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ベトナム戦争シーン①(プラトーン風)


ヘリコプターがガクンと揺れた瞬間、僕の心臓はまるで喉元にまで飛び出しそうだった。ローターの音が


 鼓膜を突き破り、振動が骨の髄まで響く。降り立った瞬間、砂埃が舞い上がり、視界が茶色に染まる。僕たちはベトナムの高地に降り立った。鬱蒼としたジャングルと険しい地形が、まるで戦争の厳しさそのものを象徴しているように広がっていた。


 地面に降り立つと、足元の湿った土がむにゅっと沈む感触が伝わってきた。鼻には、植物の青臭さと腐葉土の匂いが混ざった湿った香りが広がる。ジャングルからは鳥や虫たちの鳴き声が響き、時折風が木々を揺らす音が耳に心地よく届く。


「ここで陣地を築くぞ」と、バーンズ軍曹が無愛想に命じた。彼の声は、どこか遠くから響いてくるように感じた。僕たちは無言で、砂袋を積み上げ、防御陣地を整えるために動き出した。

シャツは汗でぐっしょりと湿り、肌にべたつく。太陽の光がジリジリと照りつけ、熱と湿気が僕の身体を重くする。汗が目に入り、口に塩辛い味が広がった。手に握ったシャベルが、湿った土にずっしりと沈んでいく感触が伝わる。


「クリス、そっちのミート・パイと交換してくれないか?」と、ラーダーが声をかけてきた。彼の目には少しばかりの疲労が滲んでいた。「いいよ」と言って、僕は自分の缶詰を渡す。ラーダーはにやりと笑って、「ありがとう。そっちの方が食べたかったんだ」と言いながら缶詰のフタを開けた。


 陣地を整えた後、僕たちはそれぞれの場所で短い休息を取った。ジョンソンは黙々とシャベルを振るい、土を掘り続けている。彼の額には汗が滲み、背中には汗で貼り付いたシャツが見える。彼は掘り返した土の匂いと、ジャングルの湿った空気を感じながら、一心不乱に作僕はポケットからタバコを取り出し、火をつけた。煙が口からゆっくりと立ち上り、甘苦い香りが鼻をくすぐる。煙を一口吸い込むと、その苦味が肺に広がり、心が少しだけ軽くなった気がした。目の前のジャングルの先には、何が待っているのか分からない。その不安が胸の奥で渦巻き、次第に焦りが募っていく。


「クリス、何を吸ってるんだ?」と、クラークが尋ねた。彼は地面に座り込み、缶詰を開けて中身をかき混ぜている。彼の額には汗が滲み、手元の缶詰からは温かい食べ物の香りが漂ってきた。

「ただのタバコさ」と、僕は肩をすくめて答えた。煙草の苦味と湿気の混ざった空気を一緒に吸い込みながら、目の前の状況を観察する。


高地の見晴らし台に腰を下ろし、一息ついた。タバコの灰を落としながら、遠くの景色を眺めた。ジャングルの向こうには、何があるのか誰にも分からない。その不安と期待が入り混じった思いが、胸に渦巻いていた。


「どんどん掘れ」と、バーンズ軍曹が静かに命じた。その声には、戦場での経験からくる重みが感じられた。会話には、疲れた笑いと、次に何が起こるか分からないという不安が混じっていた。


 太陽が沈みかけると、ようやく休息の時間が訪れた。タバコを吸いながら、ジャングルの静けさに耳を澄ませた。風が木々を揺らし、その音が心地よく耳に届く。この静けさが、戦場の一瞬の安らぎであることを僕は知っている。



登場人物名はあくまでも仮称です。シリーズで一定していません。

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