第10話:アルトは、Gクラスからの痛い視線を受けた。
ランキング55位だった件について。
何はともあれ、ありがとうございます。
今回は、1番gdgdですorz
――Side アルト――
Gクラス。 エクシル魔法学園の1学年全7クラスのうち、最低位のクラス。
だが、総合得点が低いだけであり。中には一教科が出来なかっただけで其処に落とされる秀才が居たり、天才が居たり。 Gクラスの面々は、何時も個性的である。
Gクラス掲示の前で280人中280位という結果に沈む俺は、項垂れる中で近くにある魔術式遠隔声波発信器から流れる声に気づいた。
「―――繰り返す。 合格した者は、速やかにそのクラスのHRに入りなさい―――」」
「…あ、やべ…」
悲しみの中、急いで俺は1-GのHRへと向かった。
…その面積だけでも広大な一般教室棟。 その1階で俺は走っていた。
1-Aから1-Gまでは順番にクラスが並べられ、当然のように1-Aは玄関から1番近く、Gクラスは1番遠い。
そのお陰で、俺は1-Aの設備の良さをまじまじと見せ付けられることとなった。
…あえて言うなら、大学の講義室を普通の教室用に改造した物。全ての者が黒板を見やすいように、後ろへ行くに従って机が一段高くなっている。
高校生なのに大学レベルかよ…。俺は泣きたくなる。これから考える1-Gの姿を想像するとな。
その他にもまだ設備はありそうだが、深くへ突っ込めば本当に泣いてしまいそうだ。
そして1-B、1-C…と過ぎていき、ついに俺は1-Gのクラスの前へとたどり着いた。
「…うわ、開けにくっ…」
早速欠点発見。 窓はすりガラスだが、如何せんドアが開けにくい。これはひどいな。
しかし、開けられないというわけではない。 力を少し入れて、ドアを開け切った。
……。
後ずさりし、ドアをもう一度閉めたくなった。
あぁ、設備はボロ臭い学校机と椅子だ。 まぁ酷いにしても良かった、段ボールとかじゃなくて。
しかし、それよりも。 …クラス中から、視線が飛んでくるんだぜ? 多分俺が入る前までは談笑してた男子、女子、突っ伏してた男子までもが。
もう俺以外は揃っていたのであろう。 78個の突き刺さるような目が痛い。 あぁ、俺が座る席が何処か、わくわくしてるわけだな。
この学園では、縦5×横8席。計40個の机と椅子が1クラスに並べられている。
上から見て、1番左上がクラス1位。 其処から右へと2位、3位と続き、1番右下が40位だ。
……この空気の中で、俺は1番右下の席へと座らなければいけないのか。
…意を決して。
ガタッ…ガタッ
座ったさ。 あぁ、座ったとも。 ……チラリと、周りの様子を見た。
談笑してた男子A「…フ……ガヤガヤ」
突っ伏してた女子B「……フフ…」
…俺、皆から笑われたよね。 微笑を受けたよね。 主に哀れみの。
……それで先ほどの動きを再開させたクラスメイト達に、俺はさらにさらに憂鬱となり、机へと突っ伏したのだった。
「…おーい」
…トントンと、肩を叩かれた。 男なのか女なのかわからない声だな。
…ほっといてくれよ、俺は皆から笑われて憂鬱なんだ、お前も俺をからかいに来たんだろ……。
「おーい!」
「…ガッ!? 痛ぇ…!」
ドン! と、肩を叩かれた。 そんな声と共に、起き上がりたくない意思に反して反射的に思わず起き上がる俺。
そして、殴った奴のほうを向いた。 誰だよ、俺にこんな仕打ちをする奴は!
…其処には、黒いローブを着た赤金色の髪を持つ女が居た。 端正な顔で、とても殴る奴の顔とは思えなかった。
…多分俺がこの女の方を向いたからだろうがニコニコしており、やはり殴る奴の顔とは思えない。
聞いてみた。
「……何だよ」
赤茶の髪を掻きながら尋ねる俺。 するとその女は、思いも寄らぬ事を口走ってきた。
「……」
「やっぱりだ。……久しぶりだな、アルト」
…は? 一瞬、思考が止まった。 え、俺はこんな美少女をナンパしたことなんてないぞ?
