表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/173

港湾(核弾頭)

巨大な鋼鉄製の円筒形構造物が、ゆっくりとガントリークレーンによって陸揚げされていく。その冷ややかな灰色の外観は、晴れ渡る港の空気の中で異様に目立っていた。円筒の表面は鈍い光を放ち、ただの金属製コンテナには見えない。港の作業員たちは黄色いヘルメットをかぶり、何事もなかったかのように淡々と荷揚げ作業を進めているが、その視線にはどこか張り詰めたものが感じられる。


この巨大な容器を運んできた船はベネズエラ籍で、青い船体がカリブ海を思わせる穏やかな雰囲気を醸し出している。しかし、岸壁に吊り下ろされている金属体だけは異質だった。円筒形のコンテナは厚みのある台座にしっかりと固定され、四隅から太いワイヤーが延び、クレーンに接続されている。クレーンのモーター音が低く唸りを上げ、容器を徐々に地面に近づけている。


岸壁には、これから容器を積載するための特殊な重トランスポーターが待機していた。車高は極端に低く、まるで上から押しつぶされたかのような平らな形状をしている。その車体は水色で、一見するとただの民間車両のようにも見えるが、その積載能力は常軌を逸していた。陸上自衛隊の90式戦車を軽々と3台も輸送できるその車両は、民間からリースされたものを装っているものの、並々ならぬ威圧感を放っている。


しかし、この場で働く作業員も、その見かけ上の民間トランスポーターも、すべてが偽装だった。実際には、彼らは陸上自衛隊の精鋭部隊に属する隊員たちであり、政府の極秘任務に従事している。正確に言えば、この輸送は内閣直轄の特別任務であり、完全に秘密裏に行われているものだった。そして、彼らが手にしているのは、ひとつの極めて危険な「荷物」だ。


それは、日本初の日本製核弾頭。この冷たい鋼鉄の輸送カプセルの中には、核の炎を秘めた破壊の象徴が収められているのだ。徹底した保護が施された容器であれど、その中身がただならぬ存在であることを、この場のすべての者が理解していた。


「搬送準備完了、移動開始します!」作業員の一人が無線で告げると、トランスポーターのエンジンが低く唸りを上げた。操作を担当する兵士たちは表情を変えず、機械的に作業を続ける。核弾頭という途方もない荷物を運ぶ任務に、一切の感情を挟むことなく、ただ無言で動き続ける。その冷静さと、全員の隠された緊張が、この場の空気をさらに重くしていた。


クレーンがカプセルを慎重にトランスポーターの荷台に降ろすと、その静寂の中で、重々しい金属音が響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