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深夜都内

深夜の都心。眠らない街の繁華街では、途切れることなく車のヘッドライトが流れ続けている。白い光の点が二つ、首都高のビルの谷間を曲線を描くように連なり、途絶えることなく行き交っている。光に浮かぶ黒いシルエットの車内には、さまざまな物語が詰まっているのだろう。仕事を終え家路につく者、仲間と一杯ひっかけに行く者、あるいはこの時間から新たな打ち合わせに向かう者――しかし、夜の首都高は、それぞれの人生を押しつぶし、彼らの個性を無機的な車列の一部として埋没させてしまう。ただ暗い灰色のアスファルトを走る車の影だけが見え、行き交う車のテールランプの赤い列が途切れることなく続くだけだ。時折、車が減速するたびにブレーキランプが点灯し、赤い光が一瞬だけ鮮やかに輝く。その無機質な光が、一瞬だけ個性を主張しているかのようだが、またすぐに流れの一部へと溶け込んでいく。


街路樹も、煌びやかな広告看板も、昼間とは異なり色を失い、闇に沈む。首都高を走るのは乗用車だけではない。物流を支える大型トラックが、北から南へ、南から北へと走り続けている。無表情のサラリーマンが吊り革につかまる深夜のバスの横を、5トントラックが勢いよく追い越していく。どの車両も目的地へと急ぎ、ただ同じ方向に向かう光の帯を形成している。


しかし、誰が気づくだろうか。今夜、その車列の中にひときわ異質な存在が紛れ込んでいることに。車体は大型トラックと変わらぬ大きさだが、どこか威圧感を漂わせている。モスグリーンに塗装されたその車両は、通常のトラックとは異なる7桁のナンバーを掲げ、無骨で頑丈な作りをしている。車高も通常より高く、見た目だけで軍用であることを暗示している。その車両が歩道橋の下を通り過ぎるとき、街灯の光が一瞬だけその鋼鉄の車体を照らし出した。見る者がいれば一目でわかっただろう。これは軍用車両、陸上自衛隊の装備車両だ。そして、その荷台には、最新鋭の地対空ミサイルが搭載されているのがうっすらと見えた。


この夜、通常の物流車両に交じって、彼らは東京の空を守るために緊急展開している。どこか遠くで起こりうる弾道ミサイル攻撃に備え、深夜の首都高を静かに滑走しているのだ。ビルの谷間に溶け込み、周囲の無機質な光に紛れながら、その車両はひたすらに目的地へと進んでいく。都会の夜景に灯る光の一つとして、誰にも気づかれることなく、ただそこにいること自体が抑止力であるかのように。

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