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戦う?

ーー目の前にトラックサイズの、狼の様な獣が現れた。


金色の目。白っぽい毛並みはファンタジーでお馴染みのまさにフェンリルって感じだ。だめだ、現実感が湧かない。舌を出しながら、俺と完全に目が合っている。‥こいつ笑っているのか?


ゆっくりと近寄ってくる、その足取りには風格すら感じてしまう。


‥いや!これは完全にやばい!食われるやつだ!

抵抗する?無理だ、絶対無理、逃げるしか無い!どこか逃げ道を!


周囲を見回し、人一人通れそうな穴を見つけるも、遠い。おそらくここから三十メートルは離れている。


あの体格、俺が走り出せば一瞬で間合いを詰め、牙か爪を突き立てるのだろう、その未来しか見えない。


なんだこれ、終わってるじゃん、え、死ぬの?‥いやだ、死にたくない!


突きつけられた現実、一瞬先で訪れる、死という事実に頭が熱くなる、それでも、無駄な足掻きと知りつつも穴に向かって走り出す。どこか他人事の様に、ホラー映画で殺される人みたいだなと思いながら。


「くそっくそっくそっ!」


一歩を踏み出す。背中が裂かれるイメージ、牙で食い破られる錯覚。でも、それはまだ来ない。


振り向く余裕の無いまま必死に穴へ向かい駆けていく、早い!飛ぶ様に走る自分に驚く。これが力か?嬉しい誤算だ!


「行ける!入れる!」


そう思った瞬間、横を強烈な風が吹き、そしてその風、獣が穴の前に立ち塞がった。‥‥こいつ、俺が逃げられるって、希望を抱くまで待っていただけだったんだ!


「お前の遊び道具かよ!俺は!」


悪態を吐きながら急停止、頭の中は少しでもこいつから、死から離れる事しか考えられない。


何度方向を変えて逃げても、その度にこいつはまわり込んで立ち塞がってくる。巨大な影。目の前にそびえ立つ明確な「死」。‥いやだ、死にたくない!


この、獲物の前を塞ぐという遊びに獣が飽きた時、その時が最後なのか?‥俺は死ぬのか?


‥‥まだ手も足もついているし、自由に動けているのに?


‥‥ただ、遊ばれて喰われるのを待つだけの、そんな存在なのか?


それも、いやだ!認められない!


全身全霊で刃向かってやる!殺られる前に、殺ってやる!


先程とはまた別の感覚で頭が熱くなる、自分にこんな激しい感情があったのかという事に驚く。


どこか冷静に、客観的に見ている自分もいる。


それが言う、どうやって?無理だと。


正直、無理なのはわかっている。


だけど!自分がただ弄ばれて、ただ喰われるだけの存在として扱われるのは、そんな死を、選ばされるしか無いなんて、自分で自分を許せない!


だったら!やる!やってやる!!


初めての感情、戦意。それに合わせて、何か流れ込んで来る感覚すらあった。


自らを奮い立たせて足を止め、覚悟を決め、振り向く。


‥でかい、さっきまでは笑っていた様に見えたが、俺が戦う意志を見せた事で睨みつける様な顔に変わった。


低く唸り声を上げ、ゆっくりと近づいてくる。‥飛び掛かってきた瞬間に、ぶん殴る!


集中する。距離が近づくにつれて、凄まじい圧力を感じる‥!


獣を見据える、恐怖はない、震えも起きない、更に距離が縮む。ただ、死ぬ前に殴る。それだけ。


ーーいつだ?いつ動く?血管がはち切れそうだ、獣臭を感じ、視界一杯に獣の姿が収まりきらなくなる、まだ、まだ、動かない、やつの熱量を感じる


ついに、手が届きそうなくらい、獣の鼻先が目の前に降りてきてーー



ーーそのまま横を通り過ぎた



そして、ため息の様な息を吐く獣。


『‥フン、腑抜けた奴なら、今此処で喰ってやろうと思ったが‥ついてこい』


頭の中につまらなそうな声が聞こえた。今、頭の中に直接?この獣の声なのか?


