第18話:アルトは、XCMに出場した。 (2)
「Class C vs Class E」
「Class D vs Class G」
今日はアルトくんがとことんチートになります。
モザ君には犠牲(笑)になっていただきましょう。
はっきり言って、寝ぼけて書きましたorz
―Side ヨライ―――
―――XCM1回戦第2試合。 Cクラス対Eクラス。
この戦いも両者一歩も引かない物で、ついに5番手、キャプテン同士の試合となった。
Cクラスキャプテン、白髪で背が高い男子、コルモ・ヒューリス。
対するはEクラスキャプテン、小さなリボンがチャームポイントの金髪女子、マリン・ブルーミア。
カァーン! とゴングが鳴り、先に動いたのはヒューリスの方だった。
――――
――Side コルモ――
ヘヘ、あの女子可愛いけども…やるからには倒さなきゃなぁ。
まぁ…俺の【翼を操るチカラ】で、サクッと勝っちゃおうかなぁ!
…いや、やっぱ女子だから、羽はちょっと掠るぐらいで…。
そんなことを考えていた俺、コルモ・ヒューリス。
俺はゴングが小気味よく鳴るなり、銀色の翼をバサッと生やし、相手の女子…ブルーミアとか言ったか、に襲い掛かる。
俺が翼を広げるなり、Cクラスの女子だろう、ほぼ悲鳴とも取れる歓声が沸き起こる。
「キャー! ヒューリスー!」 「翼が綺麗よー!」 「貴方は私が育てたー!」 「ワッショーイ!」
…ヘヘ、なんか違う物が混ざってた気がするけど、まぁいいか。 気分が良いから。
何時もの癖で、襲い掛かりながら髪をサッとかきあげる。 …にしてもあの女子、全く動かねぇなぁ…。
…!?
な、何だ? ブルーミアが突然消えやがった。 フッと、風に溶けたみたいに。
急いで辺りを見渡すと、いた。 俺の右後ろッ!
ババッ! 俺は3枚ほど羽を射出。 速度はベアルが全力疾走するぐらい…必ず当たる!
…しかし、ブルーミアはまたもフッと消え、キョロキョロと辺りを見渡すと今度は俺の真後ろ。
クソがっ! 俺はもう一度羽を、今度は多く…30枚ほどを一斉に飛ばす。
次こそ、範囲を広めに飛ばしたので一枚ぐらいは当たるだろう。
……な、なぜだ。 なぜ当たらない! ブルーミアは三度フッと消え、今度は俺の左前! なんなんだよ!
くそ、今度こそ、今度こそ……俺の顔が歪んでいるのが自分でも分かる。 だが、今は勝たなきゃいけない!
…すると、俺の左前にいたブルーミアはその場で体がボロボロと結構なスピードで崩れていき、最後には塵となる。
なんだと考えて、その塵に触ろうと屈んだまさにその時、俺の後頭部に強い衝撃が走った。 ガッ!!っと、殴り飛ばされるような衝撃。
俺がそれをブルーミアの蹴りだと認識したのは、控え場所で目を覚まし、メンバーから説明を受けた時。
その時の、蹴られた時の俺はというと、いきなりの出来事にあっけなく意識を飛ばしてしまったのだった。
…あぁ、女子の歓声が…聞こえる…。
――――
――Side アルト――
「なるほど、あの女子は幻覚使いか。 幻覚系の【チカラ】…」
「幻覚の【チカラ】!? …何で分かるんだ?」
「あの白髪は周りをキョロキョロ見渡してたろ? アレは、あのブルーミアとか言う女子が周りのどこかに居ると白髪が認識してたわけだ」
「ブルーミアは目の前に居たというのにさ。 ということは、ブルーミアが《幻視》の魔法を使ってる」
「だけど、《幻視》の魔法は常時目を見ていないといけない。 白髪はあちこち見ていた。 つまり、そういう制約を取っ払った幻覚系の【チカラ】というわけだ」
「なるほどな…あの女子には気をつけなくちゃな」
控え場所、戦闘がよく見える場所でエイナの疑問に俺は答えてやった。 闘技場の真ん中ではあの白髪がだらしなく倒れており、観客席の一角では
