第25話:アルトは、XCMに出場した。 (9)
考査期間を挟んで、お久しぶりの夜来です。
お待たせしました! gdgd感MAXの、決勝キャプテン対決です!
――Side アルト――
2対2か。 やっぱり、こういう物語はキャプテン対決に必ずなるよな……。
おっと、メタが過ぎたな。 ―――というわけで、XCM……クラス対抗戦も、最終戦だ。
Aクラス、1年最高位のダント・サスティーフ。 そして、Gクラス、1年最低位の俺、アルト=シューバ。
一番上と、一番下が、XCMの最後を飾るのだ。
……いや、勝てるだろうけどさ。 自分の事だけど、全く負ける要素無いし。
問題はさ、終わった後だよな。 ―――だって、GクラスがAクラスに勝つんだぜ? ……俺、あんま人に目立ちたくないし。
でも、ここまで来たからには勝ちたい。 っていうか、負けず嫌いをボコボコにして教室に帰りたい。
―――うーん、矛盾。
「必ず勝って来いよ!! 此処まで来たからにはな!」
……エイナが言う。 あぁ、まぁそのつもりだけどさ。 そのつもりだけど……。
「く、暗いよアルト君。 此処で勝って、明るくGクラスの皆に報告しよ?」
……メテリアが言う。 あぁ、気遣ってくれるのは嬉しいけどさ。 明日から大変なことになりそうな……。
「君のおかげで此処まで来れたんだ。 君に勝つ気が無くてどうするんだ」
……すっかり回復したヨハンが言う。 勝つ気はあるに決まってる。 だけど、「(自分の中では)決められた勝負」ってのがなぁ……。
「……(グッ)」
……何も行って無いが親指を上にサムズアップするアリス。 え、それマイブームなの?
―――――……よし決めた。
このなんだか分からないモヤモヤは、アイツにぶつけるとしよう。
明日からの事? んな物もう知らない。 明日は明日、今は今だ。
「よっし、勝ってくるぜ、皆」
軽くそう言って、モヤモヤを相手にぶつけるという理不尽な宣言を心の中でしつつ、俺はダントが待つ闘技場へと向かった。
明日の事なんざもう知らない。 軽く放り投げた形になったな、俺。
―――――
「それでは、決勝戦5番手、最終戦を始めたいと思います!!」
「Aクラスからは、学年トップの実力を持つ、自他共に認める最強、ダント・サスティーフ!」
……観客席、Aクラスのエリア始め、殆どのエリアから歓声が上がる。 上がっていないのは、2回戦でAクラスに負けたBクラスとGクラスぐらいかな。
Bクラスはアレか。 相当根に持ってるみたいだな、負けたこと。
「対するGクラスからは、1回戦・2回戦と並み居るキャプテン達を格闘術で破ってきたダークホース! アルト=シューバ!」
残りから歓声が沸く。 いや、残りって表現しちゃ悪いけど、だって本当に残り物だもんな……。
でも、さっきの歓声に負けない大きい応援に、俺も内心嬉しい。 絶対勝って帰るぜ。 ……いや、必ず勝つけども。
「本当に勝ち上がってくるとはな……恐れ入ったよ、アルト=シューバ」
「だけど、此処で君は私に負ける。 ……最初から決まっていることだ。 Aクラスの私が、Gクラスの、それも最低位に負けるはずが無いだろう?」
「君はこのXCM、身体能力の強化しか使えないみたいだが……私は全力だ」
「ま、精々勇気を振り絞っt「……あー……ちょっと黙れ、負けず嫌い」
いい加減グダグダとウザくなってきたので、ちょっとキレ気味に、割り込んで言う。
そうしたら話を止めてくれた。 お、良い所もあるじゃん。
「誰が負けず嫌いだ! 私にはダント・サスティーフという名前g「だからー……」
「たかが【チカラ】がちょっと下回ったぐらいでさぁ、何? そんなに負けたくねぇの? オマエは、そんなだから「負けず嫌い」なわけ」
ちょっと文法的におかしくなった気がするが、まぁ良いや。
あ、今の話は俺とダントにしか聞こえないように細工して、皆にはちょっとだけ幻覚に掛かってもらったから大丈夫。「対峙してるだけ」ていう幻覚な。
「キ、サマ……!! 実力の差を思い知れよ・・・ッ!!」
そしたら、テンプレどおり見事にプッツンしてくださいました。 小刻みに震えてやがる。 お見事なぐらいの震え具合だな。 ……幻覚解除っと。
―――――さぁて、決勝戦兼イライラ放出試合、始めますか。
カァーン!と、ゴングが鳴った。 試合開始だ。
「《聖召喚》!! 《聖剣》!、《聖龍》!」
開始の合図とともに、ダントは何か詠唱する。 ……魔法の詠唱じゃないな。 アイツの【チカラ】か?
