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白銀のソロディウス  作者: みーこ


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28/31

28.禁忌の呪文

 ディアミドの周りに布が増えた。地上からトゥタカルタさんも同じ魔法を使っている。


「フンッ。小賢しい。二人がかりだろうと、最強たる俺に敵う訳がない!」


 翼を振り回し、布を引き裂くディアミド。しかし次から次へとまた布が絡みつく。


「何だよおい! さっきはあいつすぐへばってたクセに!」

〝だってそれ、出してるの私ですもん!〟

「はあ⁉ 何を——もごっ⁉」


 トゥタカルタさんが再度出してくれたお陰で、私はこの魔法の使い方をより鮮明に理解した。捕らえたものを死へと誘う、死神の力を借り受ける魔法。禁忌に該当するような魔法だろうが、そんなこと今はどうでもいい。相手も神なら死にはしない!

 幾条もの布が、ディアミドの足を、翼を、口を縛る。飛べなくなった怪鳥が地に落ちる。

 落ちたのは、魔法陣の上!


「魔法の習得が早ぇな、キーヴァ! オレ様感心したぜ!」

〝どういたしまして。魔法陣もありがとうございます! カルカルさん……いえ、ディアミドさんでしたね。私はこの魔法石の中にいることに加えて、あなたの熱心な指導のお陰で、少ない魔力で強い魔法が出せるようになったんですよ。ありがとうございます〟


 もがもがと何か喚きながら、布でぐるぐる巻きになったディアミドがじたばたと跳ねる。何とも滑稽な光景だ。


〝そのことには感謝していますし、短い間でしたが一緒にいられた時間は楽しいものでした。それなのに、あの姿は全部嘘だったんですね。残念です。加えて兄さんのことを馬鹿にするような発言。もっと残念です〟

「見つけましたよー! ディアミドさんの身体! だいぶボロボロになってますが、これくらいなら魔法で治せますよね」


 いつの間にかこの場を離れていたらしいソフィーさんが、何かを担ぎながらやってきた。それがディアミドの、本来の身体なのだろう。


「おお、ありがとうソフィー! あー、こりゃだいぶ魔物にやられてるな……。ま、多少欠けてるくらいがこいつには丁度いいだろ。オレ様の身体を奪ったんだから、それくらいの罰は受けてもらわなきゃな~。神罰神罰」


 あひゃひゃ、と笑うトゥタカルタさん。その横でディアミドの身体を見た兄さんが顔を背けた。


(絶対大丈夫じゃない……)

〝あ、あの~、ちゃんと治してあげてくださいね……?〟

「治す治す! 百年後くらいに!」

〝百年経つ前に死んじゃいます!〟

「え? ああ、人間って短命なんだったな。分かった分かった。お前の魔力がなけりゃ捕まえられなかったからな。礼を兼ねてここはオレ様が特別に治してやるよ。ほれ」


 トゥタカルタさんがディアミドの身体に杖を向け、呪文を唱える。私からはよく見えなかったけど、ソフィーさんや兄さんの反応からして元の状態に戻ったようだった。


「よし、こんなもんだろ。ソフィー、それを魔法陣の中に置け。リーアム、お前は一切近づくなよ。邪魔だ」


 トゥタカルタさんの指示に従い、ソフィーさんがディアミドの身体を魔法陣の中に横たえらせ、兄さんは魔法陣から距離を取る。ソフィーさんが魔法陣から出たのを確認し、今度はトゥタカルタさんが中に入る。


「出番だぞキーヴァ。ようやく元の身体に戻る時が来た」


 トゥタカルタさんが剣を拾い上げ、魔法陣の中心に突き立てる。そのついでになおも藻掻いているディアミドを足で押さえ付けた。


「さあ、こいつに最強ではないことを教えてやれ。本当に最強なら……こんなことにはならねぇからなぁ!」

〝はい!〟

「ありったけの魔力を集めろ! そして奇跡を信じろ! 禁忌だろうが何だろうが関係ねぇ! お前には神の加護がついているッ!」


 私は周囲に漂うありったけの魔力を集めんと意識を集中させた。三人分の魂を移動させるのだ。呪文を唱える間に途切れない程の魔力を――!


「行くぞ!」

〝はい!〟


 トゥタカルタさんの魔力も強さを増す。それを合図に私たちは禁忌の呪文を唱えた。



 この世に迷いし魂よ

 我が汝を導かん

 解き放て 器から

 解き放て 魂を

 汝に新たなる器が与えられん

 来たれ我が元に

 来たれ魂よ



 魔法陣を囲むように風が渦巻く。光景が目まぐるしく変化する。風と魔法。二つの圧を感じる。自分がどこにいるのか分からない。詠唱を終えたが、まだ自分は魔法石に閉じ込められたままなのか、それとも元に戻ることができたのか、何も分からない。どこかで自分の名前を呼ぶ声が聴こえた。それが兄さんの声だと認識すると同時に、私の意識は途切れた。

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