「キャー! ヒューリスー!」 「倒れた姿も綺麗よー!」 「ドスコーイ!」 「(ボソッと)ざまぁみろ…」 「(爆笑中)」
といった黄色い歓声とも悲鳴とも取れるそんな声が聞こえる。 一部男子生徒の歓喜の声が聞こえているから、男子の中では評判良く無さそうだな。
コルモ・ヒューリスは最後までだらしなく倒れていて、担架で向こう側…多分Dクラスの、根暗達が居るであろう控え場所がある出口へと消えた。
「さぁて! キャプテン同士の戦いはマリン・ブルーミアがその【チカラ】でコルモ・ヒューリスを撹乱! そのまま一気に勝負を決めました!」
「これによりEクラスが2回戦進出! 今から行われるDクラス対Gクラスの勝者と決勝行きを賭けて戦います!」
「それでは、Dクラス対Gクラス! 1番手の方は入場してください!」
…よし、俺達の出番だ。 1番手は、若干緊張気味のメテリア。
「頑張って来いよ、メテリア。 …あぁ、そんなに緊張しなくていいから。 いつもの実力が出せるようにな」
「は、はい! それじゃあ行ってきますっ!」
俺の声に少しだけ緊張がほぐれたかその分だけいつものメテリアらしくなって。
出入り口、闘技場の向かい側から歩いてくる敵を見つめて、こちらも入っていく。
「それでは1番手対決……始めッ!」
カーンッ!と甲高くゴングが鳴り、メテリアは1度に3つの魔法陣を展開した―――――
―――4番手対決までが終わってみれば、なかなかにいい試合だった。
1番手メテリアは、高火力×3の鬼畜魔法で敵を圧倒。 (《煙幕》からの《追尾》、《隕石落し》は、さすがの俺も中々に鬼畜だと思った)
2番手ヨハン。 相手は格闘系だったらしく、良い勝負を展開するも、後一歩で敗れた。
3番手のアリスは、恐るべき【密林地獄】無双。 たった数秒で、相手を戦闘不能にまでした。
…やはりヨハンとアリスは、また今度説明することになりそうだな。
そして、4番手エイナは…
「…あぁ、クソッ」
「いい戦いだったじゃんか。 そう気にするなって、俺が取り戻すから」
「…絶対勝てよ。 …いたたた…」
剣士のエイナとはあまり相性が良くない魔法使いが相手。
エイナが剣士と見るや、遠距離魔法をバンバン打ち込んでくる。 戦略には戦略だがズルにしか見えない。殴り飛ばそうかと思った。
エイナはそんな状況でも果敢に剣を振り続ける、しかしそれにも限界はあるようで、最後には力尽きたのだった。
というわけで、4番目を落として、2対2。 流石テンプレ&主人公補正だ。 絶対回ってくるのか。
「なんとこの試合も最終対決、キャプテン同士の戦闘となりました!」
「それでは! Dクラスキャプテン、セルニータ=モザとGクラスキャプテン、アルト=シューバは、入場してください!」
―――そして、俺の出番が来た。
「フフ、最下位がキャプテンだから…てっきり勝負を捨てたんだと思ったんだけど…」
「そうじゃなかったみたいだ…まさか僕が出ることになるとはね…」
俺と同時に出てきたモザは、不気味な笑みをそのままに俺に話しかける。
「フフフ、君は絶対勝てないよ……もう、その段階まで来ちゃったんだ…」
…根暗だなぁ…。
「それでは、5番手。 始めッ!」
ゴングが鳴り響き、モザは、手を上げた。
―――――
――Side ヨライ――
フフ…《浄化》の魔法は未だ使われていないね…勝った。
――セルニータ=モザの【チカラ】は、【触れた相手の体の部位に自分以外に見えない「種」を仕込むことが出来るチカラ】。
「種」は、黒い靄のようなもので、その効力は「仕込んだ相手の体の部位と同じ自分の部位の動きをリンクさせる」こと。
仕込んで直ぐには簡単に抵抗され、靄は振り切られてしまう。だが時間が経てば経つほどその効果は大きくなり、1日も経てば、並の大人は抵抗できない。
1週間前、対戦相手決めのときアルトに仕込んだ「種」は、どれだけ怪力の人間が抵抗しようと、なす術が無い位だ。
