戦車工場
工場の生産ラインの最後に控えるのは、塗装工程の部屋だった。そこで待つのは、今しがた組み立てを終えたばかりの武装兵員輸送車。陸上自衛隊特有の迷彩パターンが、この金属の巨体に命を吹き込むための最後の仕上げとして施される場所だ。
白い防塵服に身を包み、溶剤を吸い込まないようマスクを着けた作業員たちがスプレーガンを構え、一歩一歩塗装を進めていく。オリーブグリーン、ブラウン、そして濃いグリーン。日本の樹林や山岳地帯に自然に溶け込むことを意識した迷彩カラーが、作業員たちの熟練の手で車体に吹き付けられる。その手さばきはまさに職人技。塗料の微妙な角度と圧力を調整しながら、鋼鉄の表面に緻密なカモフラージュパターンが描き出されていく。
少し離れて見れば、その迷彩模様はプラモデルの塗装を連想させるような繊細さを持っている。防錆用の赤茶色に覆われた無骨な鋼鉄の塊は、瞬く間に日本の野山を走り回る戦闘車両へと変貌を遂げていく。さっきまで、ただの金属製の重機のように見えたこの装甲兵員輸送車が、迷彩が施された途端に威圧感をまとい始めた。見た目が変わるだけで、これほど人の意識を揺さぶるものかと、三村は驚きを隠せない。武器としての迫力が、迷彩塗装だけでこんなにも表現されるとは、想像以上だった。
だが、この「見た目」による威圧感こそが地上戦で重要な意味を持つ。戦場で敵兵がこの迷彩の戦闘車両を目にすれば、ただの移動手段以上の何かがそこにいることを本能的に感じ取るだろう。見慣れた訓練場では当たり前のように目にするこの迷彩パターンも、こうして一台一台に施されるたび、戦場の緊張感がリアルに蘇ってくる




