第17話:アルトは、XCMに出場した。 (1)
「Class B vs Class F」
さて、やっとこさXCM本選に入ることが出来ました。
アルトたちの戦いは次か、その次位ですかね。
――Side アルト――
――――さて、今日はエクシル魔法学園、クラス対抗戦の日だ。
クラス対抗戦当日は学園の授業は無し、なので、上級生はエクシリアの街に出たりしている。
だが、そんなことをするのは僅かで、大多数はクラス対抗戦を観戦するようだ。
会場は、グラウンドの傍にある実践戦闘用闘技場、通称「コロッセオ」。 その名のとおり、円形の闘技場だ。
本物よりは一回り小さいが、ちゃんと観戦席もあるし、戦闘するには十分に広い。
開幕式直前には、多くの生徒や教師が観戦席に座り、開幕の時を今か今かと待っている。
あ、この対抗戦は部外者も見に来ることがあるといわれる。 なぜ見に来るのかは不明だが。
「あー………良いよね、こうやって目立たなくて」
「いや、目立ちまくってるぞアルト。 大丈夫だ」
「君みたいな「有名人」がいるんだ。 視線が動かないほうがおかしいと思うけれど」
「だ、大丈夫だよ、やっぱり目立ってるけども…」
「……そんなに目立ちたくない……?」
一番先にエイナ、そしてヨハン。 メテリア、アリス。 一斉に俺に反応して来た。
……クラス対抗戦の開幕式は、参加者の入場が無い。
その代わりに、「開幕戦」があるのだ。 金髪のお嬢様系女子がキャプテンのBクラス対、●ュウ風格闘男子がキャプテンのFクラス。
どちらも実力が分からないだけに、面白そうだ。
…あれ、話が逸れたな。 えっと? 参加者の入場が無いところまでだったか。
入場が無いので、出場者でも俺のように観客席で試合を見ることが出来る。
ましてや俺達は第3試合。 遅くても第2試合の2、3試合が終わってから行けば間に合うのだ。
…つまり、俺達は観客席にいるわけで…俺の傍にいる生徒達は闘技場内に殆ど視線を行かせながら、チラチラと俺のほうを見てくるのだ。
見てくる理由は、単に俺が王国騎士団歩兵長のおっさん、ラウングをぶっ飛ばしたことによるのだろう。
そのせいか、いやそのせいだろう。 俺はちょっとした有名人となっているのだ。
はっきり言ってこうチラチラ見られるのはあまり好きではない。 ……よし。
俺は普通に闘技場内を見ている。 だが、さっきからチラチラと、悪く言えば小刻みにグサグサ来る視線は一斉に散った。
いや、特に何もしてないよ? 【チカラ】で見ている奴をこの体勢で把握し、見ている連中だけに威圧感を与えてやっただけ。【チカラ】乱用とかは気にしない。
威圧感のレベルは…そうだな、こっちを見てると数秒でダウンするような奴かな。
「……アルト、今1人倒れたんだがお前のせいか?」
「そんなわけ無いだろ。 おっ、始まるぞ…」
サラッと嘘をつく。 ……何か、嘘がうまくなった気がする。
「それでは、第142回、エクシル・クラスマッチの開催を宣言いたします!」
「司会は私、モデラ・トーがお努めいたします!」
…流石大陸一の学園。 第142回とか、年季が違う。 かなりの伝統行事だってことがわかるな。
トーと自己紹介した司会の言葉の後、観客席から大きな歓声と拍手が、沸き起こった。
「ファルモート・ガイン学園長より、開催のお言葉をいただきます!」
大きな拍手が沸き起こる。 そう、入学当日、トップと共に話したあの男だ。
「―――皆さん、御機嫌よう。 学園長の、ファルモート・ガインです」
学園長が円の中心に立つ。 そして、威厳があるその声で話し始めた。
「今年は、最高位で《聖騎士》の二つ名を持つダント・サスティーフをはじめ…多くの優秀な生徒が入学してきました」
「Aクラスだけではなく、他のクラスの生徒の中にもAクラス生徒に勝るとも劣らぬ生徒が在籍しております」
…!?
