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始まり

ーーー暗い中で何かが言った



ようこそ磯島アズマ。お前は召喚された


憧れの剣と魔法の異世界だぞ、嬉しいだろう

私もお前に会えたことは幸いだった


お前の35年間の、此処とは異なる世界での記憶、読み物として実に面白い、大いに楽しませてもらった


だがな、お前にとっては残念な事に、早くて数年といった所か、この世界は滅びを迎える。抗いようのない滅びだ


世界を救ってもらう為に呼んだのではないぞ?

どうにかなる域はすでに越えている


ロープレで終盤、もったいなくて取っておいたアイテムを使ったりするのだろう?私もそのタイプでな、終わる前にそれを使ってみたら、なんと異世界召喚が出来たという訳だ


創世より役割を果たし続け、そして終わろうとしている私をほんの一時でも楽しませる事が出来たのだ、よくやってくれた


後は特に用は無いのだが、折角だからもう少し楽しませてくれ、ちょっとしたサバイバルゲームをやってもらおう


この私の領域、魔境と呼ばれるこの世界では、そこかしこに死が溢れているからなあ、お前は必死にそれらに抗い、生きあがこうとする様を見せてくれれば良い、ちょっとした不運か、力及ばすか、もしくは理不尽な何かによってか、そうやって死んだらゲームオーバー、コンティニューはありません、人生は一回きりだからな!後わずかな一時の暇つぶしにはなるだろう


勝手な事をと思うか?

お前を呼んだ存在を誰だと思う?

もう目は開けられるはずだ、ほんの少し目を開けて目の前を見てみろ、直視はするなよ、さあ、これが私、邪神と呼ばれる私、ディアマンティーテの姿だ



ハハハははは!

吐くのを堪えろ!次いつ食べ物にありつけるかもわからんぞ!簡単に死なれても困るのでな、異世界召喚のお約束だ、力を授けよう、これからお前の部屋を開いてやる、この世界での力の源泉となる概念だ


ああ、この蝶も部屋に入れてやる、インテリアだから籠からだすなよ?


さて、やる事もやったからお前が正気を失う前に此処から出してやるとしよう、次に目を開けた時が始まりだ、がんばって生きてみてくれ!



ーーーーーー


ーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーー


「うわっ!何時!」


目が覚めたと同時、上体を起こした俺はとっさにスマホを手探りで探す、しかし周りは真っ暗、布団も無く、スマホを探す手からはゴツゴツした岩肌の感触が返ってきた、自宅でないのはあきらかで、同時に寝ぼけていた意識もはっきりしてきた


「夢じゃ、なかった‥」


邪神ディアマンティーテ。サイズとかではなく、存在が本当に大きすぎて、自分が服に付いた糸くずにでもなったかの様で、鼓動する事すらはばかられるくらい、微動だに出来なかった。きっと目ざわりな糸くずははたき落とされるだろうから。


そしてあの時、命ぜられるままうっすらと開けた目にチラリと映ったのは、美しく、何人も侵さざる神聖な女神、それをまるで煮詰めた悪意で冒涜し、汚し、歪めた成れの果てのような、チグハグで矛盾した存在。


ーーーうぅぅ、吐き気が込み上げる。きっとまともに考えてはいけない、見てはいけない、もし直視していたら正気ではいられなかった。そう確信させる存在だった


「そうだ!それより!」


邪神の言った事が確かならば、俺が今いるのは地球、現代日本では無く、異世界、魔境、そこら中に死の危険がある世界。


「そして、元の世界には帰れない‥?」


確かに、ブラック企業勤め、独身、中年で、いい事なんて何も無さそうだけど、それでもそれなりにやってきたのに、突然連れてきて、記憶を読んだら用済み?

もののついでに、後は死ぬまで生き足掻いて楽しませろ?


「くそったれ‥‥!ふざっけるなよ!」


塵芥の存在なのは思い知らされたけど、でも、なんなんだよこれは、怒り、悲しみ、恐怖、諦念、感情が押し寄せてきて頭の中がぐちゃぐちゃだ、四つん這いになって、地面をただ叩く、痛い‥‥地面が少し削れた


削れた?岩肌の地面が、素手で?


「そうだ、力を授けるって言ってた‥」


確か、俺の部屋を開くって、この世界の概念って言ってたな、それがこれか?肉体の強化?痛みはあるけど‥


地面に八つ当たりした結果を見て、少し落ち着いてきた、状況を理解しようと頭が働いているのを感じる、そうだよ、落ち着こう、まず状況を整理しよう、死にたくないから、生きる為にどうするか、まず考えるんだ


四つん這いのまま辺りを見回すが、地面は岩、周りは真っ暗、光源もないけど、何故かうっすらと周りが見える、これも力の一つか?ある程度開けた空間なのを感じる、ここは洞窟の中とかか?空気はある、呼吸出来てる、温度は‥暑くも寒くも無いな、と言うか、服を着ていない事に気がついてしまった、俺は身体一つで召喚されたのか‥静かで、周りで何か音がする事も無いな‥


邪神の話も整理しよう、まず、俺は異世界に召喚された(すっ裸で)、それも早くて後数年で滅びるらしい、すでに手遅れの世界に。何がどう手遅れで滅びるのかはわからない。

そして記憶を読まれ、後は用済みとばかりに邪神の領域、死と隣り合わせの、魔境と呼ばれる世界に放り出された。楽しませろと言っていたし、どこかしらで見ているのかもしれないけど、あの感じでは助けてくれる事は無いだろうな‥


後、今生きる為に一番重要な事、邪神から与えられたこの世界の力の概念、部屋。俺の部屋を開いたって言っていたけど、それがなんなのか全くわからない、ステータス的な物か?


「ステータスオープン」「システム起動」「ウィンドウ表示」「開け」「闇よ」、ーー、ーー、ーー‥


‥とりあえず色々言ってみたけど、特に何も起こらない

‥今の所は、素手で岩が削れるくらいの力(痛いけど)

真っ暗でも周りが少し見えるというのは明らかだと思う、あ、そう言えば、確か部屋に蝶を入れておいてやるって‥


そう、蝶に意識を向けようとした所で、正面の空間が何か動いた様な、闇が濃くなってくる、向かってくる様な感覚があった。咄嗟に物音を立てないように中腰になり、正面を注視する。何故か緊張感が高まってくる、目が慣れて来たのか視界正面の地形が分かってきた。トラックが通れそうなくらいの岩で囲まれた通路だ。それが少し先で曲がっているのがわかる。そしてそこから濃い闇が流れてきているのも。


そこから目が離せない、何かがくる前兆としか思えない、邪神の言っていた、そこかしこに溢れる死という

言葉を思い出す。そうだ、おそらくこれがそうだ、逃げる?どこへ?目を離すのか?無理だ

何か現れる予感を感じながらも身動き出来ないまま、ついにそれが現れた


まず見えたのが足、毛が生えている。犬とか、そんな感じの足だ、それが曲がり角からすっと現れた、でもおかしい、違和感があるのだが、それは次に、狼の様な頭が出てきた瞬間に理解出来た


曲がり角から出てきて、全身を現した姿はまさに狼だった。

ただし、トラックが通れる通路、その通路一杯の大きさの。


そんなトラックサイズの狼が現れた。


初投稿です、読んでくださってありがとうございます

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