それとともに、ダントの右手、そしてその前方にそれぞれ、光の粒子が集まり始めた。
時間の経過とともにそれは何かの形をとり始め……。 数秒経つと、完全にその形になった。
ダントの右手には、細い刀身に、白く、細やかに装飾された鍔や持ち手。 最高の剣といわれるソレ。
そして、前方には西洋龍の形を取り、白い鱗に覆われた美しい体と、厳しく、それでいて優しい目。 ドラゴン類最強と謳われるソイツ。
どちらからでも、離れた場所からでも分かる、圧倒的な聖属性の魔力。
「エクスカリバー……セイント・ドラゴン……」
「そうだ、私は【聖属性を操るチカラ】。 ……さぁ、ケリをつけてやるッ!」
なるほどな、つまりアイツは「聖」と付いてれば何でも操れるし、何でも創り出せる……みたいな感じか。
結構チートじゃねぇか。 悔しがる意味が分からないよな。
まぁー、とりあえず。
今ダントが作り出した2つは、その道で最強といわれる2つ。 普通なら結構面倒だな。
―――普通なら。
「さぁ、飛べ聖龍!! 《聖龍焔》!!」
そうダントが言うと、龍はコチラに向かって大きな翼を羽ばたかせ襲い掛かってくる。 そして口からは光の粒子が漏れ出した。
メテリアの得意魔法《焔波》の上位魔法、《龍焔》。 その聖属性系が《聖龍焔》だ。
そういえば言ってなかったな。 「聖」属性の魔法は、一部の限られた人しか使えない。
その使える素質がある人でも、多くはその事を知らずに人生を過ごすらしいのだ。 もったいない。
聖属性の魔法は、他の属性の魔法を「聖」と呼ばれる粒子で再現する物で、威力は桁違い。 つまり、ダントは結構凄い奴なのだ。
いやぁ、近くで見ると絶景だな。 でも、アレが当たると酷い事になるのは確実だな。
……そろそろ潰そう。
「そこ、あぶねぇぞ? ……逃げたほうが良いんじゃねぇか?」 俺は、親切にもダントにそう注意をした。
ダントはソレにまた激昂したようで……まぁ良いや、ほっとこう。
俺は、脚力を強化、半分クラウチングみたいな姿勢から駆け出す。 勿論、脚力を「超」強化しているので、其処からは文字通り「消える」。
龍は、いきなり俺が消えたことで混乱している模様。 ダントも同じようで。
そして、龍の懐へと飛び込んだ俺は、右手を一杯に引いた。 ――――後は分かるな?
「……ぅうらあぁぁぁぁぁっ!!!」
龍の腹に正拳突き。 もうすっかりおなじみになったな。
その巨大な体ゆえ、いかに身体能力が優れていても避けることができない龍は、俺の拳をモロに喰らった。
……筋力=威力超強化と、見た目には分からないが反発力を滅茶苦茶強くした、チートパンチを。
「グオオオオオオオオオオオッ!!!」……という龍の呻くような叫び声と、
「何ぃっ!?」……というダントの、信じられないと言う感じの声は同時に聞こえ。
ドゴオオォォォォォォォォン!!! と、数10m吹っ飛ばされた龍が、闘技場の壁に掛かった防御魔術を突き破って大きな凹みを作ったのはソレより2秒ほど後だった。
闘技場が揺れた。 ソレこそ地震かと思うほどに。
龍は、グッタリとしたまま動かなくなって、やがて元の光の粒子、「聖」になり、消えた。
……俺が言うのも何だが、龍ってこんな易々と吹っ飛ぶ物だったっけ?
聖龍が壁に衝突したときの衝撃は凄まじい物だった。 土煙がモクモクと上がり、一向に晴れる気配が無い。
俺が居る闘技場の左半分は綺麗だが、右半分には土色の靄がかかっている感じだ。 多分、凹んだ所の地面は、大きく削られてるんだろうな。
……あ、そういや負けず嫌いは?
俺がそう思ったとき、ズバッ! といきなり靄が晴れる。 その次の瞬間には、ダントは聖剣を構えてコチラへと飛び掛っていた。 その距離は20mほどだが……。
「《聖双刃》!!」 とダントが詠唱。 ダントが剣を振ると、その軌跡の形をした白く大きな刃がコチラへと飛来する。
うお、中々に速いッ!