デメリットはまだあり、リンクさせた相手の部位は超人的なパワーを得る。 だが、これはモザにとって好都合だったりする。
なお、この「種」は《浄化》の魔法を使えばあっさりと消える。 だが、ここまで大きくなれば浄化するのにも相当時間がかかるだろう。
勝った…。
「アルト君、君に握手した時、僕は「種」を君に仕込んだんだ…」
「その種はもう、握手した右手を支配しているんだ…。 もう引き剥がすことは出来ないだろうね…」
「アレからすぐ《浄化》の魔法を使えばこんなことにならなかったのに…流石ワースト…」
「それじゃ、僕の勝ちだね…自分の右手に負けなよ」
――モザは、アルトの右手とリンクさせた自分の右拳を自分の顔に向けた。
――そのまま拳を放てば。自分は軽いダメージで済むが、相手にとってはそのパワーで重たい一撃を喰らうことになる。 これこそ、モザの考える戦略。
――そして、モザが拳を放とうとしたそのときにはもう、『アルトはモザの目の前にまで迫っていた』。
……え?
――そして、モザの体は鳩尾に拳を入れられながら吹っ飛び、壁に衝突した。
―――――
――Side アルト――
「アルト君、君に握手した時、僕は「種」を君に仕込んだんだ…」
「その種はもう、握手した右手を支配しているんだ…。 もう引き剥がすことは出来ないだろうね…」
…なるほど、さっきから右手が自由に動かないと思ったらこういうことか。
あの根暗、自分が勝ったと思って慢心してるみたいだな。 全部言っちゃったし、あいつが今から何をするか、予測はつくし。
「アレからすぐ《浄化》の魔法を使えばこんなことにならなかったのに…流石ワースト…」
って事は、あいつはこれをするためにわざわざキャプテンになったわけか。
色々考えて、とりあえずアイツは馬鹿ということで結論がついた。
「それじゃ、僕の勝ちだね…自分の右手に負けなよ」とか言っていたので、俺は【チカラ】でその種を消滅させ、脚力を要求。
あ、ちゃんと「支配された真似」はしたぜ? その方が気付かれにくいかもしれないからな。
え、それだと【クリエイター】だってばれないかって? …大丈夫、表には出してないから。 あくまで「裏」で種を処理したんだから。
アイツはまだ気付いていないらしい。 んじゃ、行くか。
そう思って俺は右手を下げ、それが相手に認識されないうちにその脚力で10mほど離れた距離を一気に詰める。
そして、腕を一気に引き、
「ゥオラァッ!」
正拳突き。 俺が最も得意とするそれは、易々と根暗の鳩尾に突き刺さり、根暗は吹っ飛ばされて壁に激突した。
まるで人形みたいにぶっ飛んでいったモザ。 もう気絶したか?……ん、まだ意識があるか。 結構入ったと思ったんだけども。
俺はモザが立ち上がろうとする場所まで跳ぶ。 ちょっと脚に力を入れただけで、20mほどジャンプした。
「グ……なぜ、なぜ君は自由に動けるんだい…」
「《浄化》も使ってない、期間は1週間…。 普通なら、全く抵抗できないはずなのに……」
あぁ、迷ってる迷ってる。 こう迷ってる顔、好きだな。 ざまぁみろ的な意味で。
「そうだな、まぁ…俺だからじゃないか?」
最高に理不尽な言葉を吐きつつ、俺は首筋に手刀を当て、モザを気絶させた。
くさいセリフだなぁ? あぁ分かってる。 だってテンプレだからね。
俺は、歓喜と驚嘆と落胆が同居する歓声を聞きながら、1-Gメンバーが待つ控え場所まで戻る。
―――しかし、やっぱチートだな……これ。
―――こうして1-Gは、1回戦でDクラスを破り、2回戦へと進出した。
―――2回戦相手は幻覚使いのマリン・ブルーミア率いる、Eクラス。
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