え問題だね」
……えー……、何だそのクイズみたいな問題。 いや、でも漢字とか平仮名だろうから簡単に分かるかも……。
「A,A,I,U,O,B,T,Y,K さて、これを並べ替えて貴方の名前を作ってください」
ローマ字かよ! ……くそ、記憶に無いから【クリエイター】でもわかんねぇ……。
「考えるのは元の世界に戻ってからで良いでしょ? とりあえず、君が元の世界を見るのはこれが最後。 ……見納めだから、しっかりと目に焼き付けておくと良いよ」
俺の生前の名前であるパーツをしっかり記憶した俺。
ちょっとは真剣になったユースは、「これとか、これとか……」と言って、次々と自室の物や、窓の外を指差す。
……あぁ、これあったなぁ。 俺、これが気に入ってたんだっけ。
窓の外は、夜にも関わらず多くの車が走っていて、ビル街ではまだ灯が付いていて。 なんか、余計綺麗に見えた。
ここに住んでいた時は、そんな物を見ても全く興味が無かったのに。
「……もう、良いかい?」 ユースが聞く。
「……あぁ、もう良いよ。 この目に焼き付けた景色、あっちでも大切に保管しておく」
「え、何言ってんの? ……名前のパーツとボクと話したこと以外は自動的に消去されるよ?」
……え? ……ちょ、ちょっと待った、それじゃ景色の記憶消えるよね? 俺に見させた意味は!?
「待った、それじゃもう少しだk「さようなら、シューバ君。 あっちで頑張ってね~」 !? …………」
俺は、ユースが何か呪文のような物を呟くのを見たのを最後にして、その元の世界を離れた。
俺の中では、10分ほどの短い時間だった。
―――
全く心残りが無いわけじゃない。 でも、俺はアルト=シューバであり、こっちの世界の住人だ。
もう、元の世界に干渉することは出来ない。 絶対に。 だから、唯一残った名前のパーツを持って、俺はこれから頑張っていく。
―――
「…………まだ、3時かよ・・・…。 っていうか、明日学校無ぇよな……」
目を覚ますと、見慣れた棚やデスクが置いてある。 そう、此処はエクシル魔法学園寮、280番の俺の部屋。
戻ってきたのか。 ……とりあえず体を起こし、魔法灯(形は環蛍光灯、それと同じくらい明るい)を付けた。
俺の部屋の配置はもう覚えていないが、何となく、この部屋の配置と似ているな、何て感じた。
そして次に思うのは、渡された俺の生前の名前のパーツ。 紙に鉛筆で書いて、並べ替えてみる。
「これか、いや違うな。 ……こっちか、ちがうな。 これかも? …………ん」
何回かやってみると、幾らか考えた案の中に1つだけ、しっくり来る物があった。
もうユースは居ないので正誤は分からないが、何か、妙にしっくり来るのだ。 ……これなのかな。
これだと、アルト=シューバっていう名前になったのも頷けるし。
「―――――、かぁ。 ……これかもな」
ちょっと笑って、元の世界に思いを馳せる。 もう思い出せないが、元の世界にいたことは事実なのだ。
……魔法灯を消した。 もう寝よう。 ……俺はもうアルト=シューバだから。
そして俺は、2回目の安らかな睡眠に入るのだった。
その4時間後、エイナに「朝飯一緒に喰おうぜ――!!!」 とドアを「大剣で」超連打され、最悪な目覚めとなってしまうのは、また別のお話。
アルトの名前当て、出来たらやってみてくださいねww
人物紹介、多分半分も出来てねぇ……。
急がないと……。