◆ 神子達錬剣
デンデラ龍は叩きつけられた石垣から、残った三隻の船をにらみつけた。三隻それぞれがいちいち癇に触る攻撃を仕掛けてくる。
デンデラ龍は再度の攻撃を仕掛けようと空中に舞った瞬間、視界の端に何かを見つけた。デンデラ龍に向かって足元のおぼつかない老人が歩いてきている。それはいい、別段気に留めることは無い。
しかしその老人が持っている棒状の物……あの時の神剣!
あれは危険な物だ! なぜ今日は次から次に鬱陶しい物が現れる? あわてて空中で目標を変更するデンデラ龍、その眼にはその場に座り込み刀を抜く老人の姿が映った。ヤバイ、あの動作を終えた後に何か面倒な事がおこるに違いない。デンデラ龍は素直な直感に従い、老人の行動を阻止するため全力で突進する。
「うっ……」
と、いうため息にも似た一言を残し、老人は神剣での自害を終える。老人とデンデラ龍の距離はあとほんの二メートル、コンマ何秒かの差でその儀式は終わった。老人が胸につきたてた剣から、明るい光が目の前のデンデラ龍に延びる。
その瞬間、デンデラ龍の体は老人のそばからパンとはじかれ悶絶し始める。まるで死に絶えた小さな老人からデンデラ龍が弾かれた様にも見えた。
「ググ……」
空中で暴れながら呻くデンデラ龍。突如デンデラ龍の身体上半分が爆ぜる。
ボン、ボボボン、ボン、ボボボボボン!
爆発したという感じではない。デンデラ龍の身体に小さな泡が無数に浮かび上がり、その泡は小規模に連続して破裂している。
大きな花火がドカーンと爆発したような音ではなく爆竹が絶え間なく、鳴り続けるような印象だ。まるでお盆のお墓参りのような喧騒さを奏でている。(長崎には墓参りの時に花火で霊をもてなすという中国風の習慣がある)
ボボボン、ボン、ボボボボン。
身をよじらせ悶絶するデンデラ龍。体中から噴出す無数の爆煙がその姿を隠す。煙の中から光があふれ始める。
煙ごと弾き飛ばすほどの大爆発。デンデラ龍の上半身は大爆発をおこし四散した。
「やったなタヌキさん……」
デンデラ龍の爆発に応酬丸が言葉を漏らす。
「タヌキさん?」
「ええ、あれは最後の御神剣、神子達錬剣の行った魂混です」
神子達錬剣のたどり着いたデンデラ龍への対抗策は、内部からの誘爆だった。この魂混を成功させるために自身への厳しい修行と『徳』の高い魂を必要としたのだ。
江戸期での戦いでデンデラ龍の内部に侵入出来る事はわかっていたが、その後どうやって致命傷を与えるかが神子達錬剣のテーマだった。神子達錬剣は以前の経験を元に、出来うる限り深く侵入してデンデラ龍を内部から破壊する作戦を取った。そしてその結果はささはるたちの目の前で現実として現れる。デンデラ龍は上半身を魂混で吹き飛ばされたのだ。
ささはるにはこの爆発の瞬間、何かが見えた、いや何かを感じた。空中に力なく漂うデンデラ龍の下半身、四散した上半身は肉片となって海面にボトボトと落ちている。そのまま下半身が力を失えば、この戦いは終わる事になるだろう。波止場から水辺を見つめるささはる。
一分経過……
二分経過……
その間も空中の下半身に向け時折、警備船ほうおうがバルカン砲の掃射を行う。空中の下半身が弱々しく動き始める。下半身の吹き飛んだ傷口、紫色の体内から小さく青い光が海面を照らす。海面に落ちた肉片は小さなボール大の魂になって再び下半身の青い光に向かって集まっていく。集まった魂は次第に輪郭を整えデンデラ龍の上半身を構成する。最後に強烈な青い光をパッと放ちデンデラ龍は再生を完了した。




