希望は消えないよ!
雨の日、私は透明な傘を広げ歩ていた。
「今日もか....」
その独り言と同時に出た息は白く、悲しそうにえていった。
「やっほ!」
「あ、ノワール。おはよう....」
ノワールはすごくにこにこしている。私はそんなことを気にも留めず、自動ドアを潜り抜ける。
「エリス。大丈夫だよ。私たちはエルフで、永い時を生きるんだから。希望はあるよ」
「そ、そうだね。頑張るよ」
ノワールのその言葉に、私は少し暖かい気持ちになった。
「行こうか」
「うん!」
ノワールはすごいな、同時に芸能界に入ったのにたくさんの仕事があって。
「えーっと私はお稽古だけどエリスは?」
「うん。私も同じ」
ノワールの顔はすぐに明るくなった。
劇団の本番まであと二カ月。今日最初のお稽古だ。
「作品名なんだっけ?」
「確か、『正義』とかだった気がするよ」「そう、ありがとう」
数時間後。
稽古中のことだった。私は原作を読んだことがないから、いらっしゃった作者さんに本を借りて読んでいた。
ノワールは目の前でセリフの練習中。
少し動きをつけて、輝くような芝居をしながら練習するノワールをちらちら見ながら読んでいた。
ノワールの発言に間に合うように、まるでノワールが音読しているかのようにタイミングを合わせて読んだ。
そして、次のセリフを言ったときだった。
「大丈夫です王子様!希望はあります!」
ノワールと王子役の人が喧嘩をしている場面だ。
「いいや!希望なんてないんだ!もう遅いんだ!」
声を荒げて王子は叫んだ。すると、ノワールは言った。
「希望を捨てないで!人間は希望がないと生きられない!いつかきっと努力は報われるから!だから、希望を見捨てちゃダメ!」
その言葉に、その演技に、私は思わず見とれてしまった。初めてなのに、完璧に演技をしたノワールを見て、私は勇気をもらえた。私はこうなりたいって思った。
私も、こんなに輝ける日が来るんだって。そう信じていいんだって。知ることができた。
「まったく、ノワールは昔からすごいな....」
希望を捨てず、生きていく。人間は希望がないと生きられない。
セリフの次にある地の分にも。同じことが記されていた。
私は、希望を見捨てず生きていくんだ。
そう、生きる価値を、生きる意味を見つけた日だった。