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カワウソさんの異世界ワンダリング!  作者: カワウソおじさん
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第十一話 さばいばるにっし さん

――5日目


 本日は朝から魚を食う。

 捕まえる傍から踊り食いじゃあッ!

 うん、そうしないと空腹でやばいんだ。やっぱりマナを使い過ぎるとお腹が空くみたい。

 食っては岩場で休みを繰り返すと、お日様は中天、昼になっていた。


 さて、である。

視線の先には、コアリクイの死骸。

 このまま放っておくと、腐敗し雑菌の温床となる。

 腐敗臭や病気の元となるため、放置はナシだ。

 嗅覚の敏感なカワウソさんの平穏のためにも、である。


 解体は……刃物も、知識もないので無理だ。カワウソさんの小さい爪ではとてもできそうにない。

 ん?爪?


 コアリクイを見る。

 その前肢の先には、鋭くてバカみたいに固い鈎爪。

 あれって、道具として活用できないだろうか?ナイフってサバイバルの必需品だし。


 近付いて、爪を引っ張ってみる。

 当然抜けないわけで。

 川辺に戻り、手頃に尖った石と、丸くてそこそこ重い石を持ってくる。

 爪の根元に尖った石を押し当て、上から丸石で叩く。

 繰り返すうちに、徐々に皮膚や肉が削げ落ちてきた。


 あ、なんか楽しくなってきた!

 本日も本能さんはブレないようである。


 気が付くと、一番大きい爪の根元に、関節が露出していた。

 そこに石を差し込み、叩く。

 おお、キレイに爪が外れた!


 あとはその大爪で皮膚と肉を裂いていく。

 うわー、抵抗なくスパッと切れちゃう!


 ここからは簡単で、前後肢併せて18本の爪と、前肢の骨を採取した。

 それにしてもコアリクイさんの骨、白じゃなくて真っ黒だったよ。

 付着した肉は、爪で骨ごと削るようにして落とし、川に石で作った囲いを作って、今は水に曝している状態だ。


 他の部分は一生懸命地面を掘り掘りして、埋めた。

 カワウソさん、意外と穴掘りも得意なのである。知ってびっくりだったよ。


 うん、今日はこのまま道具類を充実させよう!


 細めの蔦を集めて、噛み合わせた奥歯を通して平たく潰す。そのまま縒り合わせて、即席の紐を作った。

 つくづく、手先が器用なカワウソで良かったと思う。

 遊び感覚で紐を量産していく。

 どうもカワウソという生物は、遊びと認識すると夢中になってしまうらしい。


 次は太くて強そうな草の茎に、嚙み潰したを蔦を一本一本結びつける。

 なるべく隙間なく数十本ほど結びつけた。

 あとはそれを縦糸として、交差させながら横糸を通していく。

 気が付くと、蔦製の1枚のシートが出来上がっていた。

 最後に、縦糸の端を、もう1本の草の茎に結び付ける。

 ちょうど、掛け軸のような形の出来上がりである。

 あとは太い茎同士を重ね合わせて、横糸同士を結んでいく。


 簡易的な袋が出来上がった。

 最後に、重ね合わせた2本の草の茎の両端を、1本の蔦紐で結ぶ。


「できた……」


 肩掛け式のバッグ。


 これでちょっとした物の保管や、持ち運びが出来る!

 別に長持ちさせる必要は無いので、蔦で充分。素材も時間もあるんだし、壊れたら作り直せばいいのだ。

 嗚呼、素晴らしきかな大自然!



――6日目


 本日は通常営業。

 いつも通りに魚を岩場に並べるところから始まる。

 しかし困った。

 今日は豊漁で食べ切れない。

 沢蟹をヒョイと捕まえてガジガジしながら、はてどうしたものかと悩む。

 カニはおやつ。初めて食べた時は日本人の部分が食感を全力で拒否していたが、泥臭さの中にある芳醇なうま味が堪らなくクセになった。


 さて、釣り人が大漁の時にどうするか?


 答えはご近所へのお裾分けである。


 この場合、カワウソさんのご近所さんと言えば、『マッパのあの人』である。

 あ、ついでに、声以外のマナの使い方も教えて貰えたら……よし!


 お裾分けが、袖の下に変わった瞬間だった。

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