表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

救急?

作者: 空翔

 がたがたがた! 痛々しい音と共に俺は会社の階段から転がり落ちた。

「いってぇなぁ」

 俺は起きて頭をさすった。腰に激痛がする。いってぇ。まぁ流石にこんなので病院はダメかぁ。

 俺はそう思い何もなかったように家に帰り出した。背中がじんじんと痛かったが、気にせずに帰った。

 事件が起きたのは丑三つ時、深夜二時だった。なかなか寝れないでいると、急に身体中を駆け巡る激痛がした。体が動かないほどの激痛に、俺は耐えようともしていたが、一分ほど経って、無理だと気づいた。最後の望みとして119に電話した。

 俺の記憶はそこで途絶えた。

 気がつくと俺は病室のベッドに倒れていた。さっきよりかは弱まっているとはいえ背中は未だに痛みがあった。

「あ、起きました! 自分の名前わかりますか?」

 通りかかった看護師の人が声をかけてくれた。

 その後はいろいろな事を聞かれた。どうやら緊急で手術をしていたようだ。さっき病院いっとけばよかった……。

 そんなことを考えていても後の祭りということはわかっている。ただ、自分が憎い……。

 その後色々話していくうちに、医師は、驚きのことを言った。

「よかったです、間に合って。あと五分遅れてたらもう死んでましたよ?」

 俺は急なためか鳥肌がたった。続けて医師は、

「非常に申し上げにくいんですが……」

 続けて医師はあったことを話していった。

 医師によるとさっき同じ地域で救急があったらしい。俺の方が電話するのが若干遅く、無言だったため先に電話した人の方に行った。

 危険な可能性もあるため意識が一瞬でも一応あった僕を後回しにしてそっちに行ったら、『トイレットペーパーを変えてほしい』との通報だったらしい。

 そのころはもう他のとこから僕のところに救急車がきていたらしいが、そっちがなかったら手術しなくてよかったかも知れなかったという。

 そして……気づいた。先月保険を辞めたことに。俺はたまたまあった保険の勧誘に誘われてそっちと契約手続きをしていたところだった。そしてその保険は来週から始まる設定になっている。ということは施術代、入院代は完全自費になった。

 俺は焦り出した。どうすればいい? 会社は?

 急な焦りからどうすればいいかわからなくなった。

 一旦冷静になり、まず今日休む連絡を上司にすることにした。

「もしもし。すいません今日ちょっと救急搬送されちゃって……」

 上司に電話すると、すかさず要件を伝えた。

「え? それって大丈夫じゃなくない? 今から病院行くよ。プロジェクト終わったから仕事減ったし。君のおかげで終わったプロジェクトなんだよ」

「あ、ありがとうございます」

 俺は慌てて返した。

「みんなぁ。川田くん病院に搬送されたらしいからこの後暇な人お見舞いに行こぉ。この会社彼があってだし。ね?」

 部長はカメラの外で話しているようだったが大声でオフィス全体に叫んでいるため電話入ってきていた。俺はものすごい嬉しかった、だが嬉しくてどうにかなる問題じゃないと、銀行手帳を探った。とてもじゃないが足りるけど出したら今後の生活がどうなってしまうかわからない。

 一旦現実逃避しようと僕は匿名掲示板を開いた。一番今人がいるのが……。『救急車にトイレットペーパー変えてもらったwww』だった。

 え? 少し驚き中を開いて見ると、なんとそこには迷惑行為としてすでに吊り上げられ、さらに住所特定されてしまっている奴がいた。救急車を使った場所、時間、理由。全てがさっきの話と一緒だった。

 僕はなんとも言えない気持ちになったものの、心の中で怒りが爆発していた。

 その頃、上司が病院に来てくれた。会社から一駅くらいの病院だったためかすぐついた。

「大丈夫かい? 心配したよぉ」

 今までいろんな職についてきたが、ここまで優しい上司は初めてだった。

「すいません昨日会社の階段でコケたのが原因らしく……」

 僕は寝たまま頭を下げた。

「え? 会社の階段なの? じゃあ安心して。労災効くから」

 上司は予想外の返答をしてきた。

「いいんですか?」

 俺は嬉しすぎて大声を出してしまった。

「まあ、良いも何も法律上そうだから。ああ、あとここの近くにあったたこ焼き屋でこれ、買ってきたから。どうぞ。どうも、評判がいいらしくてさ、おすすめなんだって」

 これまでこんな優しいところで働いたいたなんて。よく考えると今までにサービス残業はなかったなぁ。

「ありがとうございます」

 僕はめいいっぱいに頭を下げた。

 それから僕はネットに書き込みをした。

『こいつのせいで死にかけた』

 上司という優しい人と会った反動でその人への苛つきが高まっていた。

 それから詳しく話していると、徐々に信じてくれる人も増えてきて、最終的にその人への更なるバッシングがあった。病院の服をネットに上げたため信じてもらえたが、その代わりにすぐネット民から俺のいる病院は特定された。ただこの病棟は大きいため、どこにいるかなどは到底わからないはずだ。俺はそう思い、安心していたが、このネット民はすごく優秀で俺がいる場所をズバリ当ててしまったのだ。さっきからひどいことが起こりまくってるから俺はそこまで驚かずにいた。普通だったらもっと驚いていたことだろう。

 そこまで来る人はいなかったが何人か来てしまい、病院には俺の知人ということにしておいた。来た人にもそう言って帰ってもらっていた。

 一方その頃、『トイレットペーパー男』の家に大量の人が押し込んできていたらしい。

 俺はそのことをニュースで後から知ったが、俺の周りで俺が悪いという人はいなかった。ただ一人以外は。

 『トイレットペーパー男』はネット民を提訴したが、押し寄せたネット民全員から敗訴だったらしい。

 俺はスッキリしなかった。

 彼もスッキリしなかった。

 誰もスッキリしなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