悪天候?なら、晴れにすればいい
最初に旅だ。
素晴らしい天候、ゆったりとした飛行機の旅
…になるはずだった。
「皆様、当機は現在嵐の中を飛んでおります。激しい揺れにご注意ください。」
出発したばかりの頃はワインを愉しんでいたのだが、
もともと、大雨警報が発令されており、こうなることは予見されていた。
勿論、普通の乗客なら我慢する。
でも、俺は神だ。
それも向こうの世界では人族どころか魔族ヲ合わせたとしても最強の魔道士だった。
魔法神に認められてたんだから間違いない。
だから、俺の場合、こう思う。
「悪天候?なら、晴れにすればいい。」
俺は他の乗客に聞こえないように、小さく呟くように魔力は見えないようにして…
『暗雲が立ち込め、烈風が荒れ狂う。我が意思は、清らかな光に導かれんことを願う。嵐よ、静まれ。晴れ渡れ。我が魔力よ、その力を解き放ち、風を鎮め、雲を晴らせ。光を求める者の願いを叶えん。クリア・スカイ!』
別に大した魔法ではない。
攻撃魔法でもないからね。
作ったのも暇つぶしの一環。
外でのんびりしたかった日に曇ってきたから作った。
向こうでは俺が魔法を作るのも使うのも日常だった。
だから、特に反応も薄かったが、こちらは違う
乗客たちは窓から差し込む太陽の光に驚愕し、
左右の窓に駆け寄る。そして、ビジネス、エコノミークラスの方から歓声が聞こえる。
こちらのファーストクラスでも、駆け寄りはしないものの、多くの乗客が驚いているようだ。
「さてと…寝るとするか。」
俺の旅は始まったばかりだ。