離れて行く獣の後ろ姿を呆然と見ていると、獣が振り向き、また声が頭の中に聞こえた。


『おい!死にたくないならついてこい!』


頭の中に響く声にビクッとなる、しかし、意思疎通のできる可能性に安堵してしまった。どうなるかはわからないけど、ついていく以外に選択肢は無いよな‥



前を行く獣を追いかけるまましばし進んだ先、獣が立ち止まって待っているので、恐る恐る近づく。


『ここから先は離れずについてこい』


気遣ってくれているのだろうか?そう声をかけられ、横に並びながら立ち止まっている先を見てみる。


「うおぉ‥!」


あまりの絶景に、思わずうなってしまった。どこまで続くのか、星のない宇宙の様。途方もなく広がる暗黒の空間が、足場の先から下にも広がっていて、底の見えない穴となっていた。


『こっちだ、穴に近づくなよ、落ちても知らんぞ』


獣の示す方向、穴に沿うようにして道が続いている、道幅は、二車線分くらい⁇の余裕があるが、周りの無限の空間に比べると遥かに頼りない。底の見えない穴は見るだけですくんでしまう。


片側の壁に出来るだけ寄って、慎重に獣の後について行く。獣は先程よりもゆっくりとした足取りで、ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、気遣ってくれている様な気がした。


‥ちょっと落ち着いてきた。

‥目の前にいる、まんまファンタジーのフェンリルみたいな獣はこちらの言葉も通じるのだろうか?話しかけて大丈夫だろうか?


「あの、すいません」


『‥‥‥なんだ』


伝わる‥!会話が出来る!


「あなたは‥ディアマンティーテ‥様の使いなのでしょうか?」


『‥ハス』


「え?」


『俺の名前は、ハス、敬語もいらん。先程、殺し合おうとした仲だろう?そして、それは正解だ』


良かった、予想通りだ!


「は‥わ、わかった、俺は磯島アズマです‥だ。ディアマンティーテ様、暇つぶしがすぐに終わったらつまらないって事です‥だよな」


『‥それは少し、違うが、ねぐらへ連れて行って、此処、魔境で生きる方法を教える様、命ぜられている』


「それはありがたい!」


『‥まあ、戦う気概も無い奴なら、此処で生き延びる事などはなから無理だ、その時は一思いに喰ってやろうと思っていたんだがな』


「それは‥」


『‥先程お前が見せた戦意は悪く無かった』


「どうも‥」


あの時、戦うという意思を見せなかったら本当に終わっていたのか‥‥やばかった。


『‥まだしばらくは歩く、ついでに聞きたい事があるなら答えてやる』


「あ、ありがとう!」


それは本当に助かる!

しかし、こうして迎えをよこして面倒を見てくれると、こんな状況を作った張本人?の邪神にも、感謝の気持ちが湧いてしまう。


ーー死にたくない、生きていたい。どんな状況であったとしても。


その為の情報が欲しい。


「此処、魔境とは、どの様な場所なんだ?」


『ーー此処はディアマンティーテ様の御坐す、大地の深奥、弱肉強食の地、魔境。人の世界では邪神の支配する禁足地とされている』


「‥‥人の世界と言うと、此処には人もいるのか?」


『いるぞ、魔境の外にはな』


「魔境にはいないと‥」


『どこかから来て、浅い所にいるのを見かけるか、深入りしすぎて死んでいるかだ』


「どこか!魔境の出入口があるんだ!そこまで連れて行ってもらう事は?」


『‥俺はそれを命ぜられていない、行きたければ自分で勝手に行くがいい』


「そうか‥」


『ひたすら上を目指せば、そのうち着くぞ、途中死ななければな』


見上げると、片側の垂直な壁がどこまでも続いていそうに見える。道の反対側は、変わらず、上も下も暗闇がひたすらに広がっていた。


「果てしないんですけど‥」


『‥まあ()()が定まるまで7日間ある、それまで鍛えあげてやる、その後は知らん』


そうだ‥部屋‥!邪神も言っていた、力の源泉‥!


「その、部屋って言うのは一体?」


()()は、この世界で生まれたもの、誰しもが持つものだ、お前ーアズマも、ディアマンティーテ様に開いて頂いたのだろう?例外的だが、お前はその時に、この世界に生まれたという事だ』


「力を与えてやると言われたけど‥」


『‥それはお前次第だ、意志こそが力、魔素を部屋に呼び込み、部屋の主の意思に答えて形をなす、部屋とはその力の器だ』


「魔素?」


『ああ、それはーー止まれ』


急にハスが会話を中断し、空気が変わった。緊迫した先程の戦いの時の様な空気を感じ、周囲を見回す。


どこからか振動が聞こえる、地面が揺れ、振動が大きくなってくる!


『上だ!』


「うわおおおっ!」


真上から壁面を転がる様に!大岩が降ってくる!やばい!


『ちっ!』


「うわおおお!」


ハスに喰われ‥!いやくわえられて、落下地点から外れ、ぺっと吐き出された、同時に馬鹿でかい落下音、凄まじい衝撃と土埃が全身を打ち付けてくる!なんだこれ!ハスは‥落下地点を睨んでいる?


『ちっ‥なんでお前がいる』


土埃の中、大岩が‥動き出した?と同時に、地の底の怪物の様な声が頭に響く


『ハァアアアスゥウウウウウ!!』


今度は正真正銘、怪獣が現れた


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