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【矛盾】最強の盾VS無敵の矛
市場で商人がお客さんに商品の説明をしています。
「これは最強の盾だ! 鉄壁にして堅牢! 偉大なる鬼神の大群さえも、この盾の前には己が無力を噛みしめることとなろう!」
商人は別の商品を取り出します。
「これは無敵の矛だ! 鋭利にして無慈悲! 邪悪な力を秘めた一閃は、星の軌跡さえも切り裂くことができる!」
客が尋ねます。
「では、その矛でその盾を突くとどうなるのですか?」
「ほう? 知りたいのか?」
商人は意味ありげな表情を作ります。
「過ぎたる智は禍を招くというのに……。愚かな輩め」
「ふん、何とでも言うがよい。我は英知の僕。求知心の鎖に繋がれた囚虜なのだ」
本性を現わした客に向かって、商人は矛と盾を渡しました。
「賢き愚者よ。覚悟があるなら、その目で確かめてみよ。我が盾と矛によって引き起こされる終末の日を……。……お買い上げ、ありがとうございまーす!」
盾と矛を抱えて嬉しそうに去っていく客を、商人は笑顔で見送りました。