港湾(核弾頭)
巨大な鋼鉄製の円筒形構造物が、ゆっくりとガントリークレーンによって陸揚げされていく。その冷ややかな灰色の外観は、晴れ渡る港の空気の中で異様に目立っていた。円筒の表面は鈍い光を放ち、ただの金属製コンテナには見えない。港の作業員たちは黄色いヘルメットをかぶり、何事もなかったかのように淡々と荷揚げ作業を進めているが、その視線にはどこか張り詰めたものが感じられる。
この巨大な容器を運んできた船はベネズエラ籍で、青い船体がカリブ海を思わせる穏やかな雰囲気を醸し出している。しかし、岸壁に吊り下ろされている金属体だけは異質だった。円筒形のコンテナは厚みのある台座にしっかりと固定され、四隅から太いワイヤーが延び、クレーンに接続されている。クレーンのモーター音が低く唸りを上げ、容器を徐々に地面に近づけている。
岸壁には、これから容器を積載するための特殊な重トランスポーターが待機していた。車高は極端に低く、まるで上から押しつぶされたかのような平らな形状をしている。その車体は水色で、一見するとただの民間車両のようにも見えるが、その積載能力は常軌を逸していた。陸上自衛隊の90式戦車を軽々と3台も輸送できるその車両は、民間からリースされたものを装っているものの、並々ならぬ威圧感を放っている。
しかし、この場で働く作業員も、その見かけ上の民間トランスポーターも、すべてが偽装だった。実際には、彼らは陸上自衛隊の精鋭部隊に属する隊員たちであり、政府の極秘任務に従事している。正確に言えば、この輸送は内閣直轄の特別任務であり、完全に秘密裏に行われているものだった。そして、彼らが手にしているのは、ひとつの極めて危険な「荷物」だ。
それは、日本初の日本製核弾頭。この冷たい鋼鉄の輸送カプセルの中には、核の炎を秘めた破壊の象徴が収められているのだ。徹底した保護が施された容器であれど、その中身がただならぬ存在であることを、この場のすべての者が理解していた。
「搬送準備完了、移動開始します!」作業員の一人が無線で告げると、トランスポーターのエンジンが低く唸りを上げた。操作を担当する兵士たちは表情を変えず、機械的に作業を続ける。核弾頭という途方もない荷物を運ぶ任務に、一切の感情を挟むことなく、ただ無言で動き続ける。その冷静さと、全員の隠された緊張が、この場の空気をさらに重くしていた。
クレーンがカプセルを慎重にトランスポーターの荷台に降ろすと、その静寂の中で、重々しい金属音が響いた。




