エンジンストール(F16ファイティングファルコン)
ジョンは高高度での飛行中、突然、異常なエンジンの振動を感じた。「これはまずい…エンジンのストールか?」慌てずにスロットルをMILに戻しアフターバーナーから手を離した。
突然機体は深い失速に陥り、ジョンはそれをすぐさま感知した。ディープストールでは、機体が安定してピッチ運動が少ない場合もあれば、大きなピッチ、ロール、ヨーの動きを伴うこともある。特に、センターラインに300ガロンの燃料タンクを搭載していると、機体はピッチアップ時に右へ、ピッチダウン時に左へとローリングとヨーイングを繰り返す傾向がある。
「冷静に、状況を把握しろ」とジョンは自分に言い聞かせる。彼はヨーレートリミッターとラダーオーソリティリミッターが自動的にアンチスピン制御を提供していることを知っていた。しかし、25,000フィート以上の高度でのヨーの逸脱は特に危険だ。センターラインストアや吸入口に取り付けられたポッド、300ポンドを超える横方向の非対称性がある場合、スピンに陥る可能性が高まる。
突然、機体が激しく振動し始めた。スピンが始まったのだ。ジョンは高いヨーレート(毎秒70~100度)で回転する機体を体で感じながら、スピンからの回復手順を頭の中で確認する。「ヨーレートが収まるまで待つしかない。20~30秒か」
ジョンはヨー方向と反対のラダーを使用し、回転を止めるための操作を開始した。機首の動きを見ながら、適切なラダー操作を行う。彼は冷静にターンニードル※1を見つめながら、正確な操作を続けた。
次に、ジョンはMPOスイッチ※2をOVRD※3に設定し、機体を揺さぶり出すための操作を開始した。水平尾翼を使用してピッチ振動を強化し、ディープストールAOA(迎角)以下にAOAを減少させるための機首下げピッチレートを生成する。「ここが正念場だ」ジョンはスティックを引き、機首の動きを追いながらピッチロッキングを続けた。
航空機は徐々に安定を取り戻した。
「やった、回復したぞ」とジョンは歓喜の声を上げた。機体が再び安定し、彼は冷静さを取り戻した。エンジンの再始動も成功し、航空機は正常な飛行状態に戻った。「まだ飛べる」とジョンはやっと安どの吐息をもらした
※1ターンニードル:航空機の計器の一つで、航空機のヨーイング(左右の回転)速度を表示します。通常、ターン・アンド・スリップインジケータやターンコーディネーターに組み込まれており、パイロットが機体の回転運動を視覚的に把握するために使用されます。
※2MPOスイッチ:航空機の操縦システムの一部で、通常の自動制御を無効にして、パイロットが手動で機体のピッチ(上下方向の動き)を制御するためのスイッチです。このスイッチは、特に深い失速やスピンなどの緊急時に使用され、通常の制御では回復が難しい状況での操縦を補助します。
※3Override:航空機の制御システムや計器の一部を通常の自動制御から手動制御に切り替えるための機能を指します。OVRDスイッチを使用することで、パイロットは特定のシステムや機能を手動で操作し、緊急時や特定の状況で必要な制御を行うことができます。