…今、一瞬学園長が首を動かした。 大多数には、ただ首を動かした「だけ」だと思われるだろう。
だが、俺には「学園長がこちらを見た」ように見えた。目が合ったのだ。 ……なんだ、このプレッシャーは。
「非常に見ごたえのある試合となることを、期待しております。 これにて、ご挨拶を終わらせていただきます」
マイクがあるわけではないのに、あんなに大きな声になるのはなぜだろう。 「拡大」の魔法でも使ってんのかな。
大きな拍手と共に、学園長が中心から歩き、闘技場内から消える。 どうせ、この観客席の何処かから見るつもりだろう。
「それでは、早速第1試合と参りましょう! Bクラス対Fクラス! 各クラス1番手の方は入場してください!」
…さて、始まるぞ。
――――
対抗戦のルールは、この前も説明したとおり1対1の団体戦である。
殺さなければ、格闘、魔法、【チカラ】、何でもOKだ。
……だから予想通り、それは良い意味でも悪い意味でも観客席を巻き込むものとなった。
良い意味では、もちろん熱い戦いで観客は熱狂。 「ウオオー!」やら「イエエエェェァアアァァァァ―――!」やら、熱い。
まぁ、悪い事ではないから、これは良い意味と言えるだろう。
悪い意味は…
「しつこいですわ! 《暴風》! 《紅玉の火炎》!」
「……ヌッ! また魔法と宝石をあわせたのかッ! …クソッ!」
…Bクラスキャプテン、エリヴァン=シャルロッテが右手、ルビーの指輪を突き出して詠唱。
彼女の【チカラ】は、【身に着けた宝石を魔法として使えるチカラ】だ。 これは、普通の魔法とは別として扱われるらしい。
だから彼女は魔法と宝石からの魔法を組み合わせ、別々で攻撃したり、強力な1つの魔法として扱ったりしている。
なるほど、大量のアクセサリーを身に着けていたのはこのためだったのか。 納得。
先程のは、ルビーから出た火炎が暴風に巻き込まれ、暴熱風としてFクラスキャプテン、ケン=フォロウを襲う。
…と同時に、観客席の俺達をも襲っているのだ。 これが悪い意味。
「熱っ、熱いっ!」 「焼け死ぬー!」
周りから、そんな声が聞こえる。…地獄絵図かよ…。
そう言っても、ここまで来る物は体に深刻なダメージを与えるほどでは無さそうだ。
俺は【チカラ】で【熱さに物凄く強い体】を望み、涼しげな顔でそれを見ていた。 …うわぁ、それにしても巻き込みようがひどいな。
(…俺の隣にいるメンバー4人はモロに喰らったみたいで、俺は《氷膜》と《治癒》の魔法を人知れず掛けていた)
「ウゴァッ!…」
ドサッ…と、フォロウが闘技場の壁に衝突、呻きながらそのままグッタリとした。 気絶したようだ。
「決まったー! 《巨人の槌》と《蒼玉の津波》を組み合わせ、巨大な水の槌でケン=フォロウを吹き飛ばした!」
「戦闘不能により、エリヴァン=シャルロッテが勝利! よって2対3で、Bクラス勝利! 2回戦へと駒を進めましたー!」
「ウォオオオォォォ!!」と歓声が上がる。 やはり、予想通りBクラスが勝ったか。
手を振りながら出口へと歩くシャルロッテ達Bクラスは、2回戦、もとい準決勝でAクラスと当たる。 楽しみだな。
フォロウ(アイツは、【氣を生成、色々な形で現出させることが出来るチカラ】だったな。多分だが。)達Fクラスも善戦したみたいだったが、闘技場から姿を消した。
「…アルト、そろそろ行くか? まだ余裕はあるけどよ」
「…あぁ、…もう行こうか。 ここで体調が悪くなるのはもう避けたいからな」
皆が頷く。 どうやら同じ気持ちだったようだ。
次は白髪ナルシスト風男子がキャプテンのCクラス対普通っぽい金髪女子がキャプテンを務めるEクラスだ。 楽しみだな。
まぁ、魔法の余波が来ないように遠くから観戦していよう…。
――――
――Side ヨライ――
「…よし…《浄化》系魔法は使われていないようだね……皆、これは勝てるよ…」
モザは、出場者の控え場所へと歩みを進めるアルトを見て…いや、正確にはモザにしか見えない黒い靄が未だアルトの手を覆っているのを見てそう言った。
1番前にモザ、その後ろにその他のDクラスメンバーが隠れている。
アルトたちに見つからないように隠れて見ているDクラスたちは中々に不気味である。
「歩兵長を殴り飛ばしたとはいえ…所詮最下位だね…。 注意する必要も無かったかも…」
「じゃ…僕達も行こうか…」
Dクラス5人は、アルト達とは反対側の控え場所へと向かう。控え場所は2つ有るのだ。
…顔に、不気味な笑みを浮かべながら。
うわぁ、何というテンプレ。 コンセプトだから良いには良いんだけども。
そして最後にはモザが不気味に笑ってます。 怖い。
あ、「Side ヨライ」のヨライは自分です。
つまり第三者的視点ですので、ご了承を。
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