…あぁ、同姓同名の人違いかな。 同じ名前を持つ人はこの世に3人いると言うし。
「……人違いじゃないか?」
これでこの女が去ってくれれば、俺はまた憂鬱感に浸れる…ウフフ…
しかし、女はまたも予想を裏切り、思いも寄らぬ事を口走った。 この言葉は、俺がこの日衝撃を受けた言葉、第2位だ。
「違ぇーよ。 …覚えてないか? エイナ=ユーグリッドって言う俺の名前をさ」
…またも思考が止まった。 …エイナ=ユーグリッドって言えば………!!!!
思い出した。 一年前のあの日、そう、エクシリアに下見に出た日だ。そこで、バーディン2体と果敢に戦っていたあの少女。
「…は、お前…本当にエイナか?」
「正真正銘、本物だ」
震える声で聞くも、即答された。 …だが、確かエイナは恥ずかしがり屋で金髪、そしてこんな男勝りな口調じゃなかったはず…。
「…いやな、お前とあの日会ってから自分が情けなくなってよ。 そんなで日々鍛えてたら、こんなになった。」
俺の考えを見透かすように、その女…エイナ=ユーグリッドは言った。
……エイナによると、あの日バーディンをぶっ飛ばした俺に近づくために猛烈に特訓したらしい。髪色は俺に似せるよう魔術で変えたとか。あんまり似てないが。
そして、自分の年齢と同じ『様』だった俺を『勝手に』エクシルに入ると確信し、猛勉強した結果。
背は俺よりも頭1つ小さいが、赤金の髪を持つ男勝りなエイナ=ユーグリッドが完成したらしい。
…何たる執念だろうか。 あの時の俺がそんなにかっこよかったのだろうか…。 俺としては、バーディンをぶっ飛ばしたに過ぎないのだが。
…しかし、知り合いが居た。
「よろしくな、アルト」
「…あぁ、よろしく!」
ちょっと元気が出た。 エイナはこのクラス39位。 つまり、俺の隣。 知り合いが隣に居ると、こんなにも安心感が出るのだろうか。
「しかし、アルトが280位とは思わなかったぜ…。 掲示を見たときは、嘘かと思ったよ」
あの時を思い出しているのだろうか。 エイナが言う。 確かに、3教科は多分90点以上、【チカラ】もそれなりにあると思ったんだが。
「…俺も嘘かと思ったが…どうやらホントみたいだな。 おかしいな…上手く出来たと思ったんだが…」
「なった物はしょうがないさ。 これから取り返していけば良いだろ?」
またも項垂れる俺に、エイナは笑みを投げ掛けてきてくれる。 あぁ、男勝りな女神様か。 納得。
…そこで、音がした。 まずは廊下から、ドドドドドッ!という、ボアーナが大軍勢で爆走するような音。 話していた俺とエイナは、何だと首を傾げる。
そしてこのクラスの前でキキキィィィ!!!と車の急ブレーキのような音。最後に、廊下側、クラス前のドアが「ガララッ!」では無く、
「ピシャアァァァン!!!」と開けられ、「ピシャアァァァン!!!」と閉められる音だった。 俺ら40人、絶句。 よくドア壊れなかったな。
そして、その音を出した張本人はといえば。
「…よーし、ちょっと遅れた。すまんなー。 はいはーい、席に着けよー」
パンパンと手を叩き、そんな抜けた声で席に着くよう指示する……碧の髪で、同じ色のジャージ、そしてメガネをかけ、ファイルを持った…「女性」だった。
…俺たちは、その言葉で絶句状態から抜け出し、席から離れていたものは席へと座り、座っていたものは身なりを正しくするのだった。
「はーい、Gクラスの皆、おはよう。 私が1-Gの担任を務める…ジェイ・クロウスだ。 よろしくなー」
黒板に「Jay Crows」と書いたジェイ先生は、癖だろうか、抜けた口調でこう続ける。
「それじゃー、今日は顔合わせということで、皆に自己紹介をしてもらって、解散、その後は外で寮の登録して寮に入れよー。 その後は自由だー」