咄嗟に左に避ける。 俺の右横を刃が通り抜け、後ろには地面に横一文字の大きな傷が入った。 当たったら風穴開くな、アレは。
そして、一瞬後ろに気を取られた俺は、前から来る第二陣に、直前まで気付かなかった。
「うおっ!?」
またもや咄嗟に、今度は体を反らして……マトリッ●ス的な動きで避ける。 ……ダブル、ね。 なるほど。
あ、因みに……この刃の速度、尋常じゃないからな? 常人だったら、多分上半身と下半身がおさらばしてる。
「く、クソ……っ! クソがあぁぁぁぁぁ!!」
おーおー、相当怒ってんな。 別に、怒らせたりする行動はしていないけど……。
プライド高すぎだろ。 カルシウム取れよ……っと。
「聖装!!」 ……もう何度目かの「聖」属性魔法。
ダントが詠唱を終えると、「聖」はダントの体を囲む。 ……あぁ、そういうことね。
光が形作るのは、白い盾であり、白銀の頭鎧であり、同じく白銀の鎧。 フル装備のダントが其処にいた。
「うおおおおおおぉぉぉ!!」
ダントが叫び、コチラへと駆ける。 ……本気になったか。
剣を振り、《聖刃》などなど出しながら、俺に切りかかってくるダント。
ソレに対し俺は、ソレをただただ脚力と反射神経を超強化し、避けるだけ。 ……いや、ふざけてる訳じゃない。 けっこう隙が無いのだ。
一方は剣を振り、もう一方はソレを避け続ける。 ……いつの間にか、歓声は止んでいた。
「オオオッ!」 ……ダントが大きく剣を横に振った。 後ろにステップして避ける俺。
……なんか、ダントは今まで小さな声で詠唱してるみたいだ。 聴力を強化してやっと分かったんだけれども。
しかし、これはチャンスか? と思った。 しかし、ソレは間違いだったみたいだ。
「―――――……!!」
その場で剣を縦に構え、短く唇を動かし、長い長い詠唱を終えたダント。
何が来るのか……と思ったら、俺の頭上に何十本もの白銀の矢が。……《聖矢》ってやつか?
よく周りを見渡せば、周りは白銀で多い尽くされている。 右には剣が、左には爆弾っぽいものが、前には槍が。
「終わりだアルト=シューバ! 《輝く世界》!!」
おお、何時にも増して厨二。 ……とか思ってる場合じゃないんだよな。
なぜか? そりゃ、四方八方を白銀に囲まれ、ソレが一斉に高速で向かってきてるんだからに決まってるだろ。
……うん、まー、あれだ。 此処はちょっと……。
ドオオオオォォン!! ……そこで、ちょうど着弾した爆弾が爆発したのか、俺の居る場所は白銀の光に包まれた。
――――
――Side ダント――
「ハァ・・・ハァ・・・」
やった、やったぞ! あのアルト=シューバを倒した!
自分が超大型呪文《輝く世界》を出そうとしていたのは、どうやら気付かなかったみたいだ。 おかげで助かった。
白銀の「聖」達が向かっていった彼の居た場所は、土煙がもうもうと上がり、彼の姿は確認できない。
だが、倒したことは確実だろう。 今の彼では、アレを突破できまい。
彼の性格やあの【チカラ】の強大さから言って、彼は【クリエイター】でだせる単一の「チカラ」しか出せないと私は推測した。
1回戦2回戦と、彼は身体能力の強化しか使ってこなかったことも、予測できた理由の1つだ。
ワァァァァァァァッ! と、大きな歓声が聞こえてきた。 どうやら、今まで聴覚が麻痺していたみたいだ。
《輝く世界》の威力は、他の魔法を軽く超えるからな。
しかし、聖龍を体1つでなぎ倒すなど、この世の人間とは思えない奴だった。
彼は、一体何者なのだ。 その疑問が浮かんだが、直ぐに掻き消えた。 声援が聞こえる。
私は、手を振ってその声援に答えようとした。
その時だ。 土煙が、いきなり バッ! と晴れたのは。
歓声が、一斉に止む。 土煙が有った場所の中心に立っていたのは――――――紛れも無い、アルト=シューバだった。
「な…………」
言葉が出ない。 ……なぜだ、何故アレほどの攻撃を受けていながら、無傷なんだっ!?
私がそう考えているうちに、彼は私の元へと歩み寄ってくる。
その一歩一歩は、私を震え上がらせるのには十分な「何か」を持っていた。
私は、細かく震えながら彼に尋ねた。
「貴様……っ、何者だっ!」
彼は答えた。 困惑しつつ、言葉に迷ったような『笑顔』で。
「何者って聞かれてもな……アルト=シューバ位しか答えられないし」
「まー、さっきの種明かしは、また今度な。 それじゃ」
そう言う彼。 その右手は、大きく振りかぶられていた。
刹那、ドンッ! と腹への衝撃。 私は、一瞬「誰」に「何をされた」のかさえ分からなかった。
再び、今度は背中に大きな衝撃。 其処で始めて、「彼」に「渾身の一発を加えられた」のだと認識した。
薄れ行く意識の中。 先程よりも大きいだろう歓声を聞いた。
「あぁ、私は『負けた』のだな」と、人生で初めての思いを感じつつ、私の意識は、闇へと堕ちていった。
はい、マジゴメンなさい。 gdgdですごめんなさい。
日にちが開いちゃってマジゴメンなさい。ごめんなさいごめんなさい・・・。
次は、種明かしと表彰式です!