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009: 民主主義の誕生――鳴くまで待とう
「遂に、やり遂げた!」
薄暗い城塞の中、ひとりの男が語る。
「もう他の貴族は残っていない」
「眷族も全て抹殺した。残った貴族は儂一人」
「これで、この国の全ては儂のもの」
「うっ、胸が……儂の心臓が……」
表情を苦し気に歪め、その場に倒れ込む。
「何故だ、あと一息で全てが我が手に入るというのに……」
「チーフ!」
ひとりの男が上司の下に駆け込んで来る。
「貴族同士が争って全滅したようです。残ったひとりも病に倒れたとか」
「あぁ、あの辺境伯か。戦は強いが病持ちだったからなぁ」
「これで、指導者は市民が選ぶしかなくなった。直ぐに選挙の準備を!」
「はい、直ちにかかります」
部屋に残された男は溜息を吐き、自分に向けて呟く。
「鳴くまで待とうホトトギス……か、名言だ」