「じゃー、1番の…メテリアー。 名前とか趣味とか得意な事とかなんでも良いぞー。 では、どうぞー」
メテリア…そういえば掲示の一番上だったから名前は知ってたな…と呼ばれた長い銀髪の少女は、席を立って、こちらを見た。
「ミ、ミリア・メテリアです…。 …えと、趣味は読書、得意なことは…お菓子作りです。 …よろしく」
へー、可愛いな。 特にお菓子作りのとこが。
しかし口調が昔のエイナに似てたので思わず口にすると、エイナから「思い出させるな」と軽く頬をぶたれた。 痛いんだが。
…さて、ほぼ皆の自己紹介が終わった。次はエイナの番だ。
「エイナ=ユーグリッドだ。 趣味は鍛錬かな。剣技の。 得意なことは…無い! よろしく!」
元気はいいけどさ、「無い」で締めくくるって…ええぇぇぇ… …まぁ、でもこの男勝りな感じは一部の男子にもてそうだな。 どうでも良いけど。
「よーし、最後だなー。 シューバ。 どうぞー。」
「…アルト=シューバ。 趣味は料理。 得意なことは格闘術。 ワーストだけど、よろしく」
俺がそう言いきって席に座ると、今度はエイナが「えええぇぇぇ」という顔をしていた。 何か悪かったかな。
あぁ、言い忘れてたけど俺、結構料理が得意だ。 自称料理の達人であるサナブ婆に鍛えさせられたからな。
……しかし、俺がワーストと言った途端、笑いがどこからかちらほら聞こえたのは気のせいだろうか。
「いやー、しかし今年も個性的な奴らばかりだなー」 …唐突にそう言って、ジェイ先生が語り始める。
「二つ名持ってる奴らばっかりでなー。 《獄焔》のメテリアにー、《爆速》のヨハンー、《金剛剣士》のユーグリッドとー」
「今年のクラス対抗は、番狂わせが起こるかもなー」
フフと笑うジェイ先生。 二つ名? あぁ、厨二の証…ではなく、強さの証みたいなもんか。 …って、エイナが二つ名持ちだと!? さっきのメテリアも?
「あぁ、なんか剣技の鍛錬してたら、二つ名付けられた」 軽くサラッというエイナだが、俺は驚きが隠せない。
「クラス対抗」というのは、いわゆるクラス同士での戦闘の対決なのだが、それは別の機会に話そうかな。
「それに、《不運な天才》のシューバも居ることだしー。 あー楽しみだー。」
…ん? なんか変な二つ名を付けられたような。 …あれ、クラス中の視線が俺に…痛い…。
「え、お前も二つ名持ちなのか?」 とエイナに尋ねられる。 …いや、貰った覚えはないんだが。
「じゃー、今日はこれを配っておしまいなー。 あ、外で寮の登録しとけよー。 其処で必要な制服とか教材も貰えるからなー。」
そう言って配られたのはプリントだ。 あぁ、明日の持ち物とかが書いてある。 「それとー。」 ん?
「シューバはこれが終わったら学園長室に行くようにー。 学年最高位のダント・サスティーフと一緒に呼ばれてるみたいだぞー。」
…えええ!? 学園長室に行くよう言われた時は「何したんだ」みたく鼻で笑ってたクラスメイト達も、「トップと共に」で一斉に振り返った。
…いたっ、視線が痛い。 あ、エイナも見てる。 …痛いぞ…やめてくれ…。
「それでは今日は終わりー。 じゃあなー」 …そう言うとジェイ先生は、先ほどの入り方とまるで違う、のろのろした歩き方でここから出て行った。
エイナに「何したんだよ。」と尋ねられるも、「いや、わからん」としか答えられない。 俺自体、全く心当たりがないのだから。
皆が次々とクラスから出て行き、俺も同じように1-Gから出た。 そして学園長室に行こうとし、気付く。
「…学園長室って、何処だ…?」
―――こうして、アルト=シューバは知り合いも増え、1-Gでの学園生活が始まった。
―――学園長室に呼ばれたアルトは、その日、一番の驚き様を呈する事となる。
もう一度、ありがとうございます!
これからはgdgdしないように気をつけないと…。